神様からのヒント
「あの、神様に聞きたい事が
あるんですが…いいですか?」
「うん、もちろん!だってその為に
連絡先教えたんだもんっ!」
パッと見20代前半ぐらいの
容姿でだもんっ!って…可愛い…!
けど!あざといよ…。
「神様はどういう風に『神様』に
なったんですか?」
「……ちかい君私の願い順調そう?
それによって話すか決める。」
「順調って言って良いのか
分かんないんですけど…手作りクッキー貰ったり、
放課後デートしたり…って感じですかね。」
「そっか…あの子がちかい君の為に…。」
どうするか…家庭科の調理実習って言う部分
抜けてるから神藤さんが自主的に作った事に
なってるんだが…。
「あ…あの神様」
「よし!ちかい君が気になってるんだったら
話してあげよう!」
それは葉はすっかり落ちてどこか寂しさを感じる
秋の日…。
元々は私が描く少女漫画のモデルを探して
画像や動画を見ていた時見つけた人だった。
15秒の内のちらっと映った彼が気になって調べて、
色んな彼を見ていたら
いつの間にかその人のファンになっていた。
SNSも日々いつでも監視体制でツイートがあれば
すぐ見てハート押してコメントして…。
いつしか生で見てみたい!会ってみたい!
まるでそう思ってくれる事を待っていたみたいに
高橋 翔
__月__日に公演する____に__役として出ます!
みんな見に来てね!絶対だよ!
(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノィェーィ!
共演者やスタッフさんと楽しそうにしている写真が
一緒に載っていた。
次の日からは大急ぎで準備をしつつ少女漫画も
予定よりも早く切り上げて毎日まいにちが忙しく
過ぎて行く
それすらも楽しくて嬉しくて心が踊った。
チケット当たってるといいなぁ、
当日髪型、服装どうしよう…
気づいてもらえたりするかな…?
でもあの子は私がこんな風になったのが
気に食わなかったんだと思う。
当日
翔くんの舞台…!そう思えば思うほど頬が緩む。
この日のためにこの作品の原作だって読み込んだ。
翔くんはどんな風に伝えるのかな?楽しみ!
いつもよりも気合いの入ったメイク、髪型、服装。
「お姉ちゃん、本当に行くの?」
「うん、行くよ?だって私にとっては翔君の
初めての舞台だもん!見届けなくちゃ!」
「…………そっか、行ってらっしゃい。」
この時何か私に言いたい事があったんだと思う…。
だけど私は、好きな人を追いかけるのに
夢中で気づけなかった。
「ねぇ、立花 ゆりの____って最近面白く
ないよね。」
「あー確かに、なんかありきたり?って
言うかトキメキ不足?みたいな。」
「そう、それ!だから私読むの
やめようかなーって思ってるんだよね~。」
「私もどうしようかな~、単行本持ってるけど
売ろうかな…。」
「売っちゃいなよ!私も読むのやめるし
というかさ、なんで面白くなくなったんだろう?
体調不良?それともネタ切れ?」
「うーん…もしかして手抜いてるんじゃない?」
「だとしたらショックだな~。」
その時初めて読者の声を聞いた…。
私の作品ってそんな風に思われてるの…?
それからはひたすらに走っていた。
気がついたときには…
「……か!………ますか!……えてますか!
………聞こえてますか!」
意識が朦朧としていて自分が
どうなっているか確かめようにも
思うように体が動かない。
僅かに聞こえたのはサイレンの音と何度も
安否確認をする男の人の声とヒソヒソと話す声。
あー、わたし……………。
次意識が戻った時、私は自分の体を
見下ろしていた。
「私…ショックでがむしゃらに走って…。」
「あなたは車に轢かれたのです。
そこであなたにお願いがあります。
私の跡継ぎになってもらえませんか?
神様になればあなたの家族、友人を見守る
事が出来ますよ。
でも生まれ変わる事は出来ません。
どうしますか?」
「………わ、私は…。」
心残りはある。
でも…生まれ変わるのは怖い…。
ごめんね…あかり、お母さん、お父さん、
私帰りたくないの…。
「神様、私跡を継ぎます。
その代わり一つお聞きしてもよろしいですか?」
「えぇ、なんでも聞いて。」
「神様って具体的に何をするんですか?」
「んー…そうね、現世を見守り続ける事…
ぐらいかしら?
細かいことはこの本を見て。
じゃあ私は用済みということで去るわね。」
「以上!私が神様になるまでと
私が推していた人の話。
………ちかい君ううん、翔くん。」
「俺の本当の名前は…高橋 翔…?」
じゃあ…あのヤンキーが言っていた翔って
誰なんだ…?
「違うよ、そっちは芸名で本名は高橋 翔
ってネットに書いてあったから
本当かどうかわかんないけど…。」
「ありがとう神様!俺用思い出したから切るね!」
「う、うん。」
電話切った後俺はあの場所に向かった。
「あーあ、ちかい君に嘘ついちゃった…。
本当はお姉ちゃんもう居ないんだよね…。」
お姉ちゃんの仏壇の写真は笑顔で。
「お姉ちゃん、ごめんね…私…。」
こんな時お姉ちゃんなら
「ほら、あかり泣かないのっ!あかりはみんなを
照らす明かりなんだから笑ってなきゃ。」
ニッと笑って元気をくれる。
「………っ……お姉ちゃん…!」
あの時本当は行ってほしくなかった。
でも私の我が儘でお姉ちゃんを困らせたくなくて
我慢した。
お姉ちゃんはどうして亡くなったの…?
ニュースで流れた時、死因がはっきり分かって
無いようで捜査中と言う言葉だけが延々と
流れた…。
いつの間にかそのニュースも流れなくなり、
何事も無かったように明日がくる。
考えられるとしたらお姉ちゃんへの誹謗中傷…。
ファンレターの中に嫌がらせ目的の手紙が
入っていた事があった。
そこには…大きな字で
◯ね!つまんねぇんだよ!!
くそがっ!
そう書いてあった。
さらにカッターの刃がいくつも入っていた…。
「お姉ちゃん…これやばいよ…。警察に言おうよ…?」
「……ううん、私は大丈夫だから幸い
利き手じゃなかった!
だから心配しないで?」
お姉ちゃんは笑っていた。
本当は怖いはずなのに…。
でも私たまたま見ちゃったんだ。
お姉ちゃんが一人で泣いてる所…。
だから私決めたの。
お姉ちゃんには笑っていてほしいから
学校であった面白い話や高橋くんの良さに
ついて話したっけ。
懐かしいや…。
「お前ら、姿変わっても俺は俺だから
またよろしくな。」
「当たり前じゃん!」
「あー、だからあの時誰かに
似てるなって思ったのかな~?」
「まぁ結果的に翔に会えたから良くね?」
「いや、お前が仕切んなよっ!」
「あははっ!それもそうだな!」
またこうしてこいつらとバカやれるのが
嬉しくて笑った。
これも神様のお陰だな。
ありがとう神様、俺にチャンスをくれて
だから俺頑張ります!