第一関門
予定より遅れたものの、無事に会場入りを果たした。次は間違えていないらしく、少しホッとする。だが教室に着くと、周りは制服だらけで、現役生の巣窟と化しており、いたたまれなさを感じる。そして自席に向かう途中、数少ない私服の一人がその服を裏返しに着ているのが目に留まった。
(英字プリントでも着てきたのかな?裏返しは恥ずかしいぞ……)
センター試験では文字の入った服を着てくるとカンニング防止のため、裏返しに着て受験しなければならない決まりになっている。彼もその例に漏れずそうさせられたのだ。浪人生にもなって流石にそれは不注意すぎるだろう、と心の中で笑う。それから自分の席に着き、試験の準備を済ませる。そして試験前の所在なさをどう紛らわすか考えるや否や、試験官がぞろぞろと入室してきた。
(もう始まるのか……)
手元の時計を見る。既に試験開始前十五分を切っていた。マークシート、問題用紙が順に配られていく。気持ちが落ち着かない。今になってロスした時間の重みを痛感する。試験官の指示に従って必要事項を記入する。手に持っている鉛筆が鉛のように重く感じられる。時間が進むにつれ、胸の鼓動が高鳴る。何度も何度も手汗を拭う。
あと三分、あと二分、あと一分……。運命の時は近づく。
「試験開始!」
教室にはチャイムとともに試験官の声が響き渡る。さあ、ここからは後戻りのできない真っ向勝負、人生を賭けた大一番の始まりだ――。




