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神様の力、僕の中の謎の存在、新たな誓い

アルジュナさんは勤めた明るい声で言った。


「ワシの事は置いておけ。過去の話じゃし聞いてもあまり面白いものではない。それよりお主の事を聞かせてくれぬか?」


「僕ですか?」


僕は首を傾げる。そんな特別な存在ではないんだけど……。


「お主依り代にしとるワシの石像に手をかざしとったろう。その時、手の先から妙な力が出ておった。それがワシの色々なところを弄るもんじゃから飛び出してきてしまったわい」


アルジュナさん!? 言い方、言い方!! ほら……フィーナ姉の顔から表情が消えた。氷のような冷たい目でこちらを睨んでいる。僕は目でアルジュナさん言い方、気を付けましょうよと目で訴える。アルジュナさんはいたずらに成功した子供の笑みを浮かべていた。


「カイル君……」


「ハヒッ!?」


僕の声は思わず上ずってしまう。


「どういう事?」


「どういう事って?」


「アルジュナ様は小さいんだよ。幼女って意味じゃなくて本当に小さいんだよ。全長九セーチ(センチ)

ののじゃロリッ娘に欲情する性癖の持ち主だったの!? 欲情するならお姉ちゃんにしようよ!!」


「いやいやフィーナ姉、アルジュナさんは本当に小さいからロリッ娘は違うでしょ!!」


「つっ込むところはそこじゃないよ、カイル君!! ケモ耳でメイドさんで巨乳でお姉ちゃんの四連コンボだよ。そんなお姉ちゃんにどうして劣情を抱かないの!?」


「もうフィーナ姉が何言ってるのか分からないよ!?」


「いい加減にせんか!!」


僕とフィーナ姉がの言い合いにアルジュナさんが一喝する。アルジュナさんの声が僕とフィーナ姉の頭の奥深くに響き、激しい頭痛に襲われる。


「お主らの下らん話に付き合っとったら日が暮れるわ!! これ以上下らん話をするようだったら……分かっとろうな、フィーナよ。これをカイルにやったら……」


アルジュナさんが凄みを聞かせて睨みつける。逆らったら何をされるのやら? そう思っているとフィーナ姉が僕をぎゅっと抱き締めた。いきなり何をと思ってフィーナ姉を見ると表情がこわばっている。顔色も悪い。体が小刻みに震えているし本当に怖がっているようだ。

アルジュナさん、フィーナ姉に何をしたんだ?


「こらこら、フィーナ。そんなに怖がるな。本当にやるつもりはない、心配するな」


「本当ですか……?」


「ウム」


フィーナ姉が心の底から安堵するの分かった。よかったと思ったけど抱き着かれたままというのが恥ずかしい。


「フィーナ姉……離してよ、恥ずかしい」


僕が顔を真っ赤にしているのを見てフィーナ姉が穏やかに微笑んだ。そしてさらに力強く抱きしめられる。


「ヘッ、何で、離してよ?」


「ンー、カイル成分補給中……癒されるよ」


僕の言葉は無視して僕から謎成分を補給するフィーナ姉。すごくウットリしている。フィーナ姉からは見えないけど僕には見えてしまっている。アルジュナさんが鬼の形相でこっちを睨んでいる。ちびってしまいそうだよ、僕。


「……フィーナよ、最後通告じゃ。カイルから離れよ」


フィーナ姉は素早い身のこなしで僕から離れた。フィーナ姉、こんなに早く動けたの? 素直に驚いた。


「まったく……何が色々あったじゃ、何も変わっておらぬではないか、この甘えん坊が! カイルにある事ない事言ってやろうか?」


「アルジュナ様ッ!!」


フィーナ姉がアルジュナさんを捕まえようとするが空中に浮いているというアドバンテージがあって、フィーナ姉の手からのらりくらりと逃げ伸びる。

フィーナ姉の小さい頃の話か、聞いてみたいな。僕が聞こうとする前にフィーナ姉の手を逃れ僕の肩に止まったアルジュナさん逆に聞いてきた。


「それでじゃ、改めて聞きたいのじゃがお主のあの力はなんじゃ? 害をなす類のものではないと思うがワシはフィーナを守らなければならん。彼女に害をなそうとするならその力封じなければならん」


アルジュナ様に睨まれる。蛇に睨まれた蛙というのはこういう事を言うのか? 身がすくんで動けない。言葉を選ばないと恐ろしい目にあう。


「……この力については黙秘します。だけどこの力を使ってフィーナ姉を傷つけたりは絶対しません。これは絶対です!!」


僕は決意を籠めてアルジュナさんに言った。アルジュナさんがふわりと浮かび僕の周りを旋回する。僕の正面に来るたびの表情が変わっている。百面相が面白い、神様にしては人情味があるな。


「……まあ、いいじゃろ。お主を信じよう。フィーナはお主を溺愛しとる様じゃし、お主が怪我でもしたらフィーナが悲しむ。そこでじゃ、ワシの力でお主を加護してやろうと思うのじゃがどうじゃ?」


「加護ですか?」


「ウム、大概の危険からは身を守れる。お主、前日、怪我をしておろう。そういう事があった場合、治癒の力が科kる様にしてるぞ。余程の怪我でない限りはすぐに完治するぞ」


「本当ですか、アルジュナ様!? カイル君、加護を受けようよ。そうすればもっと自由に外を出歩ける。そうしたら、私カイル君と言ってみたい所があるんだよ」


フィーナ姉の目がランランと輝いている。尻尾もブンブンと音を立てている。その気迫に後退りながら僕はアルジュナ様にお願いする。これを見ては断る訳にはいかなかった。


「加護を一つお願いします」


「ウムウム、では始めるぞ」


アルジュナさんが僕の目の前にふわりと浮くと目を閉じ呪文を唱え始める。


「我らを守護する十二の精霊よ! 汝らの欠片の縁に従い疾く現れよ!」


アルジュナさんの首につけている動物の牙を姫で繋げた首輪が輝き始める。その途端部屋の空気がピンと張り詰め、気温も下がり始め吐く息が白くなる。アルジュナさんの周りに白く輝く光の球が現れる。その数十二。これが十二の精霊のようである。僕はこの光景をぽかんとしてみていたけどフィーナ姉はポロポロと涙をこぼしていた。フィーナ姉がこの光景をどう思ってみているのかは分からないけど泣いている所を見ると胸が痛い。僕はフィーナ姉を慰めるように頭を撫でると一瞬驚いたように僕を見た。そして目を閉じなすがままにされた。


「いちいちいちゃつくな。それより準備せよ!」


「準備って?」


「十二の精霊よ、行け!!」


僕は疑問を漏らすがアルジュナさんは言葉ではなく行動で答えた。十二の光球が僕に向かって飛んできたのだ。驚く僕は十二の光球をもろに食らってしまう。その途端僕の体が業火であぶられたように熱くなる。苦痛に呻いている僕をフィーナ姉が心配そうに見ている。


「カイル君しっかりして! アルジュナ様、どうしてカイル君、苦しんでいるんですか!?」


「おかしいぞ!? 何故守護の力に抵抗しておる!? お前を傷つけるものではないんじゃぞ、受け入れぬか!!」


僕は抵抗するつもりはないよ。なのにどうしてこんなに苦しいの? 僕はこの苦痛に耐える事が出来ずのけ反って大声を上げた。そして僕の体に入った十二の光球がはじき出された。その途端苦痛が収まる。力が抜けその場に崩れ落ちる。


「カイル君、大丈夫!?」


フィーナ姉が僕の体を起こす。


「ダイ……ジョ…ブ」


体力が底を付き掠れ声で答える僕。フィーナ姉がまた顔をペロペロ舐めてくる。お願いだからやめてと言いたかったが力が入らない。アルジュナさんが僕の目の前に来る。驚愕で目を大きく見開いている。


「何故、呪文に抗った? 既にに何らかの加護を受けておるというのか? いいやそんな感じはなかった。カイルが自分の意志で抵抗したのではなかろうて……フム、調べてみようか」


アルジュナさんが目を閉じ再び呪文を唱えた。


「我を守護する十二が精霊が一つ、鷹よ! 天空よりすべてを見渡すものよ! 汝が目を我に与えよ。あらゆるものを我に示せ!」


アルジュナさんが目を開くと目の色が変わっていた。白目が黄色に瞳が赤から黒に代わっていた。本当に鷹の目に代わっていた。アルジュナさんは鷹の目で僕を凝視する。それこそ穴が開く様に見つめる。しばらくするとアルジュナ案はブツブツと独り言を呟く。


「何じゃ、お主は……フム、フムフム……なるほどそういう事か……分かった」


アルジュナさんは僕ではない別の誰かと会話しているようである。


「……カイルよ、すまぬがお主に加護を授ける事は出来ん」


「そんな、アルジュナ様、どうしてですか?」


フィーナ姉が泣きそうな顔をする。


「フィーナ、そんな顔をするな。事情があって話す事は出来ん……がカイルは自分で何とか出来るようになるからそれを信じて待ってやれ」


「本当ですか?」


「ワシの名に懸けて誓おう」


「分かりました。アルジュナ様のお言葉信じます」


「フィーナ姉……僕…頑張るから…そうしたら…一緒に…買い物…しようね」


体に力が入らず喋るのも億劫だけど、これだけは言っておきたかった。


「ウン、カイル君頑張ろうね、お姉ちゃんも協力するからね」


フィーナ姉は頬をひと舐めする。だから、それ止めて。


「今は休まないとね。部屋まで運ぶよ」


そう言うとフィーナ姉はひょいと僕を持ち上げた。またお姫様抱っこされてしまった。相変わらず情けないと思ったが贅沢は言えない。


「お願いします……」


僕はそういうのが精一杯だった。


「任されたよ、カイル君!!」


フィーナ姉が満面の笑みで答えた。

またこうなってしまった。僕はいつかフィーナ姉を逆にお姫様抱っこしてあげる事を心に誓い頑張ろうと思った。










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