作戦開始
昨日、改めて気づいた。
家…近くないか?
説明すると神藤さんの家の前を曲がるとすぐ
俺の家がある…。
いや、いくらなんでもこれは…
都合よすぎないか?
世間って狭いんだな…。
ちらっと横を向くとおどおどしている神藤さん。
_え、待ってまさか一緒に登校できるなんて
思ってなかったからテンパる!
だって…月神くんの横顔
かっこ良すぎるんだもん…!_
ズキュン!と俺の心は射止められました…
いや、こっちが待って?
なんですか、その発言…無自覚…?
可愛すぎませんか?
俺の方がテンパるんですが。
冷静を装っているつもりでも
ニヤてしまうちかい君。
それがバレないように手で隠す。
__あの二人初々しいわぁ~。__
__いいなぁ~あんなかっこいい
彼氏がいて、羨ましい。__
__アオハルかよ。__
あっちこっちから知らない人の声が聞こえる。
うーん…こうゆうのはちょっと厄介だな…。
神様にお願いしてどうにか出来ないのかな?
さらに学校近くになりヒソヒソと話す声が
ちらほら聞こえてくるのに若干うんざりしていると
__何あれむかつく。__
そんな声が聞こえた。
一波乱起こる感じ?それの前触れなのかな?
教室に着くなり女子からの黄色い歓声。
なんでこんなになってんの?
だって昨日初めて会ったんだよ?
早くないかな
この…アイドルみたいな扱いされるの。
先生の話しなんて耳に入らないくらい今悩んでいる。
何をすれば神藤さんはときめく?自然に近づける?
ちらっと真剣に先生の話しを聞いてノートを
書いている神藤さんはすごく綺麗だった。
思わず見入ってしまうほど。
だけど心の中は慌ただしかった…。
__え!!月神くんがこっちを見ている?!
えぇどうして…もしかして寝癖ついてた!?
いやでも、朝ちゃんと直して来たのに…__
こんなことを思っていることが
面白くて笑うと
__今…笑った…!え!なんでだろう…でも
笑った顔もかっこいい…!__
こんな感じで喜んでくれる。
流石にずっと見られてるのは恥ずかしくて
そっぽを向くと落胆してそっちを向くと
満面の笑みを浮かべ見ていて飽きない
面白い子だと思った。
家庭科の授業でオリエンテーションを兼ねて
好きな物を作って良いことになったのだが
俺にとっては嬉しくない…。
だって…
「ねぇ!月神くん私が作ったの食べて!」
「私のも!」
「私のだけ食べて!」
ほらこの有り様…。前にも同じ経験したから
打開策は知ってるから大丈夫だけど
憂鬱なんだよね…。
「ごめんね、俺好きな子から貰いたいんだ。」
「え!月神くんの好きな人って誰?」
「気になる~。」
「ねぇ、教えてー」
「ん?内緒。」
ぐいぐい来る女子達を宥めながら神藤さんの
方を見ると真剣になにかを作っていた。
__月神くん…食べてくれるかな…?
ヤバい不安…不安すぎる…上手に出来かな?
焦げちゃったらどうしよう…。
お願い!綺麗に出来ますように!__
………健気か…!やべぇ…ドストライク過ぎる…!
神藤さんだったら是非貰いたい!
むしろ催促しちゃダメ…かな?
だって焼き上がったクッキー?
見て微笑んでるよ~!
なにあの子可愛くないか?
例え形が歪でも全然構わない
むしろ味がっていい…!とすら思えてくる
なんて俺相当重症じゃね?
「月神くん…!その…私が作ったの食べて
くれませんか…?」
うぅ、不安そうな顔も可愛い…!
でも冷静に…落ち着け俺…!
「神藤さん、月神くんって好きな子からしか
貰わないんだって。」
……はぁ…墓穴掘ったわ…。
でも挽回は出来る。
「あははっ、ごめんね。」
周りに居る女子達に向けていった。
神藤さんに小さな紙切れを
バレないように渡す。
「…そっか、私の方こそごめんね。」
ごめん!かえりに貰う。
「もう!何あれびっくりしたんだけど!」
「あはっはは、ごめんね?
でも神藤さんに誤解されたなくて…。」
「…もうしないでね。」
「うん。それとクッキーありがとう。」
「いえいえ、でも形歪だったよね…
お菓子作り苦手で。
お姉ちゃんなら綺麗に
作っちゃうんだろうな~。」
「へぇ~、神藤さんお姉さん居るんだね。」
「え?う、うん居るよ…。」
…もしかして聞いちゃダメ…だった?感じかな…。
「これから遊び行かない?」
「え!放課後デート…!」
「うん!お詫びも兼ねて俺の奢りでどう?」
「お詫びって…私もう気にしてないよ?」
「うーん、じゃあ初の放課後デートの
記念にって事で。」
「でも…いいの?」
「いいのっ!ほら行こ?」
着いた場所はゲームセンター。
久しぶりに来たかも…。
よくあいつらとここに来たなぁ。
懐かしい。
「月神くん?どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ。」
「あぁ"~!取れねぇ~!」
「ばーか、お前どこ狙ってるんだよw」
「お前本当下手くそだよな!
こんな時、”翔”が居たらなぁ~
すぐ取っちゃうのに。」
「バカお前、”翔”は…もう…。」
「………わりぃ、そうだよな…。」
聞き覚えのある名前…な気がした。
考え事をしていたせいで神藤さんが
行ってしまった事に気がつかなかった。
「……え、神藤さん?どこ…。」
「ねぇ、君暇だったら俺らと遊ばない?」
「…すみません…!友達と来てるので…!」
「じゃあその友達も含めて遊ぼ?」
__どうしよう…少女漫画でほんのちょっと
いいなぁって思ってたけど全然よくない…。
月神くん、助けて!__
「あの……っはぁ…その子…
俺の彼女なんですけど。」
走ってきたからめっちゃ疲れた…。
__月神くん…本当に来てくれた…!__
「なんだお前、俺達はこの子に用があんの!
邪魔すんなよ。」
「お前かっこいいんだから他の子にしろよ。
じゃないと、痛い目見るよ。」
「…ふっ、生憎そんなこと言われて、諦めるほど
お人好しじゃないんだよね。」
「あ…あの~…流石に店内だと迷惑になっちゃうし、
人目もあるし…ね?」
「この子の言う通りだよ。純場所かえよ?」
「…“純“?」
「…なんだよ…俺は坂下 純だけどなに?」
「俺は月神 ちかい。
どっかで聞いたことある名前だと思って。」
「いや…俺お前の事知らないんだけど…。
勘違いじゃねぇの?」
「……そうかもしんない…わりぃ。」
「……はぁなんか興が冷めたわ、行こうぜ。」
「お、おう。」
俺の中には”坂下 純”と“翔〝という
名前がループする。
聞いた覚えがある…でも…思い出せない。
「……月神くん…っ…怖かった…っ…!」
後ろに居た神藤さんの緊張が解けたのか
崩れるように泣き始めた。
俺が目を離したせいで怖い目に合わせてしまった…。
彼女を包み込むように抱き締め優しく背中を擦った。
ごめんね……ごめんね、一人にしてごめん…。
怖かったよね…不安だったよね…。
こんな事がもう無いように俺が守るよ。
帰り道
泣いて目を赤く張らした姿を隠す為に神藤さんを
おんぶして歩いて居ると規則正しい
寝息が聞こえてきた。
そんな所も可愛くて頬が緩む。
それにしても…神藤さんって…着痩せするタイプ…
なのかな…!
ほ、豊満な…っ…いやいやこれ以上は言わない!!
だって…ね!………言ったらダメな気がして…。
背中にあたってるそれを意識しないように頑張って
みるもやっぱり男の子、気にしちゃってますw
神藤さんを家まで無事送り届けた。
うん!俺は耐えた!頑張った!
そういえば前にもこんな事合ったような…?
あいつらとつるむようになってから少しずつ
クラスの人とも話せるようになった。
一人の女の子に
「____くんは優しすぎるよ。本当に大切な人が
出来た時後悔すると思う…だから気をつけてね。」
そう言われたのを思い出した。