第8話
ギルドマスターから、愉快な三人組との決闘のその後の顛末を聞いた次の日、私は冒険者ギルドを訪れていた。この前と同じように、ギルドの依頼が貼ってある掲示板を見る。私は銀級になったので、受けられる依頼は金級から銅級のものに限られる。
銀級から金級に上がるには、依頼を五十回完了して、試験に合格しなければいけないのだが、銅級の依頼については評価が半分になってしまうため、ゴブリンの討伐依頼はあまりおいしくなくなってしまっていた。
なので、私が狙うのは銀級と金級の依頼である。冒険者ギルドに登録した日にティアナさんから言われたとおり、金級の依頼から、街と街の間を行き来する商隊の護衛依頼が入るようになっていた。一番近い場所で、プラナスから歩いて一日かかる近隣の村へ定期的に行き来している行商隊の護衛、一番遠い場所になると、歩いて一か月かかるティリウス聖王国王都イスミリアへの行商隊の護衛であった。大規模な行商隊になると、複数のパーティーが集まって同じ依頼を受けるため、行商隊の出発期限までに集合する旨が依頼状には書かれていた。
(近場での銀級の依頼だと、大森林中層の探索依頼か、ワイルドボアの討伐依頼とフォレストウルフの討伐依頼、オークの討伐依頼ね。金級になると西の山岳地帯に生息するロックリザードの討伐依頼……まずは手堅く同時に受けられる大森林中層の探索依頼とワイルドボアの討伐依頼、オークの討伐依頼、フォレストウルフの討伐依頼を並行して受けてみよう。全部常時依頼で探索依頼以外は回数は複数回達成可能だし。でも期限は三日だから、森の中で野営することも考えておかないといけない。アイテムボックスの中にテントは入っていた。狩りの獲物を食べることも考えられるけど、念のために、すぐ食べられる食べ物をアイテムボックスの中に追加しておかないとだめね)
私はそう結論付けると、カウンターに依頼を受注することを告げに行った。カウンターに冒険者ギルドカードを提示しながら私は口を開いた。
「依頼を受けたい。大森林中層の探索依頼とワイルドボアの討伐依頼、オークの討伐依頼、フォレストウルフの討伐依頼を並行して受注したいけど構わない?」
「銀級のトーカさんですね。はい、大丈夫ですよ。大森林中層の探索依頼は、大森林中層にあるプラナス警備隊の森林警備隊駐屯地で報告して頂いて、サインをこちらの書類に頂いてきてください。それで依頼の達成となります。ワイルドボアの討伐依頼は牙を三組、オークの討伐依頼は鼻を三個、フォレストウルフの討伐依頼は犬歯を三組で達成となります。それぞれ期限が三日後となっておりますので、ご注意ください。それではお気をつけて!」
「ん。無理しないで頑張る」
私はそう言って、受注のために提示していた冒険者ギルドカードを受け取ると、カードケースの中に入れて懐にしまった。冒険者ギルドを出ると、私は東通りの露店でサンドイッチやボアの串焼きをそれぞれ二十個ずつ購入して、東門から大森林へと歩いて行った。
大森林に分け入ると、早速目の前に出現するゴブリンとホーンラビット、ココを次々に倒し、まずは大森林中層にある駐屯地を目指した。目の前のマップには、大森林内部の地図が表示されており、駐屯地は白い点で表示されていた。
(まずは駐屯地でサインをもらわないといけない。……でもやけにゴブリンの数が多い。初めての依頼でも、ゴブリン三百匹を一日で倒したけど、よく考えるとこの数は異常すぎ。一応駐屯地で報告しないと)
私はマップで確認しながらそう呟くと、目の前の茂みががさがさと揺れた。マップでは赤い光点が示されている。私が忍び刀を抜いて身構えると、ワイルドボアが茂みの中から飛び出してきた。私はそれをかわすと同時に、ワイルドボアの首に忍刀を深く突き立てる。そのまま手前に掻き切るようにして忍刀を動かすと、どっとワイルドボアが倒れて動かなくなった。
私は両方の牙を飛空艇から持ち出したナイフではぎ取ると、ワイルドボアの死体と牙をアイテムボックスの中に収納した。
(これで一匹目。とりあえずは駐屯地を目指して、今夜はそこで野営しよう。頼めば場所くらいかしてくれるはず)
私は心の中でそう呟くと、駐屯地に向けて森の中を進みだした。
約三時間後、私の目の前に大森林警備隊の駐屯地が見えてきた。ここまで到着するのに、多くのゴブリンとワイルドボア、群れで襲い掛かってきたフォレストウルフを倒してきている。その数は初めてこの森に入った日よりも多いような気がした。
警備隊の駐屯地には、警備隊の詰め所と思われる大きな建物や、その周辺にある小さな小屋。その周囲はぐるりとやや高めの強固な柵に囲まれており、大森林に生息する魔物の襲撃を防ぐ役目を果たしているものと思われた。
目を凝らすと、武装した兵隊が行き来しているのが見える。門のところには、武装した兵隊が2人1組になって警護に当たっていた。
私はそこに近づくと、懐の冒険者ギルドカードとウエストポーチの中に入っていた書類を見せた。
「私は大森林中層の探索依頼を受けた冒険者のトーカ。この書類にサインがほしい。あと、ここまで探索してきて気が付いたことがある。駐屯地の責任者の人に会わせてほしい」
「了解しました。ご案内いたしますので、こちらについてきてください。」
「ん」
私は門のところで警備にあたっていた警備兵に駐屯地の詰め所まで案内されると、その中では壮年の男性が事務仕事をしていた。
「隊長、ギルドからの探索依頼を受けた冒険者の方をお連れいたしました」
「うむ。君は門の警備に戻ってくれたまえ」
「はっ!了解いたしました!」
「さて、君が今回探索の依頼を受けた冒険者だね?」
「ん。この書類にサインがほしい。あと、少し気になったことがある」
私は壮年の男性に近づくと、机の上に書類を広げた。男性は、そこにサインをすると、私に手渡しながら口を開いた。
「これでいいかね?あとは、ギルドにこの書類を届ければ依頼達成となる。それで、少し気になったこととは?」
「ん。私が初めてこの森に入った時よりもゴブリンの数が多い気がする。それと、それ以外の魔物の数も。ここに来るまでに三時間くらいかかったけど、その道すがら多くのゴブリンを倒した」
「ふむ……。やはり君もそう思うかね。我々森林警備隊は交代でこの森の浅層から中層を見回っているのだが、最近ゴブリンの数が多くなってきていてね。もしかしたら、ゴブリンを率いるリーダーが産まれているかもしれない。そうなると大量発生の恐れもある。杞憂ならばいいが、万が一ということもあるのでね。ギルドの方にもそう報告しておいてくれないか」
「わかった。私もほかに受けた依頼があるから、それが終わってからギルドに戻る。その時に報告する」
「そうしてくれるとありがたい。ああ、この駐屯地の敷地は自由に使ってくれて構わない。門は夜8には閉めてしまうから、それまでに戻ってきてくれ」
「ありがと。お言葉に甘える。では、私はもう少し森の中を探索する」
「ああ。気をつけてな」
私はそう言うと書類をウエストポーチにしまって、詰め所を後にした。
詰め所を後にした私は、門のところで警護に当たっている兵隊に隊長と呼ばれた男性に、私がこの駐屯地の敷地を使っていいという許可をもらったということと、しばらく周辺を探索してくることを告げて駐屯地を後にした。
駐屯地を後にした私は、その足で再び森の中を探索していた。魔物図鑑によると、大森林中層に生息している魔物はオークとフォレストウルフ、ワイルドボア、ホーンラビットであるが、先日ゴブリン乱獲を繰り広げた際には、大森林の浅層でもワイルドボアと遭遇して、これを狩っている。
地球と同じく生態系の変化に関する法則がこの世界でも通用するならば、限局した地域における生態系の変化が起きる場合、ある種類の生物が増えすぎたためにその他の種類の生物が本来棲息していた場所を追い出されるか、それともある種類の生物が増えすぎたためにほかの種類の生物をすべて駆逐し、その後生息域を広げるかが考えられる。
ゴブリンの本来の生息数は判断がつかないが、一日で三百匹も狩るようなことはないはずである。それに、何もなければ中層に生息するワイルドボアが、わざわざ浅層まで移動してくることはないのだから。
何かがおかしい。そう感じた私は、目の前にマップを常時表示し周囲を警戒しながら探索を続けていた。
すると、目の前に何かの気配を感じ取った私は立ち止まると気配を殺しマップを確認する。マップに映る光点は赤。敵性生物である。それは、目の前の茂みの奥、少し開けた場所にいるようであった。
私は姿勢を低くして、そっと茂みの奥を覗き込む。
そこには、棍棒を持った二足歩行の豚の魔物――オークが五匹集団で行動していた。手にはホーンラビットを持っており、どうやら狩りをしてきたようである。
オークも魔物とはいえ生物である以上、大森林の弱肉強食のヒエラルキーに組み込まれているのだから、何もおかしいところは見受けられなかった。しばらくよく観察していると、オークはある方向に向かっているようである。何か嫌な予感を感じた私は、自分の気配を絶ったまま後をつけることにした。
しばらく後をつけると、オークたちは開けた場所に入っていった。周囲に敵性反応がないことを確認すると、私は茂みの奥からそっと覗き込んだ。
すると、そこにはオークの集落ともいうべき古い小屋の集まった広場があった。その状態から察するに、おそらくもともとは大森林中層の森林警備隊の駐屯地か避難場所、もしくは猟師小屋だったのだろうが、それが古くなって廃棄された場所にオークが住み着いたようである。
狩りを終えて戻ってきた5匹のオークが集落に着くと、風雨にさらされてボロボロになった小屋から数十匹はいるであろうオークが出てきた。それを確認した私は、そっとその場を離れた。
風下の方角にはなれると、私は周囲を警戒したまま考えを巡らせる。
(オークはボアやワイルドボアと同じイノシシやブタの魔物。匂いには敏感だから、風下から一気に接近して殲滅するしかない。習性がイノシシやブタと同じなら昼行性。夜間は基本的に出歩かない。おそらくはゴブリン以上の強さと思うけれど、私の敵ではない。脅威度三ということを考えると、レベル三十から四十付近。愉快な三人組のステータスから考えると、あの数なら殲滅できる。あまり増えすぎるのも困るから、早めに芽は摘み取っておいた方がいい)
そう結論付けた私は、気配を絶ち周囲を警戒しながらオークの集落から風下に身を潜めて夜を待った。
数時間後、大森林は夜の闇に包まれた。この中で灯りを使わずに行動するのは人間では難しいが、私は猫型の獣人である。私の瞳は、日中と同じように大森林の中の景色をはっきりととらえていた。
オークの集落へ近づいて様子をうかがうと、灯りはなくどうやらオークたちは眠りに入ったようであった。数体の斥候と思われるオークが集落の周辺を徘徊しているのを発見したため、私は音もなくこれに近づいて首を刈り落とした。首を刈り落としたオークは即座にアイテムボックスの中に収納し、他の斥候のオークに近づいて首を刈る。アイテムボックスに即収納する。これを繰り返して、斥候のオークを殲滅したことを確認すると、気配を絶ったままオークの集落に足を踏み入れた。
マップを確認すると、どうやら小屋は十棟あり、その中に五匹から六匹のオークが固まっているようであった。その中でも大きな小屋の中にいる敵性個体の赤い光点は、周りのオークと思わしき光点よりも若干大きかった。おそらくは上位個体なのであろう。私はまず周囲のオークから殲滅することにした。
気配を殺しながら、オークを起こさないように近くの小屋に近づいて、がたがきている板壁の穴から中を見ると、その中にはオークが五匹いびきをかいて寝ていた。
私は音を立てないように板壁を忍び刀で一閃し人が通れるだけの穴をあけると、板壁を地面にそっと置いて小屋の中に侵入し、オークの喉に深く忍び刀を突き入れた。それを手早く行い、五匹のオークが絶命したことを確認するとアイテムボックスに収納する。やっていることはアサシンのそれなのであるが、あちらは数十匹、こちらは一人である。仕事は手早く確実に行わなければならない。
同じことを繰り返して半分終わった時である。周囲が急にざわつき始めた。どうやら、オークが異変に気付き、起きてきたようである。私は即座に作戦を変更し、無双モードでの殲滅戦に切り替えた。忍び刀を持ったまま、小屋に押し入って中のオークを手早く処理する。それを二棟分繰り返したところで、残り三棟の小屋から手に棍棒を持ったオークと、その中でもひときわ大きく体色が異なるオークが片手に大剣を持って出てきた。どうやら、オークもやる気十分のようである。
私は、オークたちが動き出す前に群れめがけて駆けだした。
素早く接近し、次々にオークの首を刈り落としていく。オークの首が次々に宙を舞い、首を失った体が血しぶきをあげながら地面に倒れ伏す。その光景に、ひときわ大きなオークも混乱しているようだった。私は蛇行しながら大剣を持ったオークに駆け寄ると、走る速さと自分の体重を一点に込めて、そのオークの腹に深々と忍び刀を突き入れた。そして、奥まで突き入れると忍び刀を抜き、その勢いで首を刈り落とす。首が宙を舞い、血しぶきをあげて体が大きな音を立てて地面に倒れ伏すと、私は周囲の敵正反応をマップで確認しながら、警戒体制のままあたりに注意を向けた。五感を駆使して、周囲の気配を探る。しばらくそうしていると、周囲に静寂が戻り敵性反応もマップには表示されなくなった。そこで、私は乱れた息をゆっくりと整えると、血払いをして腰の鞘に忍び刀を収めた。
(これでオークの集落は殲滅した。あとはオークをアイテムボックスに収納するだけ。一応、このことは駐屯所に報告する)
私は心の中で呟くと、外と小屋の中のオークの首と死体、オークが持っていた棍棒と大剣をアイテムボックスの中に収納し始めた。それが終わると、今度は小屋の内部や外観の確認と集落の規模を確認し、位置をマップ上にマーキングした。その後、今度は元オークの集落の中で、アイテムボックスの中のオークをすべて取り出し、鼻をはぎ取って本体と首とは別にアイテムボックスの中に入れた。
その作業がすべて終わるころには東の空が白み始めていた。どうやら徹夜仕事だったようである。私は元オークの集落を後にすると、駐屯地まで大森林の中を全力で駆け抜けた。
駐屯地に到着したころになると、すっかり夜も明けて大森林の中に日がさしてきていた。駐屯地の門が開いており、昨日と同じように警備の兵隊が門のところで警備にあたっていた。
私が門に近づいてくるのを見ると、警備にあたっていた兵隊さんが声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、昨夜は戻ってこなかったから心配したぞ!一体何があったんだ?」
「そのことで隊長さんに報告がある。今大丈夫?」
「ああ。隊長は食事を終えて今は詰所の方にいるはずだよ」
「そう。ありがと」
私はお礼を言うと、詰所へ行った。
詰め所では、森林警備隊の隊長さんが、私の事を見つけて立ち上がった。
「昨夜は戻ってこなかったから心配したぞ。いったい何があったんだ?普通の銀級冒険者なら、夜になる前に戻ってくるはずなのに……」
「そのことで報告がある。大森林の地図はない?この周辺でもいいから」
「あ、ああ。地図ならあるが……」
「すぐ出して。大森林に異変が起きているかもしれない」
私がそう言うと、隊長さんは棚から大森林の地図を出した。私はそれを見て、口を開く。
「隊長さん、ここから歩いて二時間から三時間くらいの場所に、古い猟師小屋か避難所、駐屯地跡はある?」
「ああ。それなら古くなって破棄された駐屯地の跡地がここにあるよ。しかし、それがどうしたんだい?」
隊長さんが指さした場所は、ちょうど私がマップにマーキングした元オークの集落と一致した。私は真剣なまなざしで隊長さんを見つめると、あとを続けた。
「驚かないで聞いてほしい。そこはオークの集落になっていた。数は約数十匹。中に大型の皮膚の色が違うオークが一匹いた」
「なんだって!?オークが集落を……これはまずいな。ゴブリンの数が増えてきていることと合わせると、魔物の大発生が起きる予兆かもしれん。それで、君は偵察だけしてきたのかい?」
「オークの集落は殲滅した。証拠がここにある」
私は、アイテムボックスからオークの集落にいたオークの死体と首、棍棒と大剣を取り出して床に置いた。それを見た隊長さんは呆れたような表情になっていた。
「これをすべて君が……?」
「ん。闇夜に紛れて襲撃をかけた。私は獣人だから夜でも関係ない。それに、オークは昼間活動するから、夜の方が都合がよかった」
「それにしても、この首の切り口は尋常じゃないぞ。そこまで腕の立つ冒険者が銀級とは……」
「これも修行のおかげ。隊長さん、この色の違うオークは何?」
「ああ。こいつはオークの上位個体で、オークジェネラルという種類の魔物だ。オークよりも数段力と体力が強く、賢い。オークを統率して戦術を使ったり、その場にいるだけでオークの能力を上げるから、昼間まともに戦おうとしたら、最低でも金級のパーティーが数パーティー必要になる。オークの数も上位個体が出現すると爆発的に増えるんだ。君のとった手段は間違っていないよ。一人で統率されたオークの群れを倒そうとしたら、周到な準備をしたうえで、複数回に分けて闇討ちをするしかないからね」
隊長さんが真剣な表情になって言うと、私は床に出したオークと棍棒、大剣をアイテムボックスの中にしまった。
「ううむ……だとすると、ゴブリンにも上位個体が産まれているかもしれない。この数の増え方からすると、最低でもゴブリンジェネラルが産まれているだろう。最悪の場合、ゴブリンキングとゴブリンクィーンが産まれているとすると、駐屯地にいる我々だけの力では到底太刀打ちすることはできない。オークの群れの動向も気になるが、今はゴブリンの方を何とかする方が先だろう。君、今から冒険者ギルドマスター宛ての文書を書くから急いでプラナスに戻り、渡してもらえないかね?」
「問題ない。私の受けた討伐依頼も終わっているから」
「そうか。では少し待ってくれないか。今から冒険者ギルドマスターあての文書を書く」
隊長さんが文書を書いている間、私はアイテムボックスの中からサンドイッチとビン入りのリプルジュースを取り出し、それを口にした。丸一日ぶりの食事であるが、これから急いでプラナスに戻ることを考えるとほどほどにしておいた方がいいと思い、サンドイッチ二個とリプルジュース一本を口にするだけにとどめておいた。完全に徹夜であるが、大森林に何かが起きていることは確かである。休むのは戻ってからでもいいと考えた私は、隊長さんが文書を書き終えるのを待っていた。
しばらくして、隊長さんが文書を書き終えるとそれを私に手渡した。しっかりと蜜蝋で封印がされたそれを私はウエストポーチにしまうと隊長さんに向き直った。
「ではプラナスに戻る。隊長さんたちも無理しないで」
「ああ。君も気をつけて戻るんだよ。この状況だ、おそらくゴブリンやほかの魔物に遭遇する頻度は高くなっているだろう」
「ん。じゃあ私はこれで」
「気をつけて頼んだよ!」
「ん」
私は隊長さんの声を聴きながら、森林警備隊の詰め所を後にした。そのまま、大森林に生えている丈の高い樹にするするとのぼると、その上を舞うように移動し始めた。アクロバティックな動きも、この体ならば難なくこなせる。そう直感した私は、そのまま樹の上を移動して大森林を抜けることにした。




