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18羽 宿と天使の心構え

 夕方、予定通りに私達は、道中にある村に到着することができた。

 ここが「ハイラ」という村だということを、村の入り口にある看板で初めて知った。カレルドも名前を忘れていたのか、「ああ、そういえば」などと言っていたが、地図にも書いてあったようだし、何度も来ているんじゃないのか、と言ってやりたくなった。まあ、そんな細かい事にこだわるのは止めよう。

 馬から下りて、村の自衛団の男性に頭を下げると、村の中へと入る。

「何事も無く、着いてよかったね」

「いや、何事も無くなかっただろ……」

 熊の後は、三人程の野盗に襲われそうになったのだが、カレルドの防寒具の下から覗く騎士の鎧に気付くと、彼らは慌てて逃げ去っていった。

 治安の為には夜盗を捕らえるなりしたほうが良いという、カレルドの真面目っぷりを抑えるのに私は苦労した。先は長いというのに、怪我でもされたらたまったものではない。

 馬の手綱を握るのはカレルドだが、その前に、私がカレルドの手綱を握っておかなければいけなくなるとは思ってもみなかった。


「特に買足す物がある訳でもないから、宿屋に行ってゆっくりしようか」

「はい」

 実際、全力で魔法を使った事もあり、私はかなり疲労していた。とはいえ、それをカレルドに気付かれる訳にもいかないので、寝るまで大人しくして、極力無駄なことはしないよう心掛けるしかない。


 村の人の案内で、宿屋はすぐに見つかったが、問題は部屋だった。

 手持ちに余裕の無い私としては、贅沢を言えないが、カレルドが個々に部屋を取るつもりなのか、一室で済ませるつもりなのか、ずっと気になっていた。

「素泊まりで一室銀貨二枚だよ」

 宿屋の主人の言葉に、カレルドはちらりと私の顔を見る。部屋をどうするか、ということだろう。

 銀貨二枚程度なら大丈夫。私は黙って頷いた。

「じゃあ、二部屋お願いします」

 その一言に、私はほっと胸を撫で下ろした。けれど何処かでガッカリしている私が居る。

 真面目な彼の事だから、婚約者の居る身で女と同室など、自分から言い出す事は無いのかもしれない。

(つまり、振り向いて欲しかったら、私から押さないと駄目だって事なの?)

 気付いて愕然とした。

「あははー……」

「何? どうした?」

 思わず心の中の空笑いが声に出てしまった。カレルドはともかく、宿屋の主人の訝しげな視線が痛い。

「何でも無いです。ちっと思い出した事があって……」

 とりあえずは誤魔化す。

(こうなったらファラーナちゃんの色香で惑わせ……)

 と思ったが、惑わせられる程の大人の色香も無ければ、悩殺出来るような肢体でもない。

 そうなればもう、一朝一夕でどうにかなるものでもないと、割り切って考えるしかなかった。

 気付かれないよう、隠れてため息をつきながら、部屋に向かう。

「荷物を置いたら食事にしよう」

「はーい」

 お腹もすいていたので、カレルドの言葉に喜んで賛同する。

 とりあえず、今日は色々と考え込まず、疲れた体をゆっくり休めよう、そう決めた。


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