壮大なちゃぶ台返し(涙)
ニャー……ニャー……。
あの子の声がする。
あれ?でも?
この声、なんだかうれしそう?
なんで?
なんで……?
「……」
今度の目覚めは、なんかものすごくスッキリしていた。
ぼんやりした頭のままゆっくり起き上がる。
頭がなんか重い。血圧かな?
『おはようございます……こうしてみると、なんか腹たちますね』
「……なんでさ」
そう言いつつ目を下にやると、見慣れない白い肌に、なんか大きなおっぱいが。
あー……目、さめてきたかも。
うん、そうだった。
私、ネコミミ娘の体に移されたんだっけ?
あー……ちょっと確認。
うん、とりあえず……。
「ちんちん、ない」
『あたりまえです、女の子なんですから』
「おっぱい、ある」
『あたりまえです、女の子なんですから』
「なんか、下についてる」
『あたりまえです、女の子なんですから』
「はぁ……不安」
「大丈夫ですよ」
「そんなこと言われても……って、あれ?」
何、今の声?
ミーナの声がどうして、通信でなく肉声で聞こえるわけ?
私は振り返った。
すると。
「あ……」
なんと。
そこにはミーナの肉体──前に見たボディが立っていた。
私が気づいたのを見て「うふふ」と穏やかに微笑んだ。
「っ!?」
なぜだろう?
その笑顔に一瞬、ゾクッと寒気がしたのは。
「──えっと、おはよう?」
なんで?
休眠してたよね?
いつ起こしたの?
「どうしたの?
このボディのメンテナンスを提案したのはマコトでしょう?」
「いや、突然でビックリしただけ」
ああうん、そういえばそうだった。
休眠ボディのテストを提案したのは、たしかに私だった。
「しつもーん」
「何ですか?」
「たしかにテストを提案したけど……今ってマザーコンピュータとして活動しながら身体も動かしてるの?」
「そうですけど?」
「並行動作させて大丈夫なの?」
「ああ、そういう事ですか」
私が驚いた理由を察してくれたらしい。
「わたしは宇宙船の頭脳だもの、このくらいはお手の物よ。
特にこの身体の場合、サポート用疑似人格と常にシンクロしながら稼働させているから外出もできるしね。
まぁ通信が途切れている間はサポート頭脳のみのスタンドアロンになるから要注意だけどね」
「ほへ〜……よくわかんないけど、すごい」
これは驚いた。本当にビックリした。
ビックリしていたから……そのあとの展開に気づくのが遅れたんだよね……。
え?ああ違うよ、イヤだったわけじゃないの。
ないんだけどね。
「あの、ミーナさん?」
「なぁに?」
「なんで抱きついてくるの?」
「性能テストですよ。見て、さわって、そして抱きしめてますよ」
「それなら別に私に触らなくても」
「マコトに触ったほうが効率がいいんですよ」
「なんで?」
マコトはわたしとつながってますからね。
自分が触った感触だけでなく、マコトから触った感触も客観的に並べて検証できます」
ああなるほど……って納得していいのか?
「……質問」
「なんですか?」
「テストって……なんのテストするの?」
「もちろんスキンシップです。
地球では『はだかのつきあい』というのが大切なのでしょう?
せっかくこうしてボディがあるんです。
一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりと直接的コミュニケーションをしましょう」
「……ミーナ、もしかして地球の文化をいろいろと勘違いしてる?」
「?」
「とりあえず、お風呂文化は地球でなく日本特有、とは言わないけどそれに近いと思う」
「そうなのですか?
ではやはり、せっくs」
「ちょっとまてやぁっ!!」
爆弾発言しようとするミーナを止めた。
「あら、おいやですか?」
「……いきなり何を言い出すかと思ったけど」
まさか、ここまで、どストレートにくるとは思わなかった。
「あ、あのねミーナ。
銀河的にはどうか知らないけど、日本人にはソレってちょっと重たいから」
「重たい?」
「あとが面倒だってこと。
あまり気軽に下半身の関係になってさ、万が一ギスったりしたらどうするの?
色々と面倒くさくなったりするんだよ?」
「ギスるも何も、わたしは貴女を逃しませんけど?」
「……そうくるわけね」
思わずためいきをついた。
「でも、そういうことにお堅い国があるのもわかってますし、そういうのは尊重すべきだとも思います。
わかりました、そういうのはやめておきましょう」
「ほんとに?いきなり襲ったりしない?」
「しませんよ。
ですが、一緒にお風呂はいいのでしょう?」
「……まぁそれくらいなら」
「良かった」
「……」
まぁ、仲良くしたいって気持ちはすんごく伝わってくるし、別にいいか。