正体を証す
「ちかい~、そろそろ行かないと
遅刻するわよ。」
「…え、もうそんな時間?やばっ!
じゃあ行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。」
__珍しいわね…こんな時間に出てくなんて
何かあったのかしら?帰ってきたら
然り気無く聞いてみようかしら?__
うーん…気にされてる…。はぁ…別に嘘を
言った訳じゃないし、ただ言おうとして
いた言葉の順序がごっちゃになっただけ…。
よしっ!いつもどうりの俺で接しよう!
あの出来事も無かった事にじゃなくて
ありのまま話そう!
俺が教室に入ると辺りがシーンとした。
「おはよ~!…あれ?なにどうかしたの?」
「えっと…それが。」
「さっき派手な女子達が神藤さんの事
呼び来たの…。」
「だから私達どうしよって…。」
「俺行ってくるから大丈夫!
教えてくれてありがとう。」
「ねぇ、神藤さん本当に月神くんと
付き合ってないの?」
「はい、付き合ってません。」
「じゃあなんで月神くんが神藤さん
おんぶして家に入ってたの?」
それは以前も見た写真。
私と月神くんが喧嘩?みたいなのを
した日の帰り道の事。
「それは」
「その写真…なに?いつの…?
え?なんで君が持ってんの?」
__うわぁ~、近くで見たの初めて
めっちゃかっこいい…!__
「なんでそんなことあんたに教えなきゃ
なんないの。」
__えー!そこはかっこよく
神藤さん!助けに来たよ。ごめんね、
怖かったよね?もう大丈夫だよっ。
てぐらい言って欲しかった~…。__
「あたし達はただ付き合ってるかどうか
聞いてるだけなんだけど。」
__え!待って!走ってきたのかな?
く、くびくくく首筋にあっああああせ…
え!エロくない?首筋にツーっと
伝う汗とか!それも制服からチラッと
見えてる感じが超良い…!__
「答えてくれるんだったら別に暴力なんて
加えないし~。」
……一つ言わせてくれないか?
この三人言ってる事と思ってる事に温度差
ありすぎじゃない?
めっちゃ突っ込み所満載なんだけど…。
まぁ…理想と現実があまりにも違いすぎて
ぐれちゃった結果なんだろうな…うん。
「神藤さんの代わりに俺が答える
じゃ駄目?」
「…まぁ別にいいけど。」
「えっと付き合ってるかどうかだったけ?
残念ながら付き合ってはないよ。
でも。」
神藤さんの手を取り、膝跪く。
「付き合いたいとは思ってるよ。」
「…え!月神くん…。」
__え!…え!!な、なに!?今の…!え…!
え…?………何が起きたの…?__
顔真っ赤。あー…恥ずかしい。
やっぱり漫画の真似なんてする
もんじゃないな…。
更に気まずくなったらどうしよう…。
「あのー、あたし達居るんですけど。」
「あー、ごめんね。
あと一つ聞きたいんだけどその写真
どうゆうこと?」
「それは言えない。」
「ふーん、本当に?教えてくれないの?」
__え!ま、待ってちかっ…!え!ヤバっ…!
え、めっちゃ近いんですけど!
え!どうしたら…。直視できない…。__
__はぁ?なにアイツめっちゃ
羨ましいんだけど。__
__うぅ…羨ましい…けどあたしがあの
立ち位置にいたら死にそう…。眩しすぎて。
でもやっぱ羨ましい…!__
__そっか…月神くんって…。
そうゆう所があるんだ…ふーん。__
え!?待って!神藤さんめっちゃ
冷めてない?!え!こわっ…。
…まぁ俺が悪いんだけど…うーん。
「…そっか、言えないんだったら
しょうがない…ごめんね、無理に
聞こうとして。」
「…っ!待って!あの写真猫平が腹いせ
で撮ったの。」
「あたし達はその写真を使って
脅して来いって言われたから持ってた
だけだから。勘違いしないでよね。」
「フッフフ、ありがとう。
ほら行こっ?神藤さん。」
「うん!月神くん、助けに来てくれて
ありがとう。」
「あ、そうだ。
もし、またこんな事があった時は
覚悟しておいてね。」
その時の彼は笑顔なのにどこか怖い様に
見えた。
「月神くん…めっちゃかっこいい…。」
「それな…。予想以上過ぎてヤバかった…。」
「神藤さん羨ましい…あんなかっこいい人
に守ってもらえるなんて…。あたしも彼氏欲しい…!
それよか猫平のやつめっちゃムカつくしっ!
あたしらの事利用してたんじゃん!」
「なに言ってんの、私は交換条件って
言ったわよね?
それに応じたのはあなた達だって事忘れてない?」
「猫平…あんたね調子のってんじゃないわよ。」
「ふーん、だからなんだって言うの?
月神くんに感化されて心変わりしました
これ以上手出しするようなら私達が
黙ってないから…ってこと?
まぁ別に良いよ?私最初からあなた達に
期待してなかったから。じゃあね。」
「神藤さん…いや神藤ちゃん!放課後家
行っていい?話したいことがあるんだ。」
__……え!?月神くんが…私の事…ちゃん付けで
呼んでる…?え?信じられない…嘘みたい。
嬉しい…!それに話したいこと?
ってなんだろう。__
「うん…!多分大丈夫だと思う!
一応お母さんに確認してみるね!」
「ふーん、いい事思いついちゃった。」
放課後
いつもの光景になりつつある告白を次々に
丁寧に断ってゆく。
うぅ…ほんと心痛い…。
……早くこの騒動に終止符を打たなければ…!
打開策は無いものか…。
早く神藤さんに会いたいな…。
ちゃんと話すって決めたんだ。
「神藤さんっ!」
「えっと…猫平さんで合ってる?」
「うん!合ってるよー。
私、神藤さんと友達になりたいんだ~!
仲良くしてくれる?」
「うん!こちらこそ!」
「ありがとー!あ、神藤さんってこの話
知ってる?
聞いた話なんだけど__」
神藤ちゃんの家の前で息を整え、
身なりを確認する。
だって神藤ちゃんのお母さんだって家に居るし、
第一印象は出来る限り良くしとかないと!
…じゃない?
それにだらしないと思われたくないし!
インターホンを押すと神藤ちゃんのお母さん
がすぐさま通してくれた。
「初めまして、月神 ちかいです。
お邪魔します。」
「えぇ、どうぞ~。
貴方がちかいくんね、話どうりの
イケメンさんね~。
初めまして、あかりちゃんの母です。」
可愛らしいお母さんだな。なんか雰囲気が
ふわふわしてる…?みたいな。
「あかりちゃんてばすぐ部屋行っちゃってね
お母さんちょっと悲しいの…。
だからちかいくん、あかりの事よろしくね!」
「はい!」
部屋に入ると布団で踞っている神藤ちゃん。
ん?え…?……なにこれ?なんで?w
どういう状況?これ…。
「…あの神藤ちゃん?」
「………」
うーん…。何があったか分かんないと
どうしようもないよな…。
「神藤ちゃん?何があったの?
話して欲しいんだけど。」
話しかけながら布団を擦ってみたけど
何も起こらない…。
「うーん…どうしよう…。俺神藤ちゃんに
超大事な話しに来たんだけどな~。
今日は諦めてカエロカナー。」
「……っ…待って!月神くん!」
手首を掴まれて少し驚いた。
…でも顔は見せてくれないのね…
少し意地悪しちゃおうかな?
「でもな~、神藤ちゃんが顔見して
くれないからやっぱ帰ろうかな~。」
「…っ…帰らないで…うぅ…っ…月神くん…。」
………ん?!な、なんで涙目!?どどどどど
どいうこと?本当に何があったの?
「ご、ごめん!意地悪しすぎちゃったよね!?
俺そんなつもりじゃなくて……。
大丈夫?」
「………う、うん。
こっちこそごめんね紛らわしい事して…。」
「いや…神藤ちゃんが謝る事じゃないから
それで何があったのかゆっくりでいいから
話してくれないかな?」
「その…月神くんって霊感?あるの?」
「……ん?なんで?」
霊感?……いったいどこでそんな噂?
みたいなのが……いや心当たりがある人居るわ
だとしてもなんで霊感?
「その…ね猫平さんが月神くんって何か
取り憑いてるみたいだから気を付けた方が
いいって言ってきて…私それ聞いて怖くて…。」
………うん、純粋に可愛いんだけど。
だっていもしない存在でこんな怯えるんだよ…!?
神藤ちゃんには悪いけど虐めたくなるw
でも、猫平さんが神藤ちゃんにそういうのを
言ってきたのってただ単に嫌がらせ…?
当てつけ…みたいなもんだよな…
何とかしなくちゃだなー…。
「大丈夫。安心して?ほら俺はちゃんと
ここに居るでしょ?」
神藤ちゃんの左手首を掴んで自分の胸の方に
もってゆく。
「……うん、そうだね。ごめんね
心配かけちゃって…。」
「ううん、平気だよ。……それで俺の話しても
大丈夫?」
「うん!大丈夫!月神くん聞かせて?」
「……俺、神藤ちゃんに隠してた事があって_」
「さっきの話…神藤さんに話していいですか?」
「…それは……いつかバレることだもんっ!
それを私が止めるなんて事しないよ?
ただ面白半分に命を捨てる人にこの場所が
知れ渡ってないか不安だっただけ…。
それにちかいくん、私の願いはあの子の
幸せだもの。私の代わりにお願い…なんて
図々しいよね…ごめんねこんな神様で。」
「…図々しい訳無いじゃないですか…
むしろこんな俺に生きるチャンスをくれて
ありがとうございます!!
俺が絶対後悔されません!」
「こちらこそありがとう。
こんな勝手な願い事…嫌がらずに引き受けてくれて。
さぁ、もう行って。」
ギュッと彼女の服を握っていた。
隣を見ると不思議そう顔でぎこちない手つきで
頭を撫でる神藤ちゃん。
可愛い…。
「えっと…月神くん?」
「ん?」
「その…今の話…まだ頭が追い付いてないから
もうちょっと待って。」
「…うんっ!」
「あ~!よかった!
ちゃんと神藤ちゃんに言えて。
こんな話都合よすぎて普通すんなりとは
受け入れられないもんね。」
「まぁ…確かに。それもそうなんだけど…
私が一番驚いてるのは思考が読めちゃうって
所なんだけど。」
「あはは…ごめんね?
でも悪い事ばっかじゃなかったと思うけど?」
「うぅ…でもお仕置きです!覚悟!
くすぐりの刑~!」
「え?うわっ!…んふっ…ふふっ………っ
ちょっ…ふふっ…や、やめ…ふっふ…。」
「月神くんの声…エロイ!
誤解うみそうだからもう止めるっ!」
「………ふぅ。でも本当にごめんね。
神藤ちゃんにだって知られたくない事
だってあるのに…無神経だったよね…。」
「………月神くん、大丈夫だよ。
あ、でもこれからは控えて貰えると嬉しいな。
この話はもうお終いね?
私月神くんの小さい頃の話聞きたいな~。」
「うん、わかった。
俺の小さい頃?今とそこまで
変わらないけどなぁ~。」
「ということは幼稚園時代もモテモテ
だったって事?」
「うーん…そうなる…かな。」
「やっぱりそうなんだね。
じゃあバレンタインとか大変だったんじゃ…
月神くん?」
「……うん。大変だった…家の前で待ち伏せ
されたり、机の中に入ってたり、告白も相まって…
学校に俺の休める場所なんて無かったな…。」
「本当にそんなことあるんだね…漫画とか
小説だけだと思ったよ。」
「まぁ俺その日は学校休んで稽古場に
籠ってたよ。」
「ほぉー、月神くんってなんで舞台俳優に
なろうと思ったの?」
「それはたまたま親父が舞台のチケットを
貰ったらしくて
初めて見た時、言葉にならないくらい感動して
俺もこんな風になりたいって思ったのが
きっかけだったかな。」
「そうなんだ、確かに役者さんって凄いよね
本当にその人(役)が居るみたいだよね!」
「うん、それにその役をやるに当たって
自分も人として成長できると思うんだ
人それぞれの考え方があるように物事の
捉え方だって人それぞれ
だから俺、役者として舞台に上がってた
時すげぇ楽しかった!」
笑いながら話す彼はいつにも増して眩しくて
少し羨ましく思えた。
「…いいなぁ、私も何か夢中になれる事
みつけられたら良かったのになぁ~…
ただお姉ちゃんとお姉ちゃんの作品が
大好きなだけだったから。」
「神藤ちゃんにだって夢中になってた物あるじゃん
それに誰かがすぐ近くで応援してくれてる
のってすごく嬉しい事だから。」
「月神くんって本当に凄いな…なんか
全部見透かされてるみたいだよね。」
「そう?俺はそんなつもり無いけどなー…。」
「私にとっては月神くんは凄い人なの…。」
左側から何か衝撃があったかと思ったら
神藤ちゃんが俺の腕によかかっていた。
「……月神くんともっと一緒に居たい
でも私恋愛なんて分かんないし…
私より可愛い子のほうが月神くんにお似合い
だと思う…。」
「…なんでそんなこと言うの?
俺は神藤ちゃんだから好きなんだ
それに俺だって恋愛なんて分かんないし
初めて同士ゆっくり恋人みたくなって
いけば良いじゃん
あと、神藤ちゃん以外の子なんて
考えられないから。」
「月神くん…ありがとう。
私そんな風に言われたの初めてだから凄く嬉しい!」
「俺は劇では結構言ってるけど本心で言ったのは
神藤ちゃんが初めてだから一緒だね。」