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放課後。A組の教室。
「美容院でそのような髪型を注文するには、なんと説明してカットしてもらっているのですか?」
「自分は理髪店で切ってます。行きつけの店なのでいつもどおりと言えばこれになります」
「変なあたま。変なあたま。ぺらっとめくれるのかな? 清香ちゃんやってみてよ」
「嫌ですわ。なんだか汚らわしいですもの」
「失礼な人たちですね。毎日きちんと洗っているので清潔ですよ。トリートメントもしています」
平野と小松は竹田に絡む。
辞典のような髪型が気になるようだ。
六班メンバーとD組の平野と小松に久保は会議を行っている。
小清水の考えた作戦。名づけて『男色と虹色と黒色作戦』。
小清水の原案は竹田によりかなり変更されてはいるが。
加藤と桃木たちがグルだったのは空クニツル川谷組により確定した。
クニツル曰く、加藤が陸にフラれて腹を立てた。そして、桃木たちを使って嫌がらせをしていた。と。
これはみんなが予想していたとおりだった。
次に、D組の共犯者について。
これは湊小清水組が解決した。その共犯者であった平野と小松は桃木たちに脅されていたためにそれを行っていた。
しかし、二人は悪いことをしていたと認め、空たちと手を結ぶ。
これでD組内で陸への嫌がらせはなくなるだろう。ただ、新たな問題もでてきた。
桃木たちを裏切ったことになる平野と小松に危険が及ぶ可能性があるということだ。
話がここまで進むと竹田が手帳を取り出す。
「この件はみんなで固まっていれば問題ないでしょう。桃木先輩たちは手口がかなり陰湿で、人目の多いところでは手を出してこないでしょう。
昼休みの間に色々と調べてみました。陸さんが黒い液体を髪にかけられた現場は、体育館へ向かう途中のトイレです。壁に黒い液体がついているのを発見しました」
ここで川谷が疑問を投げる。
「あのさ。そのトイレって女子トイレ……だよね?」
「ええ。そうですよ?」
「辞典君男子じゃん」
「問題ありません。中には誰もいませんでしたし」
「いや、そういう問題じゃないでしょ」
女子たちの冷たい目線が竹田に刺さる。
「やはり汚らわしい男でしたか。触れなくて正解でしたわ」
「清香ちゃん! あたし分かった! こいつのあたまは辞典じゃなくてエロ本だ。つやつやなのもトリートメントじゃなくて、せいブグゥ――」
湊がすかさず小松の口を手でふさぐ。
「小松ちゃん。それ以上はダメ!」
竹田が咳払いをする。
「話が逸れましたが、平野さんと小松さんは休み時間などはなるべくA組の教室にくるといいでしょう。先輩たちは小清水君のことを警戒してると思いますし、安全かと。
それと、桃木先輩たちから連絡が入ったらすぐにこちらに知らせてください」
「わかりましたわ」
三つ編みを留めているリボンを直していた久保が口を開く。
「わたしはー、D組で海山さんをー見てるねー。それでーその先輩たちがきたらー教えるねー」
「お願いします」
ずっと静かだった空が急に立ち上がった。
全員の注目が空に集まる。
「みんな……本当にありがとう」
震えた声だった。
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次の日。27日。
この日は作戦の最終確認が行われた。
竹田が調達した物資もいきわたる。
心配されていた平野と小松だが特に問題はなかった。陸も同様。
平野には桃木から着信があったが、竹田の判断で無視をした。
竹田の事前準備もうまく進んでいるとのこと。
そして全ての準備は整った。
その日の夜。
空は部屋で一人最終確認をしていた。
勉強机の上に広がっているノート。
これにはスケジュールがぎっしりと書き込まれている。
その横には覆面マスク。目と鼻、口の部分に穴の開いた青いマスク。
空は確認を終えると、ゆっくりと立ち上がる。そして机の横に立てかけてある竹刀を手に取った。
久しぶりに握る竹刀。
瞼を閉じ正眼の構えをとる。深呼吸をし沈黙の後瞼を開ける。
「――フンッ!」
大きく肺に貯められた空気を鼻から一気に出すと同時に、竹刀を思いっきり振り下ろした。
竹刀は空気を裂く音を発した後ピタリと止まる。
作戦決行は明日28日の放課後。




