表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第6話 落涙

え、ベッドシーン??


……じゃないんですけど(汗)よろしくお願いします。

 目が覚めて少し経った後、優也はぼーっと天井を見ていた。すぐ隣でシャーロットが寝息を立てている。その寝顔に視線を移した。長くてきれいなまつ毛だと思った。


 山奥で泊まるなら普通は山小屋だ。しかし、ここはちょっと趣が違った。図書館なのか……?何故こんなところに?そして、この女性、シャーロットは一体何者なのか?

 すべての答えが一つも分からないまま、夜はいつの間にか更けていたのだった。シャーロットに勧められるまま、シャワーを借り、ベッドに入っても、しばらく悶々と考えていたのだが、疲れもあったのか、いつの間にか寝入ってしまったようだった。


 本格的に目が覚めてくると、優也は静かに目を閉じて、外の音に耳を澄ませた。どこからか鳥の鳴き声がする。雨は止んだようだ。気持ちのいい森の朝だった。ゆっくりとベッドから体を起こし、すぐ右隣りの窓辺に寄った。そうしてしばらく、風邪で木々が動くのを、時間を忘れて眺めていた。


「眠れたか?」

と、突然声がした。いつの間にか、シャーロットも体を起こしていた。

「眠れましたよ」

声がしたほうに振り向いたら、シャーロットの肩からパジャマが少しずり落ちていて、優也はそれを見て、少しドギマギしながら言った。

「そうか、よかった」

ずり落ちたパジャマはそのままに、シャーロットは笑顔で言った。優也は顔が熱くなっていくのを感じて、少し瞬きをし、思わず視線を窓辺へ戻した。座りなおして、胡坐をかく。空いたスペースにシャーロットもきた。その瞬間、薔薇のいい香りがした。


「何か、いるか?」

「いえ、鳥の声はしますけど、あと薔薇の香りも」

シャーロットはそれを聞いて、見てわかるほど赤くなった。

「……それは、私のシャンプーの匂いだ……」

優也はそれを聞いて、はは、と軽く笑った。


「だから、きれいな髪なんですね、まるで金色の、水の流れのような……」


 シャーロットの顔がますます赤くなっていった。かわいい、と思いながら優也はそれを眺めているうちに、異変に気が付いた。


 泣いているのだ、と分かったのだ。優也は少し慌てた。


「どうして泣くんですか?」

「い、いや、なぜ父上のようなことを言うのだ、と思って。それを思い出したら、寂しくなってしまった……」

尚も、落ちる涙を拭いながら、シャーロットは言った。まだ泣いているのだろう、と思って瞳を覗き込んだ。


 笑顔だった。


 この笑顔を今度こそ失いたくはない……。そう思ったが先か後か、優也の体は動いていた。


 気が付いたら優也は、力いっぱい、シャーロットを抱きしめていたのだった。二人が向き合っているから互いの顔はもう見えない。優也は目を閉じて、シャーロットの温かさが体に染み込んでいくのを感じた。


「泣かないでください。俺が、必ずお父様を見つけますから、だから……」

言いながら、内心、自分でも驚いていた。

俺、この女性ひとをすきになってもいいかな……。

そう思ったからだ。それはたった今までは、ある出来事のせいで閉じ込めていた感情だった。その感情を意識したら、そのあとは、うまく言葉にならず、ただ互いの温かさだけが残った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ