第9話 反応
主人公に魅力がない疑惑…。
自分でもなぜか書きづらいですw
が、がんばる!w
よろしくお願いします。
『あなたのブログにコメントがつきました。』
スマホが震えたので見ると、そう書いてあった。いつもなら気にしないが、今はなぜか気になった。優也は通知に触れた。
『リン』と名乗る人物から、ただ一言、『浮気はだめです。』と書いてあった。それだけだったことに優也は拍子抜けしつつ、隣で眠っているシャーロットに目をやった。
これは、俺がしているのは、恋なのか、浮気なのか……?
優也には到底、分からなかった。
『蓮』という名でブログをしていることは、柴橋書店にも友人にも内緒にしてあった。そのブログは、自分のことを、特に自身の恋愛を、赤裸々に書いたものなので、恥ずかしいのである。そしてそのブログは、3年前から続けていた。尚更、恥ずかしかった。
でも、書かずにはいられなかったのだ。
灯を喪った悲しみをやり過ごすために。
一方で、そこで文章を書くことに喜びを覚えた優也は小説家を志すようになった。
ちょうど2年半前から投稿を始め、ついに先日、デビューした。賞を取ったのである。そこで柴橋書店から本が出ることが決まった。ジャンルは恋愛ではなく、ミステリー小説だった。
思いつくと筆の速い優也は、新しい作品も一気に書き上げた。その第一稿を、柴橋書店に渡したばかりだ。次の作品も考えなければ、と思った時、スマホが電話の着信を知らせた。
柴橋書店からだった。おそらく第一稿についての話で、柴橋さんからだろうと思って出た。
「はい、もしもし」
「お世話になっております。柴橋書店の佐藤と申します。そちらは、蓮沼先生のお電話でよろしいでしょうか?」
「はい、そうですが」
佐藤、と名乗るのは男性だった。佐藤の声はかすれていて低く、電車の中では聞きづらい。
「ああ、よかったです。実は、担当が柴橋より替わりまして。これから顔合わせと第一稿の打ち合わせをお願いしたく、先生のご自宅へ伺ってもよろしいでしょうか?」
いきなり自宅に来るのか、と思った。
「散らかってますので、そのへんのファミレスを指定していただければ」
「はい、しかし、道に不慣れなものでして……先生のお宅の地図ならあるのですが」
仕方ないか、と思った。
「わかりました。でもまだ自宅にはおりません」
「承知いたしました。こちらもまだ社内におります。これから伺わせていただきます」
「はい、分かりました」
「では、お近くになりましたら、お電話差し上げます。失礼いたします。」
と電話は切れた。
何で担当が替わったんだ?
優也はしばらくもやもやした。