剣聖と魔女
魔の森から二人の男女が歩いてくる。
『アコニ、疲れた』
「いやお前ずっと俺に姫抱っこされてるよね?つかさっきまで寝てたよね?」
『夢の中でたくさん歩いた』
「お前が寝ている間俺はずっと歩いてたんですけど・・。」
男は200年前に魔の森に入ったまま行方不明となっていた最強の剣聖アコニタムだった。
その昔、優れた能力で世界を救った5人の英雄がいた。
聖女、格闘士、魔導士、魔刀士の4人は最強のパーティとして有名だった。
しかし剣聖は常に独りで行動していたことや200年もの間姿を消していたため伝説の英雄としておとぎ話のような扱いになっていた。
剣聖アコニタムは飛びぬけた戦闘能力を持っており、他の英雄ですら敵わなかった。
隣に並んで戦おうものなら彼の攻撃に巻き込まれて簡単に命を落としてしまうため、だれも彼についていくことはできなかったのだ。
他の4人の英雄がパーティでいろいろな依頼を受けているなか、アコニタムが独りで戦い続けていたある日英雄4人が投げ出した依頼がアコニタムに回ってきた。
内容は誰も生きて帰れないといわれる魔の森に行ってしまった冒険者を連れ帰ってほしいというものだった。
たまに財宝を求めて実力以上の依頼を受けてしまう冒険者がいるのだ。
アコニタムは独りで魔の森の探索に向かった。
魔の森に入ってすぐに出口も入り口もわからなくなり、災害級の魔獣が山ほどいる森の中ずっと同じ道を永遠に歩き回ることになった。そんな中を一般の冒険者が生き残れるはずもなく救出はもはや絶望的だった。
災害級の魔獣を倒し続けて100年が経過したころ、彼は信じられないものを目にした。
いつもの湖に飲み水を確保しに行くとそこには水浴びをしているエルフの女性がいたのだ。
あまりの美しさに思わず息をするのも忘れてしばらく立ち尽くしていた。