表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編】理不尽な理由で呪われました。【一話完結】

作者: りど森

これは呪いなのかもしれない。

私はそう思った。

いや、ふっとその言葉が頭に降りてきたのだ。


私には一つ、悩みがあった。

それは、私が気に入った食品系の商品が、私が初めて購入してから1年以内に生産終了になる。という事だった。



お気に入りだったデザートみたいなチーズ。

懐かしい味だなと思って2回買った冷凍ミカン風のアイス。

アセロラ味が好きで買っていたチューハイ。

行くと必ず注文していた、カフェのスモークサーモンのベーグルサンド。

季節限定で出ていた桜味のキャンディ。


全部、販売終了になった。もしくは、翌年の季節限定として販売はされなかった。


いつもそうなのだ。私が気に入って購入した、継続して購入したいと思った食べ物は全部買えなくなるのだ。


そして今日もまた、私が気に入っていたナッツ入りクリームのケーキが、ケーキ屋さんのショーケースから消えていた。仕事がうまくいかなくて、自分を励ますために買おうと思っていたのに。更に心がへこんだ。


「あー…なんかもう嫌になっちゃったな…」


仕方なく手ぶらで家に帰ると、バックを床に置いてドサリとベットにダイブした。スーツが皺になるけど、もういいや…


自分の味覚が特殊なのかと悩んだ時期もあったが、他の人も好きで、大人気の商品が突然販売終了するという事もあって、やはりこれは呪いでは無いかと思う。


「そうだよ、それは君にかけられた呪いだ」


突然頭の上から声がした


「!?」


ビックリしてガバっと起き上がると、目の前に、宙に浮いた金髪碧眼の男の子がいた。


「……えっと、君は誰…?」

「僕?僕はね…カミサマだよ」


「へっ…?」


何だこの子、何言ってんの?これは夢?そうかこれは夢だ。こんなに見目麗しい美少年が、私の前に現れるわけが無い。


「いや、夢じゃないよ。今日はあなたに謝りに来たんだ」

「?」


意味がわからん。


「君には呪いがかけられている。って言ったよね。これはね実は僕が原因なんだよ」

「は?」


マジで意味わからん。とりあえず寝よう。


「わわわっ!!おねーさん、ちょっと待って、いきなり服脱ぎださないで!?」


寝間着に着替えようと、スーツを脱ぎだす私を慌ててとめる少年。顔を真っ赤にしている。可愛いな。


「えーっと、とりあえず話は聞いてあげるから、着替えさせて?」

「わ、分かりました!!」


少年は、すすすっと部屋の隅へ移動し、手で目を覆いこちらに背を向けた。

良い子だね?



私はとりあえず部屋着に着替えた。本当はメイクも落としたいけど、少年の話を聞いてからにしよう。


「おねーさん、いきなり来ちゃってゴメンナサイ。改めて、僕はエリス。ここじゃない別の世界のカミサマやってます」


「えーと…私はミエコ。社会人やってます。というか、君、エリス君だっけ?家は?外国からの観光客?迷子?日本語分かる??こんな夜遅くに空き巣まがいの事して…親御さんが心配してると思うよ?」


「んーと、僕の言葉はスルーなのかな?会話出来てるんだから言葉はお互いわかってるでしょ?それに、僕はカミサマだよ。嘘じゃない。おねーさんの部屋に空き巣で入ったわけじゃないよ。そもそも、ここ地上5階でしょ?どうやってベランダから入るのさ」


え、迷子でも空き巣じゃないのか…でもカミサマなんて信じられない。


「そうなのか、でも勝手に人の家に入るのは駄目だよ?」


私はとりあえず少年に説教をたれる。


「とりあえず、突然おねーさんの部屋に来たのは謝るけど、僕がカミサマだって信じてないよね?」

「そりゃね、自称カミサマの美少年なんて信じられないよ」


美少年が困ったなぁ…と呟きながら頭をかいている。


そもそも、異世界でカミサマやってるって、どんな設定なんだろ?

顔が良いからって何でも許されると思うんじゃないよ。


とりあえず、美少年曰く私が気に入った食品系の商品が、販売中止になるのは呪いだったらしい。

そして、美少年は神様なんだってさ。信じらんねぇわ。


目の前に座っている金髪碧眼の美少年が、自分がカミサマであるというのをどうやって私に信じてもらうか頭を抱えている様子を、私はお茶をすすりながら眺めている。


「で、家出の言い訳は考えついたのかな?」

「だから、僕はカミサマなんだってばー!」


何で信じてくれないの!とバシバシと自分の膝を叩くエリス少年。

なんだそのしぐさ、猫みたいで可愛いな。


「そんな事言ってると、将来お母さんが泣いちゃうよ?」

「はぁ…もう僕の事はいいや…とりあえず、おねーさんにかかってる呪いの事を話すよ」


「あら、逃げたわね」

「……とりあえずね、おねーさんにかかってる呪いは、僕の世界の女神がかけた物なんだ」


「うんうん、そういう設定なのね」

「はぁー…。で、何でその女神がおねーさんに呪いをかけたかっていうと、おねーさんの見た目が僕のハニーにそっくりだからなんだよ」


「……は?」


今なんて言った?

僕のハニーにそっくりだったから?随分と凄い設定だわ…


「んふふふ、おねーさん驚いてるね」

「いや、突拍子もないし…君は随分ませてるんだねぇ…」


小学6年生くらいなのかな、もう恋人がいるなんて、うらやましいを通り越して驚きだわ。

最近の子って進んでるのね…


「僕の恋人も、もちろん女神なんだ。名前はミルエル。大地と豊穣を司る黒髪の綺麗な僕の女神!!」

「うんうん、そんな素敵な彼女と、私が似ているのが理由なのね?」


「そう。おねーさんに呪いをかけた女神はイザベラって言うんだけど、あいつはミルエルに手が出せないからって、ミルエルそっくりなおねーさんに呪いをかけたんだ。腹いせにね」


エリス少年曰く、イザベラは長年しつこくエリス少年に恋人になれと言い寄っていたらしい。しかし、エリス少年には最愛の女神ミルエルが居た。


二人は順調に愛をはぐくみ、長い婚約期間を経て最近ついに結婚に至ったらしい。


それを受け入れがたかった女神イザベラは、嫉妬と憎悪に狂ったが、エリス少年の守りの魔法のせいで、ミルエルには手出しができない。そこでイザベラが取った行動は、わざわざ別世界に居る、ミルエルにそっくりな人間に小さな不幸が降りかかる呪いをかけまくる事だった。


何ともみみっちい。


「それ、私完全にとばっちりじゃない…」

「うん、完全にとばっちり」


無関係の人間、しかも別の世界に侵入してまで呪いをかけまくった女神イザベラは既に空間の檻に幽閉されているそうで、エリス少年はイザベラがかけた呪いを解くために、あっちこっちの世界を飛び回っているのだという。


「で、そのみみっちい呪いをかけられた最後の人が、おねーさんなんだよ」

「ほお。じゃあ呪いがとければ、お気に入りのお菓子が突然生産中止になる事もなくなる?」

「うん、ほぼなくなると思う」


「全くじゃないの?」

「だってそこは企業さんの事情とかもあるから、神様でも絶対とは言い切れないんです」


なんだ残念…


「じゃあ、さくっと呪いといてくれるかな少年」

「そだねー、じゃあおねーさん目を閉じて」


私は素直に目を閉じる。

すると、少年は美しい歌声で知らない言語の歌を歌い始めた。


ふわふわと全身を包む暖かい空気が、体の中から冷たい何かを追い出してくれた気がする。


「もう目を開けて良いよ」

「これで呪いは無くなったの?」


「うん。ばっちり」

少年の笑顔が眩しい。


「そうか。じゃあ君の御両親の連絡先を聞こうか。そろそろおねーさん誘拐犯にされちゃうよ」


「もうそのネタ引きずらないで!!僕はもう帰るからさ!!」

「お、家に帰る決心がついたのか」


「そうだよ!僕の可愛いハニーが待ってるからね!!」


「あ、少年、一つお願いしても良いかね」

「なんでしょうか?」


「夢の中でも良いから、私に呪いをかけた女神を殴らせて」

「…おねーさんも同じこと言うんだね…」


「え?なになに、他の世界の私も同じこと言ったの?マジで?ウケるー!!」


少年はがっくりと肩を落として泣きそうになっている。


「なんで、奥さんにそっくりな人たちがこんな性格なんだろう…」

「え、それって君の奥さんも同じって事だと思うけど?」


「やめて!!僕のハニーは可愛いの!!もうおうちに帰る!!」


とりあえず、夢の中でイザベラに会えるようにしたから!!と言って、少年は忽然と姿を消した。


「あ、本当に神様だったのか」


いやー、弄りがいのある少年だった。


仕事でへこんでいた心が、ちょっと上向きになった。

シャワーを浴びて、私はベットに入るとサクっと寝てしまった。



あ、ここは夢の中だな。とすぐにわかった。

少し離れた場所に誰かが座っている。


「なんでっ!!なんで私がこんなところに閉じ込められなきゃなんないのよ!!」


あ、こいつが私に呪いかけたやつだ。


「あんな性格悪い奴のどこが良いのっ」

「そりゃ、同じ顔っていう理由だけで無関係の人間に呪いかけまくるような女神とは一緒になりたくないでしょうよ」


思わず突っ込んじゃった。


「はぁ?あんた誰よ!?ってミルエル!?」


「「「「残念でしたー!私はミルエルじゃありませーん!」」」」


おや、自分の声がめっちゃダブってる。

これはあれか、他の世界の私も同じ夢を見てるのか。


「「「「理不尽にみみっちい呪いをかけられた恨み、晴らさでおくべきか!!くらえ怒りの鉄拳!!」」」」


私達はそう叫ぶと、目の前にいる女神に盛大にラリアットを食らわせた。


「ぎゃん!!」


「「「「アイムビクトリィー!」」」」


勝者のポーズをしたところで、ぱちりと目が覚めた。

現在時刻は朝5時半。今日も良い天気である。


気分よく目が覚めた私は、ルンルン気分で出勤した。


すると、私の隣の席の井沢が、どんよりした顔でパソコンに向かっている。


「イザワおはよ。どしたのそんな疲れた顔して」

「あ、タシロおはよ。なんか変な夢見てさ…」


私は自分のパソコンの電源を入れて、メールチェックをする。


「変な夢?」

「そ、あんたそっくりの女複数人にラリアットくらった夢見た。マジでなんなのあれ…」

「oh…」


どうやら、井沢は女神イザベラのそっくりさんだったようだ。

確かに、よく見るとそっくりだわ。




-おしまい-

読み切り作品です。

私自身の悩みを膨らませまくって書いた作品です。


なんで気に入った商品がすぐに売られなくなってしまうんだろうか…(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ