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ある酔っ払いのおっさんの近現代史論

作者: 勇寛

ある酔っ払いのおっさんによる居酒屋でのお話。


 本当は、もっと「ガクジュツテキ」な説明の仕方のできる奴が本当はふさわしいんじゃないかと思うんだが、まあせっかく話を聞いてくれるってんなら話してやるぜ。

 皆知ってる話だが、世界中があの日からすげえ勢いで変わっちまった。

 いや、そのインパクトは世界大戦だとか、産業革命だとかそういったキョーカショにかかれる内容と比べても、いや比べるまでもなく人類史上最大級の出来事だったと思う。

 人によっちゃ書き方に差があるんでいまんところどれが正しいのかわからないが、多分1978年の終わりか79年の初めごろに出たんだと。

 ああ、あの戦闘員ってやつの初期バージョンってのがな?

 まあきっとその内一番最初は何時何時の何処何処って具合にきっちりと学者先生方が本にでもしてくれるだろうから、詳しくはそっちでも読んでくれ。

 ……話を戻すぞ。

 俺の知る限りヨーロッパ周辺に現れたのが最初だって言われてる。

 何か国かほとんど一遍に現れて、一斉に人類は攻撃された。

 予兆もなーんにもなかったからな。

 その最初の攻撃でヨーロッパの辺りはガッタガタにやられた。

 拉致られた人数は未だにわからないって話だ。

 万は超えてるだろうが、どのくらいかわからないってさ。

 抵抗できる勢力が軍くらいだったし、まさか「首都」のど真ん中に「組織」があんな数で強襲してくることを予想できた奴もいなかったろうしな。

 ……わかってる。わかってるって。

 当時の戦闘員は弱かったんじゃないかっていうんだろ?

 そりゃ、弱かった。

 なんせ、普通の軍で“倒すことが出来た”時代の戦闘員だからな。

 銃もバズーカも戦車も戦闘機も有効だった当時の戦闘員なら十分対応できたんだよ。

 でもな、この当時にすでに「怪人」がいたんだよ。

 有名どころで「ジャッカル」「イーグル」「シャーク」とか言われてた奴らだな。

 他にもいたらしいが、街ごとドカンと吹っ飛ばして対応した形跡が何例かあるらしい。

 戦史研究の一環でその辺りを調べる酔狂な学者もいるみたいだがな。

 ……初めて見たのはテレビだったな。

 「組織」から街を奪還したどっかの国の広場で、ジャーナリストがそれを報道するってふれこみだった。

 その地域一帯の安全回復を宣言するため全世界のいろんな国のマスコミが来てたんだと。

 ああ、坊主。先を言うなよ。

 そうさ、「宣戦布告」の日の事さ。

 俺は別のテレビを見てた。

 確か大相撲の初場所で千秋楽だったな。

 親父もおふくろも、弟も一緒に夕飯食いながら見てたさ。

 遠い国のそんな放送を見ながら飯を食おうって気にはならなかったし、俺も弟もガキで興味なんてゼロよ。

 親父もおふくろもそんなもん後で新聞でも読もうって思ってた。

 んで、問題の時間よ。

 午後6時ジャスト。

 世界中の全部のテレビとラジオがジャックされたんだ。

 仕組みは未だにわからないんだと。

 まあ、時代が時代だ、仕方ないさ。

 で、あの映像と音声が流れたわけだ。

 テレビに何度も顔を出してた軍のトップが死んでるのが映ってて、そんでだーれもいない広場。

 最後に映ったのが、「スパイダー」。

 あのクソッタレの蜘蛛野郎がどアップで映し出されて、俺はビビった。

 最初は着ぐるみを着てるんだと思ったんだ。

 チャンネルが変わっちまったんだと思ってな?

 親父もそう思って、テレビのチャンネルを変えたんだ。

 その時間にそういうヒーローものの番組がやってたからよ。

 ああん?そうか今はそういうヒーロー番組はなくなっちまったしな。どういう内容の番組だったかは詳しい話を大人にでも聞いてくれ。

 で、どこまで話したか。

 どこにチャンネル回しても同じ映像が流れてるんだ。

 故障かと思ったがそうじゃない。

「スパイダー」が話しはじめた。

 日本語でな。

 世界中のテレビもラジオもおんなじことを“そいつらの国の言葉で”話しはじめたんだ。

 ……世界征服をするって話で、バカなんじゃないかって思ったさ。

 そんなことできやしない、みんながそんな悪いことを許さないって思ってたからな。

 翌日の新聞、一面で報道されたんだ。

 その広場に居たはずの軍やらマスコミやら帰ってきた住民やら10万人以上がいなくなったってな。

 まだ日本は報道に規制が入った方じゃないかな。

 正確にはその国の軍が全滅して、基地がいくつか奪われて、ミサイルが色んなとこにカッ飛んで行ったらしい。

 その中に核が無かったのだけが幸いだという結果だ。

 そうさ、せっかく征服する土地が汚れてちゃ意味ないからな。

 それでも、ヨーロッパの軍はガタガタさ。

 これが俺の知ってる、「変革の日」から「宣戦布告」までの流れさ。

 

 だが、人間はあきらめなかったんだ。

 「組織」がさらった奴らは改造された。

 そうさ、「組織」の兵隊は普通の一般人だった奴らで、改造されてこき使われてたんだ。

 だけどほとんどが「戦闘員」で「怪人」になれる奴は本当に少なかった。

 後から分かったが、大体1万人に1人いればいい方だって話だ。

 そんな奴らは大体才能があった奴らだったらしいぜ。

 スポーツ選手、格闘家、芸術家に科学者、俺には縁のねえ部類の奴らさ。

 優秀な奴が「怪人」に適合して、でも「怪人」になってもそうなりたくねえって必死に抗った奴らもいた。

 そうだ、「ヒーロー」だよ。

 各地で「怪人」改造された奴のうち、たまに正気に戻る奴がいて、それが80年代のヨーロッパ反攻作戦の主軸だった。

 まさに「ヒーロー」さ。

 見た目は「怪人」と変わらないから、テレビ画面に出た時はひきつけ起こしたガキも多かったらしいぜ。

 そう、「タイガー」は有名で人気も出てたよな。

 リバースエンジニアリングもすぐに行われたらしい。

 志願制だって言ってたが、本当のところはどんなもんだかな。

 「ヒーロー増産計画」。

 今思えば悪趣味以外の形容詞が付きようが無いけど、当時はそこらへんは麻痺してたんだろう。

 負けて奴隷よりは勝ってから後で考えようって感じだったのかもな。

 まあ、そんなことがあっても軍にヒーローが協力して戦線を維持できるようになった。

 ただし、「組織」も戦闘員が強化されたり「怪人」のなかの「幹部」ってのも出てくるようになった。

 泥沼だよ。

 10年も戦ってりゃ、経済もがたがたさ。

 それでも物量で勝ってた人類がだいぶ戦線を押し返したときだった。

 これははっきり覚えてる。

 1989年11月1日。

 「魔獣」が溢れたんだ。


 既存の概念とは違う、所謂オカルトじみた敵対種族。

 ヒーロー・国・細々と残ってたゲリラじみた抵抗組織。

 全部が一斉に襲われた。

 一方的にはならなかったが「ヒーロー」が少ない部隊や後方部隊はかなりがやられた。

 なかでも「魔王」は最悪だ。

 人の思考をもった化けものなんざ、どう対応すればいい?

 一気にヨーロッパの東側は「魔王」の支配下にはいったのよ。

 んで、「魔王」「組織」はグルだった。

 最初っから、ってわけじゃあないみたいだったな。

 「怪人」も「魔獣」と戦ってる映像記録が残ってるからな。

 ただ、どっかで手を組んだんだろうってことしかわからないんだ。

 そんで、人間側はといえば「魔術師」がでてきたのさ。

 今までだんまりだった奴らが急に出てきたせいで、現場は混乱のドツボにはまった。

 ただ、「魔獣」に対して有効に打撃を与えれるって話で「魔術師」が戦線の維持に協力することになった。

 どうも予言ってのが「魔術師」共の結社に代々伝わっててな?

 その予言に従って俺たち普通の人間を助けることになったんだとよ。

 「ヒーロー」と「魔術師」。

 双方の力を合わせ、ヨーロッパから敵を排除しようって流れはこっからだな。

 所謂「大連立」って言われる出来事がこの時だ。


 大陸の人間が混沌に飲み込まれる中、日本は遅ればせながら参戦することになったのはどういう理由だったのか。

 そう、当時の豊臣幕府第28代将軍豊臣幽郷が侍大将東村太助率いる武士団200名を派遣したんだ。

 1992年12月のことだな。

 あまりに大陸の被害がデカくなりすぎていても経ってもいられなくなったらしい。

 「侍」は気魂の刃で敵を屠るから、オカルティックな「魔獣」にはよく効いたのさ。

 本質的には「妖怪」と「魔獣」は同一、ないしは近しい存在ではないかって学者もいる。

 専守防衛を破るってんで国内では結構揉めたが、大陸では遅いと言われる始末でなぁ。

 親父もそこに参戦してたもんで、大陸から帰還した時は結構愚痴をいってたよ。

 戦線を「ヒーロー」と軍が維持、魔獣は「侍」「魔術師」という形で人類生息域を維持できていた。



 ……ああ、「勇者」の話はまだまだ先だぜ?

 なんせ「勇者」が出てくるのは2001年だ。

 もうちょっとおっさんの話に付き合ってくれよ!!!

いやぁ……。

変なの書いちゃったなとは思ってる。

でもなんかキーボードが走ったので……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不思議な面白さがあります。 物語のエピローグだけ取り出したような感じですがそこがライトに楽しめる感じで最高です。
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