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ど素人が運営する異世界王国発展記  作者: 霧城ユウト
第一章 異世界ブーゲンビリア
2/3

異世界転移 ①

「どこにでもいる普通の高校生」


 これが自分自身に抱いている印象だった。俺には特に人に誇れるような趣味や特技もない。強いて言えば、ゲームは休みの日に一日中ぶっ通しでやるぐらいには好きだが、これぐらい別に珍しくもないだろう。

 人とは違う点を無理やり挙げるなら、高校二年生にして一人暮らしをしているところぐらいだ。これも自分の意志ではなく、金持ちの両親が年中海外で遊びまわっていることが理由だが。

 そんなわけで、都内に住む高校二年生の藍沢海斗(あいざわかいと)は、平凡な毎日を送っていたわけである。そう、()()()()()()()()までは……。




 ―現在から一ヵ月程前―




「よし、今週末の課題終わりっと。これで土日の残りはゲームし放題だな」


 高校から出された月曜日提出の数学の課題を終わらせた俺は、早速ゲームをやることにした。家にいて他にすることがない場合、基本的にゲーム三昧である。ジャンル問わず様々なゲームをプレイする俺だが、最近のお気に入りは戦略シミュレーションゲームだ。今日もそのお気に入りをプレイするため、完全にゲーミングルームと化している自室へと移動する。


「さてさて、今日はどんな戦略を試してやろうかな~」


 そう思いながら意気揚々とパソコンの電源ボタンを押す。前回プレイした時は、自軍の五倍の兵力を持つ相手に、奇襲に次ぐ奇襲のオンパレードで大勝利を収めた。今日もそんな感じで気持ちいい勝利を飾ろう! などと二、三分考えたところで違和感を覚える。


「……いくらなんでもパソコンの電源入るの遅くねーか?」


 週末の課題を早々に終わらせて、ルンルン気分で妄想をしていたので気づくのが遅れたが、流石にパソコンの電源がつくのが遅い。最初にボタンを押してから、既に三分以上経過している。


「おかしいな~。ちゃんとボタン押したはずなんだけど……」


 そう思いもう一度ボタンを押すが、パソコンの電源が入る様子はない。


「おいおい、まさか壊れたんじゃ……」


 そう呟きかけたところで、俺の身体は驚きのあまり固まった。今なお電源が入らないパソコンの画面が突然光りだしたからだ。


「おいおい! どうなってんだこれ!」


 あまりの眩しさから手で目を覆う。慌てながらも何とかしようとするが、どんどん強くなる光のせいで前が見えない!


「うおっ!」


 最後に一際光が強くなったところで、俺の意識は途切れた。




◇◇◇◇◇




「……っ!」


 目覚めたとき、真っ先に感じたのは頭痛だった。なんだこの頭の痛みは! と思いながら周囲を見ると、目に入ってきたのは今まで見たこともない場所の景色。建物の中だ、灰色のコンクリートではなく薄肌色っぽいレンガ造りの。そして俺の直感では地下だ、それもまあまあ深い所……。


「いや、今はそんな情報どうでもいい。ここはどこだ? というかそもそも俺は何を……」


 そこまで口にして、俺は先程まで自分が意識を失っていたことに気づく。意識を失う直前のことも思い出した。頭痛の原因は、最後に眩しすぎる光を見たせいだろうか。

 そんなことを考えていると、背後から大きな声が響いた。


「せ、成功じゃ!! 成功したぞ!! 神の遣い召喚の儀式は大成功じゃ!! これで我がクロンキスト王国の未来は安泰じゃ!!」


 驚いて振り向くと、そこには六人の男性がいた。大きい声でめちゃめちゃ喜んでいる豪華な格好をした初老の男性(じいちゃんって呼んだ方がしっくりくる)が一人と、若いイケメンが一人。そして、後の四人は全員が魔法使いのローブみたいな服を着ていた。

 ってそんな冷静に分析している場合じゃない。色々と情報が溢れかえってるぞ今の一瞬で!


「よくぞ、よくぞ来てくださった!! 創造神ブバルディア様の遣いのお方!! ささ、どうぞこちらへ!! キキョウ、案内して差し上げなさい」


「畏まりました、国王様」


 ヤバいヤバい、よく分からんうちに話が進んでいる。


「ちょっと、ちょっーと待った! まず一体これはどういう状況ですか? ここはどこ? あなたたちは誰? そもそも神の遣いって何!」


 しまった。つい慌てて聞きたかったことを全部聞いてしまった。いや、そんなことより、じいちゃんの顔がみるみる青ざめていってるが大丈夫なのか?


「……か、神の遣いはあなた様のことでは?」


「……俺はただの一般人ですけど?」


 俺がそう答えると、いよいよじいちゃんの表情が終わり始めた。……いやホントに大丈夫k……。


「ああああああ!! これで万策尽きたわい!! クロンキスト王国は終わりじゃああああ!!」


 バタッ。


 おいおい! じいちゃん倒れちゃったぞ!


「こ、国王様あああ!」


 残りの五人が大慌てでじいちゃんの元に駆け寄った。五人共めちゃくちゃパニックになってるぞ。やっぱり大丈夫じゃなかったっぽい。




◇◇◇◇◇




「いやはや、先程は見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳なかった」


「いえいえ、気にしないでください。それより、お身体の方は大丈夫ですか?」


「全然問題ありませんわい。少しばかり動揺してしまっただけですからの」


 じいちゃんが悲鳴をあげて倒れた後、ローブを着ている四人組がじいちゃんを担架で運んでいった。俺はというと、残った若いイケメンに連れられて小さな会議室みたいな部屋へと案内された。俺が最初にいたところは、予想通り地下の一室だったらしく、ひとまずそこから一番近い部屋に連れてこられたらしい。

 その後、じいちゃんが部屋に合流。じいちゃんを運んでいた四人の姿は見えないため、今部屋には俺とじいちゃん、それに若いイケメンの三人である。


「早速じゃが、あなたは創造神ブバルディア様の遣いの方ではない、ということで間違いないですかな?」


「はい、違います」


「そうか……」


 先程の反応からも察することができたが、やはりじいちゃんは俺が神の遣いではないことにショックを受けているらしい。まあ、あれだけ喜んでいたぐらいだ。よほどその神の遣いに会えるのを楽しみにしていたんだろう。


「国王様、一旦挨拶をされてはどうでしょう。詳しい説明はその後で私が」


「……そうじゃな。ワシはクロンキスト王国第12代国王、フルード・クロンキストじゃ。そしてこっちが……」


「国王秘書を務めております、キキョウ・アルバレスと申します」


 さっきも国王様って呼ばれてたから薄々察してはいたが、やはりこのじいちゃん国王だったのか。倒れたときに五人が大騒ぎするわけだ。そんなことを考えながら、俺も挨拶を返す。


「ご丁寧にどうも。俺は藍沢海斗って言います」


「お主の名前はアイザワ・カイトというのか。珍しい名前じゃな。アイザワ、まずは先程の謝罪をさせてくれ。いきなり召喚したあげく、話も聞かずに勝手に盛り上がってしまってすまなかった」


「気にしてませんから大丈夫ですよ。それより、いきなりで悪いんですけど、状況の説明をお願いできますか?」


「もちろんじゃ。キキョウ、頼めるかな?」


「承知致しました。簡潔にはなりますが、私の方から説明をさせていただきます」


「お願いします」


 そうしてキキョウさんが説明してくれたことを、簡潔にまとめるとつぎのようなものだった。

①まず、今俺がいるところはクロンキスト王国というところらしい(ここはその国のお城とのこと)。

②そのクロンキスト王国には様々な問題あり、このままでは国の存続が危うかった。

③そのため、何とか手を打とうと、古くからクロンキスト王国に伝わる神の遣い召喚の儀式を行った。

④その儀式で召喚した神の遣いに国の運営を任せる予定だった。

⑤その儀式で何故か俺が召喚された。

ということらしい。


「なるほど、状況と経緯は分かりました。……なんで俺が召喚されたかは未だに理解できてませんけどね」


 おそらく、あのパソコンの光は召喚の儀式によるものだろう。そして、日本からこのクロンキスト王国に召喚されたということは……。


「ちなみになんですけど、この世界に名前とかあります?」


()()世界? この世界の名前はブーゲンビリアですが……」


 ブーゲンビリアやクロンキスト王国という聞いたことがない世界の名前、そして今のキキョウさんのこの世界という反応……。これはほぼ確定だろう。どうやら俺は、()()()()()()()()らしい。


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