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蛹の夢  作者: 金王丸
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最初の模試

 ――リリリリーン……


 けたたましく鳴り響く目覚まし時計はいつもとは違う日曜日の朝の訪れを知らせた。眠い目をこすりながら起床する。一通り朝のルーティーンをこなすと頭も冴えてきた。そして今日の持ち物を確認しながら気持ちを高ぶらせる。必要最低限の筆記用具に消しゴム二個、そして忘れてはならないのが腕時計だ。問題用紙を入れるファイルも重要だ。そう、今日は浪人してから最初の模試の日なのだ。


 「今日の模試は簡単らしい」


 朝食の席で川口が口を開く。


 「偏差値出しても当てにならないからやる気出ないわ」


 村野もそれに続く。


 「まあ、冊子には載りたいよな」


 器用な手つきで魚を切り分けながら川口が応酬する。冊子とは模試ごとに配られる成績優秀者を掲載した小冊子のことだ。


僕は魚の切り分けに苦労しながらその会話に耳を傾けていた。時々相槌を打ちつつ聞いていると、どうやら主に会話を主導している二人は自信に溢れているようだった。各科目の目標点や目標偏差値を言い合っている様子を見ると、とても太刀打ちできないように思えた。実際、どこの大学に落ちたとか、どこの大学は受かったのだとか、周りの人間のその手の情報はたいてい知っている。それらは聞くまでもなく自然に湧いてきて、週一回はその種の話題で盛り上がっていた。


 しかしその結果は現役時代のもので、現在の立ち位置を反映しているものではあり得ない。したがって、今回の模試は今現在の学力を目に見える形で周りに知らしめる最初の機会である。そう考えると、この模試がいくら簡単だろうが、いくら当てにならないだろうが、頑張らない理由にはならない。浪人の身になって二ヶ月弱、曲がりなりにも努力はしてきたつもりだ。その努力を結果として目に見える形にする、これが今日の模試でなすべき最重要なことだ。


 「じゃあさ、四人の中で一番偏差値が低かったヤツが他の三人にラーメンをおごるってのはどう?」


 僕の唐突な提案に丸井は乗り気ではなさそうだったが、他の二人は二つ返事で乗ってきた。その後も模試関連の話で盛り上がり、頃合いを見て食堂から撤収した。


 そして体調、気力ともに万全の状態で予備校に向かった。足取りは軽い。いや、やや勇み足気味かもしれない。予備校に入る手前でなんとはなしに両手で太ももを軽く叩いた。いつになく気合が入っている。教室は目の前だ。


 いざ、最初の模試へ――。



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