第一五話 戦士の焦燥/憂鬱
マッカーサーが戦前と戦後で日本人への捉え方が全く違うのは面白いですね
個人的には天皇陛下と会われた時の話が好きです
はてさて、この世界では"陛下"とマッカーサーが対面する時は来るのか…(決めてない)
「サンティアゴ島砲台陣地陥落!」
「カグバレット島通信途絶!」
「ルセナ基地陥落…突破されました」
「止めることは…出来ないのか…っ」
未だ戦闘開始から3日であるにも関わらず次々と飛び込んでくる基地や陣地陥落の報。
敵は順調にマニラへ近付いてきている。
そのことにマッカーサーはイライラしていた。
実際マッカーサーは、15万を越えるフィリピン守備隊ならば日本軍は抑えることが出来ると考えていた。
また人種差別的観念からアジア人を見下しており、まさかここまで圧倒的に攻められるとは思っていなかったのである。
しかし、マッカーサーが期待していた航空機部隊は早々に攻撃され壊滅し、B–17等の大型爆撃機やP–40等の戦闘機合計200機近くを失っていた。
「くそ…こんな、こんなことがあってたまるか……白人でもない奴等に圧倒されるなど…っ」
「司令、マッカーサー司令!」
「なんだ!!」
「本国から…ワシントンからお電話です」
「ワシントンから…?やっと援軍を送る気になったか?」
「なんだと!?私に逃げ出せと言うのか!?」
『分かってくれルーカス、君は本国でも人気が高いんだ。そんな君が敵に捕縛でもされようものなら、軍や国民達の士気がどうなるか…』
「そんなこと、知ったことじゃない!」
電話は、ヘンリー=マーシャル陸軍参謀総長からだった。
「それより、増援はまだか!?こっちは補給も無い状態だ!!これでは持たない!!」
『そうは言ってもだな。本来フィリピンを支援するはずの米太平洋艦隊が壊滅したことは知っているだろう?』
「勿論知っている。無様にハワイ諸島をジャップ共にとられたこともな」
『辛いところを言うな。普段は歪み合ってる相手だが今回ばかりは海軍に同情せざるおえん』
「それはどうでもいい!オーストラリアの部隊は動かせないのか!?」
『ハワイを抑えられた今、日本軍のオーストラリア侵攻の可能性も高い。容易には動かせん』
「フィリピンを取られたら更にその可能性が高くなることも分からんのか!!」
『ルーカス、冷静になれ。本国はフィリピンを捨てるかもしれない。今オーストラリアに新たな極東派遣部隊司令部を設置する計画が出ている』
「……っ!!」
『まあまだ分からんがな。ただ、君には撤退も視野に入れておいて欲しい』
「You bastard! 俺は絶対に撤退なんかしないぞ!!」
ガシャッ
マッカーサーは荒々しく電話を切った。
「クソッ」
「あの…司令」
「なんだ!」
「このままではこのマニラが陥落するのも時間の問題です。ここは南へ撤退しましょう」
「なんだと!?」
「報告は以上です」
「ご苦労。さて、あとはマッカーサーがどれだけ粘るか…」
ハワイ決戦後、黒鉄部隊は一旦真珠湾を泊地としていた。
かつて星条旗が掲げられていた建物には今や日章旗が翻る。
「…しかし、こうなると正直退屈だな。やることがない」
「そう仰らないでくださいよ…」
峰崎の呟きに、塩田は呆れた様子で応えた。
峰崎は溜め息をつき、艦橋から外を眺める。
視線の先では、戦艦三隻のサルベージ作業が進められていた。
戦艦アリゾナ、オクラホマ、ネヴァダ。
先の真珠湾攻撃に於いて、真珠湾から脱出する前に戦闘不能となってしまった三隻である。
アリゾナは雷撃により艦内に大量の浸水を発生させ、大破着底。
真珠湾の水深は18mと浅かった為、艦橋や主砲の一部は海面から出たままであった。
オクラホマは艦尾が破壊され、前半分は浮上状態ではあるが後半分は海底に着いており、後ろに仰け反るような状態で大破していた。
ネヴァダは舵が破壊された為方向転換が出来ず、そのまま浅瀬に乗り上げ座礁していた。
「やはりアリゾナの損傷が一番大きいか」
「ええ。なにせ完全に着底していますからね。ネヴァダは今座礁した浅瀬を掘る形で引っ張り出し、オクラホマは後部に浮きを取り付けて浮上させる予定のようですが、アリゾナは全体に浮きを付けて浮上させるか、サルベージ船を大量投入して引っ張り上げなくては…」
「…」
「司令、中にはスクラップにして新造艦の材料にした方が安く上がるという意見もありますが…」
「それは、そうかもしれん。だが―――」
峰崎は港のある一点に、一瞬だけ視線を向けた。
「どうにも効率と合理だけでは動けないのが人間というものだ」
峰崎を視線を向けた場所。
それは、日本軍のハワイ占領直後に造られた共同墓地であった。
黒鉄部隊が真珠湾に入港した時、そこは凄惨な有り様であった。
海面に漂う無数の遺体。
それも、一人分ではなく身体のパーツであったり、または何処か一部を失った者ばかりであった。
投下された航空爆弾の爆発を諸に受けてしまったのだろうか。
それとも、機銃掃射で身体を蜂の巣にされたのだろうか。
また軍港施設も散々であり、未だ黒煙を上げる倉庫に血飛沫の跡。
木っ端微塵になった対空砲台には、赤黒い何かが飛び散り、こびり付いていた。
そこで海軍将兵達は可能な限りそれらを回収し、そして火葬。
遺骨を共同墓地に埋葬したのである。
急遽作られたものであったため、粗末なものではあったが木材を加工した十字架も立てられた。
「英霊達の依り処でもあるんだ。そうそうスクラップには出来んさ」
「はぁ…そういうものなのでしょうか」
「…しかし、こうしてみるとやはり実感するな。戦争の悲惨さというものを」
峰崎は再び溜め息をつき、遠くを眺めた。
「やることがなくて退屈だとか言ってたのは何処の誰ですか」
「それとこれとは別だ。…と言うより、この悲惨な光景がフィリピンでは現在進行形で増えているというのに、こうして何もせず待機していなければならんことに納得していない。…と言うべきかな」
「…司令は、非開戦派でしたか」
「………いや、どちらでもないよ」
峰崎は少し考え込んだが、どちらでもない。という曖昧な答えを出した。
塩田は何を感じたのか、それ以上の追及はしなかった。
ここからちょっとずつ、自分の思想や思ってることが出てくるかもです
取り敢えず演説小説みたいに語ってばかりにはならないよう気を付けたいですね
あとヒロインの登場がまだ先になりそうで辛い…




