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忠勇賢備の士  作者: かんせつ
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第三話

ユーリはダルスより与えられた五百の兵を率いて出発した。ユーリはまず西の砦を落とすことを目標とした。しかし東にも砦が作られており、挟撃される可能性があった。ユーリはこれを断つために先日調略した砦に向かった。

「指揮官殿。折り入ってお願いしたいことがあるのですが・・・」

「ふむ。聞こう」

「これより我らは西の砦を攻めます。つきましては指揮官殿には東の砦への牽制を行っていただきたく」

「ふむ。かつての同胞と戦いのは気が引けるが一度疑いの目を向けられたのだ。今更怖気ずくことはない。喜んで引き受けよう」

「ありがとうございます」

こうして後顧の憂いを立ったユーリは西の砦へと兵を進めた。

一方西の砦ではすでに前線砦への攻撃準備が整えられていたこともあり迎撃準備は万端てあった。

敵の砦の状態を確認したユーリは幕舎に戻った。

(調略に敵の戦力を集めさせたのは失態でもあったか。準備万端で待ち構えられてはまず勝ち目はない)

だがユーリには策があった。

そして次の日の早朝。揃っている兵士に品質を問わず盾を持たせ攻城戦を開始した。砦から降りしきる矢や石礫を盾で受け止めながらゆっくりと前進した。しかし砦側の攻撃も激しく、進むのは困難であった。

(そろそろか)

「撤退の合図を!!」

ユーリはこれ以上の全身は無理だと悟ると撤退の合図を鳴らした。兵士たちは我先にと撤退を開始した。

そこで不思議なことが起こった。なんと逃げる兵士たちが貨幣や腰兵糧を投げ捨てて撤退しているのであった。

「大将!!敵は金目の物を捨てるほど慌てて退却していますぜ。今なら奴らから金品を奪えるかと」

「よし。すぐに部隊を出して戦利品を分捕ってこい」

砦の門が開き、略奪部隊が出てきた。略奪部隊は我先にと貨幣や兵糧を奪っていく。

(ここだな)

「合図の火矢を放て!!」

ユーリの号令の元火矢が放たれた。すると砦の正面の側面にある林から兵たちが出現したのだ。もちろん事前にユーリが伏せていたアルピレスの兵士である。

「くそっ金目の物は誘い出す罠か!!」

しかし気づいたときには略奪部隊はすでに撤退したはずの兵士、両側面から現れた兵士たちによって挟撃を受けてしまっていた。

突然の奇襲に戦意を失った略奪部隊は我先にと砦へと逃げようとした。しかしそれを猛烈にアルピレスの兵たちが追い立てた。

そこで悲劇が起こった。

「門を閉めよ!!」

「し、しかしそれでは出ていった者たちを見捨てることに・・・」

「今門を開けておくと敵も入ってくる。それではこの砦は奴らの手に渡ってしまう!!ぐずぐずせずに門を閉めよ!!」

猛烈に追い立てられる兵士たちを見て指揮官が砦の門を閉めたのだ。砦という逃げ場を失った略奪部隊は逃げ場もなくアルピレスの兵士たちに次々と討たれていたt。それを砦の兵士たちは味方に攻撃が当たることを危惧して攻撃ができず、ただ見ているだけであった。

初戦はユーリの大勝利で終わった。そして次の日。ユーリは一騎で砦の前に立った。

「聞け!!砦の兵士たちよ!!諸君らの指揮官は情を持たず、いざとなれば諸君らを切り捨てるような

外道である!!そのような指揮官に従っていて諸君らに幸せが巡ってこようか!!」

「黙れ!!戯言を抜かすのであれば俺直々に討ち取ってくれるわ!!」

そう弓を掲げてユーリを射ようとした指揮官であった。しかしそれは叶わなかった。兵士の一人が砦の上から指揮官を突き落としたのだ。突き落とされた指揮官は頭から落下。そのまま絶命した。

「こ、降参する!!だから命までは取らないでくれ!!」

「ならばすぐに門を開き我らの軍門に下るべし」

必死に懇願する兵士たち。それを受けユーリも条件を出した。砦の兵士たちはすがるようにして門を開きユーリたちを迎え入れた。

この時ユーリが失った兵士は三十人足らずであったとされる。

こうしてユーリは瞬く間に二つの砦を落とした。後は東の砦と本拠地を残すばかりであった。

ユーリは兵士たちに十分に休息を与え、東の砦を抑えている前線の砦へと向かった。

「指揮官殿。敵はどのような様子ですか?」

「俺たちの兵士たちは兄弟など親族が分かれて配置されていることもある。だから積極的には動けない。だが東の砦を抑えることは十分できた」

「それはありがとうございます。これが終わった後には主君から褒美が与えられるでしょう」

「そうか。そりゃありがたいな」

「では我々は東の砦を落としに参ります」

そうしてユーリは軍を進めた。まずユーリは一騎前にでて砦の兵士たちに声を聞かせた。

「聞け砦の兵士たちよ!!すでに前、西の砦は我らの手に落ちた。命が惜しくば我らが軍門に下るべし!!」

「馬鹿な!!こんな短期間で砦を二つも。それもそんな小勢で落としたというのか!?」

「これがその証だ」

ユーリは前もって前と西の砦からそれぞれの指揮官を示す印を受け取っていた。これを砦の兵士たちに見せた。

「あ、あれは間違いなく砦の指揮官の印だ・・・そのようなことが・・・」

「もし抵抗するのであれば老若構わずすべての兵士を討ち果たす。だが下るのであれば我が主君は寛大な方である。厚遇することを約束しよう」

「ど、どうする・・・?」

「こんなところで死んでたまるか」

事前にユーリは二つの砦が落とされたことを噂にして東の砦に蒔いていた。これが兵士たちの動揺を誘ったのであろう。そして西の砦の指揮官の末路もまたしかりであった。

「わ、わかった。降参しよう。このようなところで死ぬのはごめん被る」

こうして東の砦も戦うことなく手中に収めたユーリであった。

そしてユーリは残すところは敵の本拠地だけとなった今、今まで占領した砦の指揮官たちを招集した。

「こんな速さで砦を落とされるtおは考えてもいなかったぜ。アンタ結構やるんだな」

「して我らをここに集めた理由は・・・」

「無論残す本拠地を叩くためです。今や砦の役割はあらず。全ての兵を結集してこれにあたります」

「そう・・・そうか。わかった。一日くれ。兵士たちを説得して連れて来る」

こうして三つの砦から兵士が集結することになった。およそ合わせて一千。対する敵の本拠に籠る兵たちはユーリが掴んでいる情報によれば五百程度ということであった。

ユーリは各砦の兵士たちが集まったのを確認し、前に立った。

「諸君らはやむなく我らアルピレスに反抗した。だがその罪は我が主が此度の働き次第では罪に問わないと約束してくださった。また武功を立てれば別途褒美も出すと約束しよう」

この言葉に兵士たちの士気が上がらないはずがなかった。もとより砦の兵士たちはラテール鉱山の支配者の強力な武力によって強制的に従わされていた身だ。それから解放され罪も免除、その上褒美まであるとなればやる気もでるというものであった。

そしてユーリは軍を進めた。

本拠地にはすでに全ての砦が落とされていることが知れ渡っていた。

「くそが。あの能無し共め。俺を裏切ったらどうなるか教えてやる!!」

「報告!!敵の軍勢がこちらに向かってきます!!」

「数は!?」

「一千はいるかと思います」

「一千か・・・。急いで兵士に武器を持たせろ」

それからは激しい戦いが始まった。両軍共に矢や石礫による応酬が続いた。どちらの兵も次第に傷を負い戦いを続行することが難しくなってきていてた。

「仕方がない。撤退の合図を」

仕方なくユーリは撤退の合図を出した。この時本拠地の支配者側の兵士も疲れ切っていたため追撃はなかった。

「さて・・・」

ユーリは夜を待ってから次の行動に移った。選りすぐりの兵士たちを集めたのである。

「これより諸君らには敵の砦の壁を登り火をつけてもらう」

「そ、そのようなことが可能なのでございますか?」

「敵の砦の壁は切り出した不揃いの石でできている。石と石の間に剣を挟めば足場となるだろう。それをつたって壁を登るのだ」

「わ、わかりました」

兵士たちは半信半疑でこっそりと壁に近づいた。まず一人が壁の隙間に剣を差した。

「おぉ、確かに指揮官様が言っておられたとおりだ」

そして次々と剣を差しながら兵士たちは夜に紛れて壁を登った。

「よし燃えそうなものに火をつけるんだ。そして夜襲だと大声で叫び敵を混乱させるんだ」

兵士たちは兵糧や木造の建物に火を放った。そして敵の夜襲だと声の限りをつくして叫びまわった。

唐突な火事。そして夜襲だという声に敵は大混乱をおこした。その隙に潜入した兵士たちが砦の門を開いた。その好機を待ってましたとばかりにユーリを先頭にアルピレスの兵士たちが荒波のように襲い掛かった。敵の兵士たちは逃げることも叶わず討ち取られるばかりであった。支配者もまた討ち取られ、これによってラテール鉱山はアルピレスの手に渡ったのであった。

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