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10羽 天使は自分の存在を考える

「よう、カレルド。その子が嫁さんか?」

 これと同じような言葉を聞いたのは村に来てから何度目だろうか。

 村ですれ違う人々に声を掛けられると、一緒に居た私の事を恋人か妻かと聞かれる。最初のうちはカレルドも真っ向から否定していたものの、何度も聞かれると次第に面倒になったらしく……。「違うけど、説明するのが面倒なので好きなように受け取ってください」と言うようになった。

 私もカレルドと同じように顔を赤くして全力で否定していたものの、もうどうでもよくなってきている。面倒だからいっそのこと「妻です」とさえ言ってしまおうかと思うようになった。

 だが会ったばかりの女に妻だと言われて良いはずが無い。そもそも、カレルドには婚約者がいるという話だったはずだ。では、その女性のフリをすれば良いのだろうか。そう考えた時、なぜかモヤモヤした気持ちになった。

 余計な考えを振り払うと、村人と楽しそうに会話をするカレルドの横顔が気になった。砦で見る顔とは全く異なる普段着の顔。生き生きとした顔に見入ってしまう。


 言い換えれば、そうやって村の人々に声を掛けて貰えるだけ、カレルドと言う人物は信頼され、親しまれるような存在なのだと知ることができた。こういう誰からも慕われるような存在の妻になるという事は、人間にとって幸せなのではないだろうか。

 天界に戻る望みが薄い私にとっては、人間として生きる道を考える必要がある。ではその時、私にとってカレルドというのはどういう存在になるのだろうか。

 いや、カレルドには婚約者が居る。……あれ、私堂々巡りになるんじゃないか?

 何でそんな事を考えているんだろう。地上に降りてから、私の頭はどうにかしてしまったのだろうかと思う程だ。


「カレルドさん、結婚して村にお披露目にきたのかい?」

 雑貨を売る女店主はにこやかに言った。

 着替えの他に、旅の仕度を整える為に色々買ったのだが、新居に持ち込む物だと勘違いされたらしい。いや、元々結婚した相手を連れて来たと思ってっていたところに、決定的な駄目押しをしたと言った方が正しいのかもしれない。

「可愛いお嫁さんだねえ」

 私の顔をまじまじと見ながら、女店主は笑顔を向ける。

「あ、私は……」

「いいのいいの、お似合いだわよ。いっぱい買ってもらったし、安くしておくね」

 否定しようとする私の言葉を遮り、勝手に解釈して値引きをしてくれた。安くなる分には有り難いので否定はしないでおこう。

「でも、赤くなっちゃって。照れてるの? いい娘さん見つけたわねえ」

 言われて、気付いた。私の顔は赤くなっているのか。はっとしてカレルドの顔を見ると、同じように顔を赤くしていた。

 視線に気付いたのか彼がこちらを向いた。瞬間、目が合ってしまい、慌てて横を向いた。

 胸の鼓動か聞こえそうな程に、緊張して……緊張? なんだろうこの感じ。自分自身が理解できなかった。


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