表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

イーマの恋形見 1

「姫様っ」

 と、駆け込んできた侍女見習いに、偽女王は

「陛下、もしくは女王と呼びなさい、と教えたでしょう」

 と、即返した。

 目は書類に向けたままだ。喪に服していることを示した黒いベールをかぶっている。書類仕事をしているので、高そうなそれを雑にクリップで頭の上で止めていたので顔がさらされている。苦労と心労で、やつれたように細い面に、目の光だけは強く、印象深い。

 執務室に、重厚な机が二つ、少し離して並べられている。

 もう一つの机の主は壁にしつらえられた本棚から資料をとるために移動していて、侍女見習いの目に入っていないらしい。

 本来なら、王になるはずのなかった不本意な王。

 そして本物ではない女王。

 もっとも、女王が偽物であることを知るのは、この城には当の女王しかおらぬのだが。


「結婚退職したいのです」

 見習いの言葉にはっと顔を上げれば、 

 それは、あのときの母親と同じ顔をしていた。

 なので、偽女王はため息まじりに諦めた言葉を吐いた。

「どこの誰ですか? つれてらっしゃい」

「わかんない。けど、あの人とときっと結婚するし、だめなら来世で添えるように」

「はい、待ったっ」

 珍しく女王が慌てたので王は珍しそうに振り返った。

「今世で世話しますから、何もしないでくださいね。相手を確認させなさい」

 王としては本当に不思議である。

 女王がこの見習いの娘をずいぶん大事にしているのが。


 知らぬから不思議だろう。


 答えは単純にして明快に、本当に女王になるはずだったのは、この見習いの母親であったからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ