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忠勇賢備の士  作者: かんせつ
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第一話

まだ夏の熱が冷めきっていない初秋。ウラデウス家の屋敷に産声が上がった。

ウラデウス家当主ルーデン・ウラデウスの長男、ユーリ・ウラデウスの誕生であった。

ウラデウス家は大国エデメルトに従属している小国、アルピレス公国に仕えている家であった。

時は遡ること50年ほど。ユーリの祖父にしてウラデウス家初代当主、ウラデウスは商人であった。

ウラデウスの商才はアルピレスでは知らない者はいないと言われるほどのものであり、その財は莫大であると言われていた。ウラデウスは時のアルピレス公にその商才を買われ家臣となり新参者でありながらその才能を他の家臣に認められるほどの腕前を見せアルピレス公国の経済を発展させた。

ウラデウス家はこうしてアルピレス公国と共に繁栄してきたのである。

そしてユーリの誕生から六年が経った。

ユーリはすくすくと成長していた。特に本を好み、祖父が集めていた物を読んでいた。

また小さいながらも計算も読み書きも覚え、周囲からは利発な子だと言われていた。妹ラーラが生まれたのもこの時期である。

アルピレス公国は表記上は国として成り立ってはいるが実態は力を持った勢力が乱立している状態であった。

確固たる支配が行き届いていないためアルピレス公国では度々反乱が起きていた。

ユーリの父ルーデンはアルピレス公に従い家来を率いて家を出ていることが多かった。長いときは半年も顔を合わせることがなかった。

しかし母ルレイは聡明な人であっためユーリは賢く育つことができた。

ウラデウスが顔を見せる旅に異国やその国の珍品の話をよくしたのも影響しているだろう。

またウラデウスはユーリの憧れでもあった。

また一つ下でルーデンに仕えている家来の子供であるゼルという友人もできた。

そしてこの年になってからユーリは武芸の練習もすることになった。

いずれはウラデウス家を継ぐ人間として立つためであった。

練習を始めて一年が過ぎた頃には同年代の子供の中から抜きん出た才能を見せた。

ユーリは著しい成長を見せながら十五歳を迎えることになった。

ユーリは周囲からは天才と評されており、アルピレス公の覚えもよかった。

ユーリの天才ぶりを表すものでこんな話がある。

まだユーリが十二歳の頃。アルピレス公デアルスが突然病に倒れた。国の内外を問わず、医者が呼び寄せられたが誰も病気の原因を突き止めることがなかった。

そして病に倒れてから一か月が経った頃。ユーリはデアルスの元を訪れていた。

ユーリは人払いを頼みデアルスと二人きりになった。ユーリはデアルスにこれが薬だと一枚の文書を見せた。

そこにはデアルスが懸念していた後継者問題について書かれていた。

デアルスにはダルスとメレス二人の息子がいた。デアルスは二人の子供にそれぞれ後援者がついており、自分が死んだ後に相続争いが起こると考えていた。国を支配している一族で相続争いが起きてしまえば国は割れ、さらには元々従っていない勢力の台頭を許すことになってしまう。

そのことを懸念していたデアルスは誰にも相談できずに一人で抱えて終い今に至るのであった。

それを的中させたユーリはデアルスに主君であるエデメルト王へ家臣一同が長男ダルスに忠誠を尽くすという宣書を公にして出させることを提案した。宣書を家臣に出させることによってダルスが後継者であると宣言し、これを破ればアルピレスはもとよりエデメルト王国でも犯罪扱いとなる。また宣書を出したことを公言することによって反対派をあぶり出すことができ、また妨害も抑制することができるのであった。

デアルスはすぐに宣書を出させるように家臣に命を下した。メレスの後援者であった家臣もいまだ力が衰えないデアルスを敵に回すことを避けるため渋々宣書を出した。

これによってデアルスは後継者問題を解決することができた。この時の褒美をデアルスはユーリにできる範囲で与えると言うとユーリは『隣接国を旅するための路銀を工面してほしい』と頼んだ。

えてしてユーリはデアルスに工面してもらった資金を使い隣接諸国を旅し、情報を集めた。

エデメルト王国もまた勢力の集まりで構成されており、特に隣接する勢力の情報は重要であった。

使えるべき主君から旅の路銀を調達したことを祖父のウラデウスは笑いながら称えたという。

そしてユーリが旅に出て半年がたった頃。デアルスが老衰によって死んだ。

アルピレス公には予定通りダルスが無事に就いた。メレスを支援していた家臣は宣書を出してしまったためにメレスをアルピレス公に押すことができなかった。アルピレス公の主君であるエデメルト王国に宣書を出している状況でその内容を破る宇ような反乱など起こせば格好の好機とエデメルト王国の家臣が手柄を取るために軍を出す可能性があったからだ。

デアルスは死ぬ間際にダルスに何か秘密の相談事があればユーリを頼るようにと言い残してあった。

ダルスはまだ成人もしてない子供のユーリをなぜ父が信頼するのかと疑問視しており、旅から帰ってきたユーリに隣接勢力の情報を聞いてみて判断することにした。

するとユーリは事細かに報告し、またアルピレスには何が必要で何が足りないかを説いた。

これを聞いてダルスは小さいながらも経験豊富な者のように知恵を出したユーリに感服したのであった。

そして時は戻り、今日この日。ユーリは十五歳となり大人の仲間入りを果たすことになったのであった。

初めましての方は初めまして。お読みいただきありがとうございました。よかったらこれからもよろしくお願いします。

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