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第4話

トーカちゃん、私服を買う

窓から差し込む朝日が、新しい日がやってきたことを告げる。それと時を同じくして町中に響き渡る教会の鐘の音。外から聞こえる小鳥の囀り。

私はむくりと体を起こすと、大きなあくびを一つしてから体をぐーっと伸ばした。


(もう朝?今何時……?)


ステータス画面を表示させて、今の時刻を見ると午前七時ちょうどとなっていた。


(ご飯……の前に着替えないと……)


私は寝起きのぼーっとした頭でベビードールを脱ぎ、昨日着たシャツとキュロットスカート、マイクロブラジャーを身につけて、手櫛で長い黒髪を梳かした。とりあえずはこれでいいだろう。まずは朝食だ。

私はブーツを履いて、テーブルの上に置いておいた鍵を手に取ると部屋を出た。そして、昨日銭湯に行った時と同じように扉に鍵を閉めると、一階の食堂へ降りていった。


「おはよう、トーカちゃん!昨夜はよく眠れたかい?」


すでに食堂はにぎわっており、マリィさんと旦那さんのベッカーさん、この宿屋の娘のミリィが忙しそうに動き回っていた。


「ん。よく眠れた。ありがと、マリィさん」

「そうかいそうかい。それはよかった。今料理を持ってくるから、空いているテーブルに座んな。ほれ、食い終わったらさっさとどきな!時間は有限なんだよ!!」


私に空いているテーブルを進めつつ、食べ終わってから談笑している少年四人組の頭を手にしたお盆で小突きながらマリィさんはそう言った。


「あんだよ女将さん!もう少しゆっくりさせてもらってもいいじゃんかよ!」

「そういった口をきくんだったら、さっさと冒険者ランクを上げて一人前になりな!あんたらまだまだ鉄級のひよっ子供じゃないか!」


お盆で叩かれた赤毛の少年が文句を言うと、マリィさんはドヤ顔でそう言った。

昨日の夕食の時に聞いた話だと、マリィさんと旦那さんのベッカーさんは元白金級の冒険者で、マリィさんは女だてらにウォーリアーをしており、ベッカーさんはハンターだったとのこと。同じパーティーに所属していた時に出会って恋に落ち、結婚してミリィが産まれたのを機に冒険者を引退して、今はこの街でこうして宿屋をしているとのことであった。

だからこそ、初心者冒険者たちに本当のお母さんのように接して、立派な冒険者になってもらいたいというのが本音だそう。

その話を聞いた時、何気なく感じたこの宿屋の居心地の良さの一端が見えたような気がしたのは内緒の話である。


私が空いている席に着くと、ミリィがお盆に今日の朝食を載せて持ってきた。

ミリィはこの宿の看板娘で、私と同じ十三歳だ。明るい茶色の長い髪をおさげに結った栗色の瞳の、くるくると変わる表情が可愛い少女である。昨夜話して、いつの間にか異世界で一人目の友人となっていた人物だ。


「おはよう、トーカ。今日の朝食だよっ」

「ミリィ、おはよ。ありがとね」

「いえいえ、どういたしまして。今日はお父さん特製のふわっふわのパンととろっとろのオムレツ!あと、サラダとミルクだよ」


お盆に乗った料理、ナイフにフォークとスプーンを私の目の前に置くと、ミリィが口を開いた。


「ねえ、トーカは今日何するの?昨日この街について、冒険者登録を済ませたんだよね?やっぱり依頼を受けに行くの?」

「ん。とりあえず普段着と下着と鞄を買って、あとはカレンダーを買おうと思ってる」

「だよねー。女の子だもん普段の身だしなみには気をつけたいよねー。鞄も必需品だし。あとなんでカレンダー?」

「日付を確認するため。依頼には時間制限があるから」

「そっか。うちにもカレンダーはかかってるよー。ほらあそこ。あれをめくるのも私の仕事なんだよ?」


そう言ったミリィが指をさした方を向くと、壁に日めくり型のカレンダーがかかっていた。

そこには、神聖歴一五二〇年五の月十六日と書いてあった。

「ねえミリィ」

「なにー?」

「一年って何か月?あと、一か月と一週間は何日?」


私が言うと、きょとんとしたような表情になったミリィ。彼女は次の瞬間笑いながら口を開いた。


「やだ、トーカったら。何を言ってるの?一年は十二か月で、一か月は三十日じゃない。一週間は六日だよ。どうしたの?急に変なことを言って」

「ん、私の故郷の暦と違うなって。そう思っただけ」


私が料理を食べながら言うと、ミリィは納得したような表情になった。


「あ、そういえばトーカは遠い国からやってきたんだっけ。聞いたよー、タマノさんと同じ国なんだって?」

「ん。さすがミリィ耳が早い。私の故郷はタマノさんと同じ国の山奥だったから、外とのつながりは少なかった。おそらくタマノさんも知らない。だから暦も独特のものを使ってた」

「ふーん。そういうものなんだ」

「そういうもの」


私がそう言うと、いつの間にかそばにやってきていたマリィさんがミリィの頭を小突いた。


「いたーい!何するのお母さん!!」

「何するのじゃないよ、この子は!いつまでもしゃべってないで、さっさとこっち手伝いな!」

「はーい…。じゃあトーカ、またあとでね!」

「ん。ミリィがんばれ」


口の中のものを飲みこんで私がそう言うと、ミリィは笑顔で接客に戻っていった。


(一年が十二か月で一か月が三十日。一週間が六日だから、一か月は五週間、一年は三六〇日か。地球とは少し差がある……やっぱり異世界なんだな……)


もぐもぐと食べ進めながら、私はそう思った。

ゆっくりとしっかりよくかんで食べていると、寝起きでぼーっとしていた頭に栄養分が回ってきたのか、頭がすっきりしてきた。朝食のメニューは栄養バランスが取れているうえに、程よい噛みごたえのパンとシャキシャキのサラダ、非常に素晴らしく冒険者向けの食事だなと、私はふと思った。

最後にミルクをごくごくと飲み干すと、私はコップをテーブルの上に置いた。


「ごちそうさまでした」


両手をパンと合わせて言うと、少し手が空いたのかマリィさんが私のそばにやってきた。


「お、食べ終わったね。おいしかったかい?」

「ん。今日の朝ご飯もおいしかった。夕ご飯も期待してる」


マリィさんは、テーブルの上の食器を片付けながらふと思い出したように口を開いた。


「そういえばトーカ、あんたミリィに今日は服を買いに行くって言っていたね?」

「ん。普段着るものでいいから服がほしい。あと下着と鞄」

「それなら、東通りにあるリオルイ服飾店に行ってみな。あそこはいいものがそろっているからね。冒険者用の衣服も手がけているから、トーカにあうものがあるはずだよ」

「東通り?」

「ああ、トーカは昨日この街に来たばかりだったね。この街の中央に広場があるのは知っているだろう?そこから北に延びる大通りが北通り、東に延びる大通りが東通り、南に延びる大通りが南通り、そして西に延びる大通りが西通りというのさ。北通りにある店は主に武具や防具の店が多いね。東通りと南通りにある店はうちのような宿屋や服飾店、食料店がほとんどだね。西通りにある店はいろいろな薬や道具を扱っている店が多いよ。そういえば、魔導具を扱っている店もあるね」

「魔導具?」

「魔物から採れる魔石に溜まった魔力を使って動く、いろいろな道具の事さ。うちの洗面所やトイレの中に青いボタンがあっただろう?あそこに魔力を通して触ると水が出るじゃないか。あとは、宿で使っているランプもそうだね」

「なるほど」

「なるほどって、あんた使ったことないのかい?」

「ん。私は夜目が効くから夜の灯りは必要ないし、故郷のトイレは穴を掘ってそこに板を渡した物で、使い終わったら、木のおがくずや米っていう植物のもみ殻とぬか、炭の粉を混ぜたものをその上にかけるのがほとんどだった。水は井戸か近くの湧水が湧いている泉から直接汲んで、水瓶に溜めてそれを使っていた」


夜目が効くのは種族固有スキル《暗視》によるものだし、日本では水洗トイレがメインだったが、おがくずや米のもみ殻、米ぬかと炭の粉を混ぜたものを使ったバイオトイレもあるので、彼女に対して決して嘘は言っていない。それに、日本は、名水百選というおいしい水を環境省が選んだものがあるくらい水に恵まれた国なのである。


「またすごい場所なんだねぇ。トーカの故郷って」

「山奥の里だったから仕方ない」


日本でも山奥の田舎に行くと、汲み取り式のトイレがいまだにあって、衛生組合が定期的に汲み取りに来ていたり、やや発展した街の中でも浄化槽式の水洗トイレがあるから、これも嘘は言っていない。


「これは早く常識を覚えた方がいいね、トーカは」

「自分でもそう思う」


呆れたようにマリィさんが言うと、私は心からそう答えた。

何せ女の子になってしまった今では、たかがトイレといっても死活問題なのである。食べたら出る、飲んだら出る。それが自然の摂理だからである。ましてや男と女ではいろいろと違うのだ。本当に、いろんな意味で。


「じゃあ、私準備をしたら服を買いに行ってくる」

「ああ。気をつけていっておいで」


そう言って、私は自分の部屋へ戻った。


部屋に戻ると、まず私は意を決してトイレに駆け込んだ。

もう一度言おう、食べたら出る、飲んだら出る。それが自然の摂理なのである。それは地球だろうと異世界だろうと変わりはない。ましてや男と女で変わるわけがないのである。

そこにあるのがたとえ、自分の中の奥底に、最後まで残っていた男としてのプライドを完全になくすものだとしても……。

しばらく奮闘した私は、全てを済ますと教えられたとおりに水洗魔導具の操作を行い、洗面所で水を出して手を洗い、昨夜あらかじめ用意しておいたフェイスタオルで拭くと、すっきりした表情でトイレから出てきた。


「おぅ……すっきり……」


心の中に残った男のプライドを完全に打ち砕き、年頃の女の子として一歩を踏み出した私は、晴れやかな表情でそう言った。これで私も一人前の女の子!こんなに気持ちが軽いのは初めて!もう何も怖くない!

オープニング詐欺だとかハートフルボッコとかいわれた、某魔法少女アニメのキャラクターのような気分になってその場でくるくると回った私は、やがて我に返ると歯ブラシを用意して再び洗面所に入っていき、歯を磨いて顔を洗い、タオルで水気をふき取ると、ついでに歯ブラシの水気もそれで拭きとった。

私はアイテムボックスからトランクを取り出し、そこにタオルと歯ブラシを入れると、代わりに手鏡と櫛を取り出し、手櫛で梳かしただけの髪を丁寧に梳かし始めた。しばらく髪の毛を梳かすとサラサラの黒髪ロング猫耳少女が鏡の中に映ったので、そこで髪を梳かすのをやめて、トランクから取り出したリボンで丁寧にポニーテールにした。

最後に手鏡で髪形を確認すると、鏡の中の私はばっちり決まっていたので手鏡と櫛をトランクに戻し、再びアイテムボックスの中に収納した。

ステータス画面を開いて時刻を確認すると、すでに午前九時を回っていたので、私はポケットに昨日と同じようにお金の入った革袋を入れて、部屋の鍵を持ち部屋から出ていった。昨夜マリィさんから部屋の掃除をするために、午前中は部屋に鍵をかけないでおいてほしいと言われていたので、部屋の鍵はかけずに階下へ降りていった。


宿のカウンターで店番をしていたベッカーさんに鍵を渡すと、服屋に行くことを告げて私は宿を出た。

宿から外に出ると、もうすでに街は動き出しており、昨日訪れた時と同じような賑わいを見せていた。


(ヨーロッパに海外旅行に来たみたいでなんだかいいな~、この雰囲気。このノスタルジックな、日本人が忘れかけているものというかそんな感じで最高!)


知らず知らずのうちに私のしっぽもゆらゆらと揺れる。その賑やかな雰囲気を楽しみながら歩いていると、あっという間に中央広場についた。


(さて、服屋は東の通りを歩いていれば道筋にあるんだっけ。名前は…確かリオルイ服飾店。普段着と下着を買うのが目的だけど、鞄も売っていたらそこで買ってしまおう。なるべく動きの邪魔にならない、ウェストポーチのようなものがあればいいかなぁ)


リオルイ服飾店を探しつつ考えながら歩いていると、一軒の店が目に留まった。

そこの看板には、大きくミシンの絵が描いてあり、その下にリオルイ服飾店と書いてあった。


(あ、ここだ。行き過ぎてしまうところだった)


扉を開けて店の中に入ると、店の棚には町の人たちが来ているような服や魔術師が着るようなローブ、鞄の類もディスプレイされていた。


(これなら、ここで一式揃いそう。よかった)


私が店の中を見回していると、店員だろうか、緑色のディアンドルを着た若い女性が声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。お客様、今日はどのようなものをお探しですか?」

「えと、普段着と下着、あとは鞄を探してる。宿屋のマリィさんからここがいいって教えられたので来た」


私が言うと、女性は営業スマイルを浮かべて口を開いた。


「そうですか。お客様は冒険者様でございますね。最近女性の冒険者様もお増えになっておられますので、当店ではいろいろと取り揃えておりますよ。どのようなものをご希望ですか?」

「普段着はこの街の人が来ているもので大丈夫。私は近接職だから、下着は動きの邪魔にならない方がいい。できればなるべく軽いものだと助かる。あと、荷物を入れる鞄があったらそれも。これも腰につけられる大きさだと嬉しい」


私が希望を伝えると、相槌を打ちながら聞いていた女性の口から爆弾発言が飛び出した。


「そうですか。それならばお客様のサイズを測らせていただけませんか?それはもう隅々から」

「はい?」

「ですから、お客様のサイズを図らせていただきたいのです。動きを邪魔しない下着となると、正確にサイズを図る必要がございますので。しかも獣人の女性用となるとしっぽや翼の動きの邪魔をしないものになってしまいますし」


そう言うと、女性は有無を言わさずに私を店の奥に引っ張っていった。

店の奥の試着室に連れ込まれた私の前には、手にメジャーを持ち私を逃がさまいと仁王立ちをするそれはまさに緑色の悪魔。その全身から立ち上る異様なオーラは、私が今まで感じたことのないものだった。

私のスキルである、《周囲警戒・真》が激しく警鐘を鳴らす。これは危険だ、早く逃げないといけないと。本能が強い恐怖を感じ、自然と耳の毛が逆立ち、しっぽがぶわっと膨らむ。


「暴れんな……暴れんなよ……」


その悪魔がコーホーコーホーと息も荒く私ににじり寄る。それに追い詰められた私の腰が抜けて、試着室の床にぺたりと座り込んでしまう。背筋を駆け上がる悪寒。えもいわれぬ恐怖。貞操の危機すら覚えるその視線は、正真正銘の野獣の眼光であった。


「え?やめ……そこは……!アッー!!」


店内に響き渡る哀れな獲物の悲鳴。この時店内にいた他の女性客達はそれを聞いて、静かに十字を切ったという……。


「ぐすぐす……。もうお嫁にいけない……」


店内の床に座り込みさめざめと涙を流す私とは対照的に、緑色の悪魔はつやつやとした表情で鼻歌を歌いながら服や下着を選んでいた。

あの後、私は強制的に服を脱がされ、裸になったところで身体計測という名前の暴力を受けていた。それはもう隅々までメジャーをあてられ、全身をまさぐられた。

女の子はこんなことにも耐えなければならないのか?たかが服や下着を選ぶだけで?疑問に思う私をよそに、緑色の悪魔は細かく私のサイズを測ってメモを取っていく。

今まで普段着や下着といえば、ウニ黒やむら島などで売っている既成品のサイズを見て購入し、合わなければ丈詰めをしてもらうだけだった私に、トラウマを植え付けるほどの衝撃だった。


「さてお客様、これで選び終わりましたよ」


そう言って、蔓かごの中に服と下着を入れたものを私に差し出す緑色の悪魔。

それを受け取った私は、何も言わずに素直にカウンターに行く。もう反抗する気も起きなかった。

カウンターに行くと、緑色の悪魔が一つ一つ手に取って服の説明をしてくれた。

まずはシンプルなディアンドルが三着。色は赤と若草色、紺色の無地が一着ずつ。動きやすさを考慮して、スカートの丈はミニ丈であった。これと革のショートブーツを組み合わせれば大丈夫とのこと。白地のエプロンもセットになっているが、これを結ぶときは体の正面か体の左側で結ぶ方がいいとのこと。右側で結んでしまうと既婚者という意味合いもあって非常にまずいことになるとのことだった。おまけで白のニーソックスも三足つけてくれるとの話であった。

次に下着はマイクロブラジャーにハイレグの紐パンツ。見事に十歳のお子様と同じくらいの体型だといわれて大ショックを受けた私をよそに、緑の店員はそれをカウンターに並べていく。色は薄桃色と薄緑色、薄水色の三種類がそれぞれ一セットづつ。しっぽの動きを邪魔しないように、しっぽの部分には穴が開いており、履いたらそこにしっぽを通すとのことだった。

そして、革製のウエストポーチ。ワンポイントに金色の糸で猫の手形の刺繍が施されている。アイテムバッグという魔導具もあるが、こちらはウエストポーチのサイズでも百万フラウは下らないという品物とのことであった。ウエストポーチのサイズでだいたい五百リットルは入るとのことだったが、中に入れても時間経過があり、食品は悪くなってしまうとのこと。

無属性魔法でコンテナという魔法もあり、こちらは中の物の時間が止まるらしいが、使い手が非常に限られており、上位職のウィザードやプリーストだからといって使えるとは限らないとのこと。たまにウィザードやプリースト以外で使える人がいることがあるが、容量が魔力に応じて決まるため、人によってまちまちとのことだった。


「全部で、一万フラウになります…と言いたいのですが、ちょうど新しい服のデザインを考えておりまして、その服のデザインがちょうどあなた様のような幼い少女向けなのでございます。私共では、聖王国や王国のご令嬢様方や富豪のお嬢様方向けに売り出したいと考えておりまして、その服が完成いたしましたら是非ともあなた様に試着していただきたいと思っております。もしご承諾いただけましたら、これらを値引きいたしまして、五千フラウとさせていただきたいと思います。どうなされますか?」

「はい……それでお願いいたします……」


もう私は何もしゃべる気力がなかった。ただただこの緑色の悪魔に素直に従うしかなかったのである。

私の言葉に、それはもう満面の笑みを浮かべて喜ぶ緑色の悪魔。


「申し遅れました。わたくし、このリオルイ服飾店のデザイナーをしておりますルイと申します。あなた様のお名前をうかがってもよろしいですか?」

「私、トーカ……よろしく……」


緑色の悪魔、もといルイさんの差し出した手を力なく握る私。


「ではトーカさん、試作品が出来上がりましたら試着の方をお願いいたします。出来上がりましたら冒険者ギルドに指名依頼を出しておきますので、なるべく早くご来店をお願いします」

「ん……」

「それでは、五千フラウになります」


ルイさんがそう言うと、私はポケットの中から銀貨を五枚出してカウンターの上に置いた。

それと引き換えに、服と下着、ウエストポーチの入った布袋を受け取ると、私は足どりも重くリオルイ服飾店を後にした。


いったんマリィさんの宿に戻り自室に戻ると、入手した服と下着、ウエストポーチを布袋からアイテムボックスの中に入れると、革袋の中にアイテムボックスから銀貨十枚を追加して入れておいた。


「うう……トラウマになりそう……胃が痛い……」


そう呟いた私は、朝決めていた冒険者ギルドで依頼の説明を受けようと思っていた気力もすっかりなくなり、今日はずっと寝て過ごすことに決めたのだった。


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