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土曜日。ルナールプロダクション合宿初日。朝の9時。
ルナールプロダクション四階のAルームに参加者が集まっていた。
参加者9人と面接官4人。
参加者たちはなんのための合宿かは聞かされていない。
そして、人数が少ないことを気にしている。
古嶋は入口正面の壁の前に立っている。隣にはマスクとサングラスにニット帽をかぶった栗崎。
入口横には奥村と辻が立っている。
古嶋が全員揃っているのを確認すると、参加者に集まるよう声をかける。
参加者は輪を作って集まった。
「よし。これから三次予選を行う」
参加者はどよめく。
合宿ではないのかと。
「これから五人ずつで二つのグループに分ける。名前を呼ばれた人はその場で座ってくれー。まずは、海山陸」
陸は最初に名前が挙がったことでびくりとしたが、すぐに腰を下ろした。
「次に平野清香。小松沙耶。川谷花菜。――呼ばれなかった人は向こうの奥村のところに行ってくれ」
立っている五人は奥村の方へ行く。
そして、奥村が五人を確認すると皆を連れてAルームから出ていった。
Aルームには座っている四人と古嶋、栗崎だけが残った。
首をかしげている平野が古嶋に質問をする。
「あの。五人ずつのグループではないのですか? こちらは四人しかいませんわ」
古嶋はニヤリとした。
「きちんと五人いるぞ。もう一人はおじさんの隣のこいつ」
古嶋はそう言いながら栗崎の頭に手を置いた。
「その方は面接官ではないのですか? スタッフの方でしょうか?」
「面接官ではあるが、それは今日で終了だ。今日からは君たちの仲間。まあ顔を見せた方が早いか」
古嶋は栗崎に頷いて合図した。
栗崎は一歩前に出る。そしてポーズをとった。
座っている四人はこのポーズに既視感があった。
「ヤッホー! いつもはお腹ペコペコ! それでも元気にガンバル!」
四人は、このうざいポーズとうざい台詞はまさかと思った。
「「「「栗崎円!?」」」」
栗崎はマスクとサングラスを外した。
「そう。あーしだよ!」
四人は理解が追いつかない。
陸が訊く。
「あんたアイドルなんじゃなかったの!? この前も学校の屋上でさんざんレクチャーしてたくせに!! なんでここにいるのさ!!」
「アイドルよ! ここルナールプロダクション所属のね! あなたたちが参加しているこのオーディションで結成されるアイドルユニットのメンバーとして東京支部からこっちに来たの。
正確には、メンバーとなる予定だったの! でも今はもうあなたたちと同じオーディション参加者よ!」
「はあ?? 意味が分からないんだけど??」
古嶋が割って入る。
「まあ色々あるんだよ。簡単に言うと、円ちゃんはシード権があって三次予選から参加って感じかな」
「ふーん。――で、リクたちは今日合宿って言われてきたんだけど? 三次予選なんて聞いてないよ!」
「ああ。内緒にしてたからな」
「――な!?」
「まあ今から説明する。まず合宿に参加できた皆は二次予選通過者だ。この前より人が少ないのはそのためだ。次に三次予選の内容。今分けた二つのグループで勝負をしてもらう。それで勝った方が合格。勝負の日は明日の夜だ」
「勝負!?」
「最後まで聞け。今分けたこっちがAチームで向こうがBチーム。これからお互いにアイドルユニットとして行動してもらう。勝負の内容は一曲歌とダンスをお客さんの前で披露してもらう。勝敗のつけ方はお客さんによる投票で決める」
「お客さんの前で!? 練習とか全然してないのに……」
「そのための合宿だ。ここAルームはAチームの部屋とする。練習や寝泊りもここで行う。寝袋も用意してあるからな」
「でも明日の夜でしょ? 時間が……」
「おじさんからの説明は以上だ。――あ、選曲は自由だ。振り付けも自由。質問は??」
皆なにか思うところがあるような表情だが、口を開くものはいなかった。
「よし。それじゃー頑張って。おじさんは三階にいるから何かあったらきてね」
古嶋は軽く手を振って入口のドアをくぐる。
そのとき川谷が立ち上がり、古嶋の元へ駆け寄った。
「あの――古嶋さん!」
「ん? 花菜ちゃんどうしたの?」
川谷は古嶋の手を引いてAルームの外に出た。
「あの。前に言っていた高級食材って……」
「そうだよ。海山陸と平野清香と小松沙耶。それと栗崎円」
「みんな同じ高校の同級生なんですけど……」
「まいっちゃったよねー。おじさんもこの前円ちゃんから聞いて初めて知ったんだよ。履歴書の学校名までは見ていなかったからねー。――でも、知ってるメンバーで良かったじゃないか」
「は、はい」
「うん。頑張ってね」
古嶋はその場を後にした。




