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俺のスマホはこんにゃく  作者: ななほしとろろ
chapter1 出会い
24/79

23

 空の部屋。

 空はベッドで横たわっている。氷嚢代わりに氷水が入ったポリ袋が顔に置かれている。河川敷からずっと気を失ったままである。

 小清水は勉強机の椅子に腰かけ、手を頭の後ろで組んでいる。

 川谷、湊、陸は向き合うように座る。その中心に置かれているのはこんにゃく。

 こんにゃくも空と同じく反応は無いまま。


 皆真剣な顔でこんにゃくを見つめる。


 陸はクニツルについて皆に話したのだ。

 こんにゃくがスマートフォンだということ。こんにゃくには悪魔が取りついているということ。その悪魔をクニツルと呼んでいること。

 空の奇怪な行動はクニツルが乗り移ってやったということ。今クニツルはこんにゃくに戻っていること。


 川谷はこんにゃくがクニツルということは知っていた。ただ正体が悪魔というのは初耳であった。

 ずっと傾聴していた小清水が口を開く。


「で、海山は大丈夫なのかよ。病院連れてった方がいいのか? いや、この場合はお祓いとかなのか?」


 陸は答える。


「空ニィは大丈夫だと思う。クニツルが憑依していた時間が短かったから。ただ……リクが殴っちゃった顔は病院かも」


 陸はしゅんと下を向く。


「まあ、顔は腫れてるだけだし冷やしとけば大丈夫だろ。でだ。そのクニツルとやらはなんで海山の体で俺にキスしてきたんだ?」


 湊はそのときの光景を思い出して顔を赤らめた。

 陸は首を横に振る。

 川谷は話し始める。


「なんかね。海山君は、小清水君と亜樹ちゃんが離れちゃうんじゃないかって心配してて。それをクニツルにどうにかできないかって頼んでた。そうしたら……」


 小清水は立ち上がり頭を下げた。


「すまん! 全部俺が悪い! 俺が二人に本の件探ってもらったり。亜樹には辛い思いさせてたし。すまん!」

「そんな。謝らなくても……」


 川谷は膝立ちになり慌てるように手を左右に振る。


「――で、でさ、小清水君と亜樹ちゃんは結局仲直りは、で、できたのかな? ここに向かってるときになにか話してたみたいだったし」


 川谷は二人の顔を交互になんども見る。

 湊はこくりと頷いた。小清水は頭を上げ椅子に座りなおす。

 

「ま、まあな。仲直りはできた」

「そっか。なら良かったじゃん! 事件解決だね」


 川谷は笑顔になり、ぱんと手を叩いた。

 しかし、陸が大きな声を上げた。


「よくない! 全然よくない!」

「陸ちゃん?」

 

「クニツルが暴れていなかったとしても、仲直りはできてたんじゃないの?」


 陸は小清水の方を向き言った。


「んん、まあできてたんじゃないかな? 俺が亜樹に謝ろうとしてたときに突っ込んできたし。むしろ突っ込んでこなきゃスムーズに謝れてたかも?」

「じゃあクニツルはただ話をややこしくしただけってことね。フフフ」


 陸は不敵な笑みを浮かべ、がっしりとこんにゃくを掴み部屋を出ていった。


 空を除く三人は少し話しをした後、夜も遅くなってきていることから解散することになった。


****


 次の日。時刻は朝九時を回った頃。

 空は顔左側に冷たさを感じうっすらと瞼を開く。しかし、左目が思うように開かなかった。

 なにかが乗っている感覚。それを確かめるため顔に手を伸ばした。

 顔に乗っていた物は、もう慣れ親しみのある感触。こんにゃくだった。


 乗っていた物をどけたにも左瞼は開かない。

 ここで初めて痛みに気づいた。そして、触れてみて腫れにも気づく。

 そして、なぜ自分はベッドに寝ているのかと。

 覚えているのは河川敷でクニツルを額につけたときのこと。それからの記憶はない。


 空は時間を確認しようと首を動かす。

 目に入ったのは、床に座ったままベッドで伏せ寝している陸の姿。

 時刻は九時を過ぎているが焦りはしない。今日は土曜日だからだ。

 

 

 しばらくして、空は陸を起こした。

 そして陸から事情を聞かされた。昨日の河川敷でのこと。クニツルのことを皆に話したなど、全て。


「それで、陸はなんでここで寝てたんだ?」

「空ニィが心配だったから。殴ったのリクだし。……看病しててあげたの! ほんとはもっと腫れてたんだからね!」


 陸の目にはクマができていた。


「お前はサイコパスか! 殴っといて看病とか……。で、クニツルはどうした? 全く反応無しなんだけど」

「分からないの。昨日からずっと無反応。リクは懲らしめようとしたんだけど、これじゃどうしようもないわ」


 空は思い当たる節があった。

 クニツルは力を使った後まったく反応しなかったことがある。今回もそのせいだろうと。

 心と記憶を読むような力と違って、憑依するのは相当な力を使う可能性がある。その反動がこれではないかと。


「まあ様子見るしかないな。でも春君と湊さんが仲直りできたのは本当に良かった」


 空は腫れた片目ながらも優しく笑った。

 陸はそれを見て驚く。


「なんかさ。空ニィ変わったね……ううん、戻ったのかな。昔みたいにさ」

「昔? そうか?」

「うん」


 陸はまたベッドに伏せ、昔を思い出すような瞳で空を見つめる。

 そして、グウと腹の虫を鳴し眉を下げた。


「あーん。ビックバンがきたみたい」

「よし。朝飯作るか! 陸は先に下行ってて」


「リク目玉焼きがいいな。目玉焼き!」

「はいはい」



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