出会いと旅の始まり
湖で水浴びをするエルフはアコニタムをちらっと見たが完全に無視して水浴びを続けた。
「…ッ!おい!お前こんなところで何している!」
『・・・。』
「無視すんな!」
『・・何か? レディの水浴びを覗き見する変態さん』
「んなっ!?」
100年ぶりに会話ができる存在に会えたこともあり、状況が見えていなかったが、自分が女性が全裸で水浴びをガン見してしまっている状況に慌てて後ろを向いた。
「・・・その・・すまなかった」
『あ、意外と初心なんだ。別に見ていてもいいのに・・』
「・・・うるせぇ。終わったら話を聞かせほしい。向こうで待ってる」
少し離れた草むらで湖を背にして彼女が水浴びを終えるのを待つことにしたが、あいつなんなんだよ。
災害級の魔獣だらけの場所で呑気に水浴びなんかするか?
謎は多いが久しぶりにちゃんと会話が出来るやつに会えた。
てかあいつ可愛いな。。
『それで話ってなに?』
服に着替えた彼女が面倒くさそうな顔をして声をかけてきた。
「終わったのか。なんでこんなところいるんだ?この森でのんきに水浴びなんかするお前は何者なんだ?お前以外に誰かいるのか?」
『質問多い…ここは私が作った私の庭なんだから水浴びしたっていいでしょ。他に誰が居ても知らないし、興味無い。』
「は?庭!?てか作ったってなんだよ!」
『声でかい。人と暮らすのが面倒だったから家に誰も来ないよう森を作っただけ。最近入口の方の魔獣が減ってきたから見に来た。』
「だけってお前とんでもないこと言ってるけど・・こいつらお前が飼ってる魔獣なのか?」
『飼ってるっていうかいうか、貰って欲しいっておっきい城にいた偉そうなおじいちゃんが言うから貰ってた。お金もくれたし。そういえばもう連絡ないなー』
「王冠!?それ王様じゃね?」
そういえば五大英雄が現れる前は気まぐれなエルフの姿をした女神が助けてくれたって聞いたことがあるけど…まさかな。
てかその女神、全然周りのこと気にしねぇから魔獣と闘いながら寝たりしてうっかり街を潰すこともあったとか。
超自己中で危ないから出来るだけ頼まないで済むよう五大英雄作ったって話もあったな。
『王様かぁ。だから偉そうだったのか〜。じゃあ私帰るから、森から出たいならついでに道案内するけど』
「いや分かるだろ!てか待った!・・俺も一緒に連れてってもらえませんか?」
『うーん・・・別にいいけど、めんどくさくなったら強制転移で帰ってもらうから』
「おう!てか名前は?俺はアコニタム!」
「フリティラリア」
それからフリティラリアの家に行き100年ほど一緒に暮らしていた。自己中なエルフに振り回されて苦労もかなり多かったけど、対等に接してくれて隣に並んでくれる彼女にアコニタムはどんどん惹かれていった。
しかし恋人は愚か友達すら居なかったアコニタムは距離の詰め方も恋愛の仕方も分からず毎日告白し続けたのだった。
フリティラリアの方も今まで人と関わるのを避けて、1人で暮らしていたため恋愛とか友達とかよく分からないが、しつこいアコニタムに根負けしたのだった。
初めて出会った特別な存在に2人は狂ったようにお互いを求めていき独占欲と歪んだ愛情を拗らせていった。
結婚を決めた2人は何年も新婚気分を味わっていたが、新婚旅行の旅に出ることになった。