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帝国の曙  作者: Admiral-56
18/21

第一七話 王国の戦乙女

場面はまた飛びます


今度はシンガポールですね


そして、初のイギリs…ブリタニア王国の人間の登場です


この大戦の開戦当初、主な戦場は欧州であった。


世界連盟の一国であったフランク共和国が健在であった頃、大西洋と地中海を繋ぐジブラルタル海峡は連盟軍の勢力下であったのだ。


その為連盟軍艦隊はジブラルタルから地中海に入り、地中海にてゲルマニア・ローマ艦隊と死闘を繰り広げていた。


その中でも特に人々の記憶に残るのはバレアス海海戦である。


この時陸上ではゲルマニアの電撃作戦によって戦線が押し込まれており、連盟軍としてはこの海戦では負ける訳にはいかなかった。


しかし地中海は狭く、大艦隊では自由に動くことが出来ない。


更に連盟軍を悩ませたのは、敵の強力な高速戦艦の存在だった。


それは、ゲルマニア海軍のビスマルク級とローマ海軍のヴィットリオ・ヴェネト級である。


ビスマルク級は砲口径こそあまり大きくはないものの、その高機動性と頑丈な船体設計は連盟軍主力戦艦のそれを上回っていた。


ヴィットリオ・ヴェネト級はビスマルク級程の頑丈さは無かったが高速でありながら重武装であり、連盟軍側の主力戦艦の殆どが14インチ砲を採用していたのに対し15インチという大威力且つ長射程の砲を採用していたのだ。


またゲルマニア・ローマ海軍は空母を保有していなかったが、連盟軍は地中海沿岸の基地から飛来する敵航空機群にもかなりの打撃を受け、戦艦4隻に空母2隻、その他20隻以上の損害を受けていたのである。


だがこの海戦は最終的には、連盟軍艦隊の勝利に終わった。


それに貢献したのは、1人の若き女性指揮官が率いる巡洋艦戦隊であった。


当時海軍大尉。


現在は東洋方面艦隊司令長官を務めるソフィア・ハリス海軍元帥である。


ソフィアは別働隊として少数精鋭の部隊を以て敵艦隊側面から殴り込みをかけ、ゲルマニア・ローマ艦隊に大打撃を与えた。


更に、敵艦隊旗艦であるビスマルク級戦艦フォルストマンを大破にまで追い込んだのだ。


その見事な戦果と美しい容姿から、国民達の間では"戦場の女神(ヴィーナス)"と呼ばれるまでになり、絶大な人気を得たのである。


華々しい戦果を残した彼女は、24歳という若さで海軍元帥の地位を獲得。


勿論この昇進は異例なものであり、当初は疑念を持つ者も少なからず存在したのだが、戦時という特殊な状況下では英雄が異例の昇進を果たすことは決して有り得ないことではない。


また後押しをする国民の声もあり彼女の昇進は受け入れられのであった。


そして王立軍参謀本部の判断によってソフィアは東洋艦隊司令長官となったのである。


しかしソフィアが東洋方面艦隊の本拠地であるシンガポールに移動した半月後にフランク共和国は降伏し、ジブラルタルを抑え切れなかった連盟軍は地中海から追い出されてしまったのであった。


「…間もなくここにも彼らが侵攻してくるのね」


「はい…奴らの目標がマレーであることは疑いようのないことかと…」


「……」


愛用のティーカップに注がれた紅茶を見詰めながら、ソフィアは溜息をつく。


脚を組みながらのその姿はまるで女優が演じる映画のワンシーンの様で、どこか現実味が無いようにも見える。


副司令であるジャック・フィネガン少将はそんな風に思った。


「あの男…マッカーサーには悪いけど、やっぱりフィリピンを取られたのが痛いわね」


「やはり、航空戦力の進出があると…?」


「でしょうね。Betty…彼らの言葉では"いっしきりくこう"…だったかしら?アレならフィリピンで給油すれば充分南シナ海全域で作戦行動ができるでしょう?」


「確か初飛行時に飛行距離4300kmを記録したとか…爆装量によってはこのシンガポールを空襲することも不可能では無いかもしれませんね」


「どうも本国はあの国を過小評価しているようだけれど…あの国が何を隠しているか分かったものじゃないわ。現に、いつの間にか建造されていた新造艦隊にアメリカは敗れたのでしょう?」


「ええ。何でも、一方的な敗北だったと聞いています」


「…ねぇ、ジャック」


「はい?」


「ここも…撤退する準備が必要かもしれないわね」


「…!!シンガポールを…捨てるのですか」


「……ええ」


ソフィアは顔色を変えずに、紅茶を少し口に含む。


「…戦う前からそんな逃げ腰だなんて、貴女らしくないですね」


「今回はバレアスの様にはいかないわ。"海軍音痴"のプロイセンなら兎も角、チャイナとソビエト…そしてアメリカを海戦で降した相手じゃね」


「しかし、今回貴女が率いているのは巡洋艦戦隊ではなく一個艦隊ですよ。しかも本国はプリンス・オブ・ウェールズとレパルスまで派遣してくれました」


「ジャック、逆に言えばそれ"だけ"なのよ」


「どういう…意味でしょうか?」


「本国はプロイセンの相手で手一杯。だけれど、海上戦力では日本はプロイセンの比じゃないわ。そんなの相手に新鋭戦艦1隻とその他諸々でどうにかなると思う?」


「……」


「こんな所に植民地を持ってしまったことへの報いね。この調子じゃ私達と同じくアジアに植民地を持つネーデルラントの援助も期待できないわ。…彼らもあっちでは祖国をプロイセンに蹂躙されてこっちでは日本の侵攻が迫っていて、可哀想だけれど…」


「しかしシンガポールを手放すとなれば、アジアの制海権は完全に日本の有利になってしまいます。ここは踏ん張るべき所では?」


「踏ん張る?踏ん張るということは何かを待つの?」


「それは…」


「…残念だけれど、本国もアメリカも助けてはくれないわ」


ソフィアは視線を落とす。


確かに連盟軍がダンケルクの戦いで敗れて以降ブリタニアは対プロイセン戦線の最前線になってしまい、最近ではプロイセンが長距離砲を開発したことでドーバー海峡を越えての長距離砲撃がブリタニア本国に降り注いでいる。


またプロイセンはジブラルタルに難攻不落の大要塞を建設し海峡の護りを強固なものとし、今やプロイセンの内海と化した地中海で海上戦力を増強しているのだ。


今はジブラルタルから出てくるプロイセン艦隊を迎撃し大西洋への進出を抑えるのが精一杯であり、ブリタニア艦隊はこれに全力を注いでいた。


本国から遠く離れた亜細亜の植民地は二の次になってしまっているのである。


「…分かりました。では艦隊には撤退の準備をさせましょう」


「ええ。プリンス・オブ・ウェールズとレパルスと駆逐戦隊以外はいつでも撤退出来るようにしておいて」


「…?それはどういうことです?」


「流石に何もしないで撤退となれば本国も黙ってはいないわ。撤退するなら撤退する理由付けをしないとね」


もう一度ティーカップに口を付け、そして続ける。


「本国が派遣してくれた新鋭艦隊があっけなく敗北して司令官が戦死した…となれば、撤退の理由には充分でなくて?」


「ま、まさかそれは…!」


ジャックはソフィアの言っていることの意味を理解し、驚愕する。


彼女は、艦隊撤退の言い訳の為に死のうと言うのだ。


「勿論、プリンス・オブ・ウェールズには私が乗るわ。」


動ずる様子もなく、さも当然の様に話すソフィア。


こういった普通では有り得ない突拍子もないアイディアを思い付く人間が、当時は周囲の同意を得られなくても、後に賞されることも少なくない。


だが勿論、兎に角突拍子も無いことをすれば良いという訳ではない。


「司令、そういう訳にはいきません!他に方法は…」


「時間さえあれば幾らでもあったでしょうね。でも諜報員からの情報によれば今、キュウシュウのカヤ基地に大規模な航空戦力が集結しつつあるという話しよ」


「既に敵は動いているのですか…!」


「どうもあのクーデター以来、あの国の行動は驚く程に早くなった。…フッ、プロイセンの電撃作戦にボロ負けしたことを思い出すわね」


「しかし、それでも貴女を囮にして逃げるようなことは―――」


ジャックがそう言いかけた時だった。



ウーーーーー



警報が鳴り響き、直後発砲音が響き渡る。


「…対空砲の音ね…?」


ソフィアが組んでいた脚を崩し席から立ち上がり窓に近付こうとすると、1人の兵士が部屋に飛び込んできた。


「敵機が飛来しました!!」


空かさずジャックが問う。


「数と機種は?」


「1機です。機種は恐らく『Mavis』かと」


「Mavis…あの旧式の飛行艇か」


Mavisと言うのは、九七式大艇に連盟軍が付けたコードネームだ。


連盟軍は日本軍の航空機にコードネームを付けて呼んでおり、先のBettyと言うのも一式陸攻のコードネームである。


「…確かつい先日も飛来していたわね」


「ええ、ここ暫くしょっちゅう飛来しています。恐らく偵察飛行だと思いますが…」


ソフィアは窓を開け、バルコニーの柵から身を乗り出して空を見上げる。


対空砲弾が炸裂した証である黒煙が集中している箇所を注視すると、遥か上空を飛ぶ黒点が見えた。


懸命の迎撃が続くが、どうも砲弾は届きそうにない。


「…あの調子じゃ、アレが降下して来ない限り撃墜は厳しそうね」


「司令、念の為に中にお戻りください」


「偵察飛行なら爆装はしてないと思うけれど…アレは2000ポンド爆弾も搭載出来ると聞くわ。そんなものがこの建物に直撃すれば結果は変わらないわ」


「それはそうですが…」


ソフィアは部屋に戻ると再び脚を組み椅子に座った。


「…敵の侵攻開始は近いわね。ジャック、Catalinaの稼働率はどうかしら?」


Catalinaというのは、アメリカが開発したPBYという飛行艇の愛称である。


「3機が修理中で他にも損傷がある機体はありますが…8割は動かせます」


「そう…」


再びの溜息。


いや、これは深呼吸だろうか。


「ジャック、南シナ海の偵察行動を強化して。もしCatalinaだけで足りないようなら重爆も偵察装備で出撃させなさい」


「イエス、マム。直ちに司令を出しましょう」
















ソフィアの経歴設定はまぁ、多少強引な気もしますが堪忍して下さい


実質、若い指揮官を出すための言い訳みたいなものなんで…w

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