第13話
トーカちゃん、蜂駆除業者のまねごとをする
村長さんの話していた通り、村の北の入り口を出てすぐのところには広大な花園が広がっており、その中を街道が北に延びていた。
その中に、何本か薄桃色の花をつけた大木が生えている。私は、その中から最も大きな木を見つけて風上を確認すると、その木の風上に移動した。
大木から約二十メルの場所に陣取ると、私たちは夜が来るのをじっと待った。
しばらくして、辺りが夜の闇に包まれて空に星が輝き始めた。今夜はまだ月が出ていないようで、ジャイアント・ビーの駆除にはもってこいの条件であった。
私達は、その場にしゃがみ込むと作戦会議を始めた。
「ヒサメ、これから作戦とジャイアント・ビーの習性について教える」
「うむ」
「まず、ジャイアント・ビーはミツバチが魔力の影響を受けて突然変異を起こし大型化・凶暴化したもの。厳密に言うと、魔物ではないから魔石はない」
「そうでござるな。ジャイアント・ビーの素材は外殻と毒針、蜜、巣、幼虫でござる」
「ん。外殻は武器と防具の素材、毒針は薬剤と武器の素材、蜜と幼虫は食用、巣は高級蜜蝋の材料になる。驚異的なのはその数とミツバチの数十倍まで強化された毒針と毒。普通は遠距離から焼き尽くすか凍らせるのが定石。でも、これだと採れる素材はほとんどなくなってしまう」
「うむ。それゆえにジャイアント・ビーの素材や蜜などは高級品でござるよ。大量に得られれば一気に資金が潤うでござる」
私がそこまで言うと、ヒサメは頷いた。それを見た私は、後を続ける。
「ジャイアント・ビーは魔力で大型化・凶暴化したとはいえミツバチ。習性はミツバチそのもの。だから、それを利用して駆除する」
「なんと!そのような手がござったか!!だが、それならばなぜ、討伐依頼は金級以上のパーティーが必須なのでござろうか」
「ただ単に、夜目の利く猫種や獅子種、豹種、狼種、梟型の鳥人種に属する獣人やドワーフ、エルフでないとこの手段が使えないため。冒険者で一番数の多い人間には、この手段は使えない」
私が言うと、ヒサメは納得したように手を打った。
現代日本での蜂の駆除は、安全に行うならば蜂が完全に巣の中に戻った夕方から夜間に、蜂駆除専用の防護服と厚手の服を着こんで、蜂専用の殺虫剤を完備して行うのが定石である。だが、この手段では蜜や幼虫が食材として使えなくなってしまう。だから、食材として蜂を用いる時は煙幕を使用して蜂を麻痺させるか、掃除機を改造したバキュームを用いて成虫を全て捕獲する必要があるのである。
今回の駆除には、私はこれを利用して行うことにしたのである。幸いなことに、アイテムボックスの中には大量に煙幕を張るための煙玉がある。ゲーム内では、作成に必要な素材も簡単に入手できるうえに、大量に作れるためインベントリ欄を圧迫していたのだ。もちろん、飛空艇の中の倉庫にも大量に保管してある。
今回の作戦では、私はこれを大盤振る舞いすることに決めたのである。
「作戦を説明する。まず、私が高速で接近して洞の中に、この煙玉に火をつけて大量に投げ込んだ後に木の周囲で大量の煙幕を張って、ジャイアント・ビーの成虫を全て麻痺させる。ヒサメは、煙が消えたら木まで近づいてきて」
「わかったでござる。大量の煙でジャイアント・ビーを麻痺させるわけでござるな」
「ん。ジャイアント・ビーがすべて麻痺したのを確認したら、巣の撤去と成虫の討伐に移る。成虫は、頭部と胸部、あと腹部にある節全部にナイフを突き刺して、神経節という頭の働きをする場所を破壊する。こうすれば、ある程度形を保ったまま討伐が可能。成虫を全部討伐したら、巣を撤去する。少しでも巣を残すとまた別の女王が巣を作る可能性があるから、なるべく残さないように切り取って撤去する」
「ふむふむ」
「巣を完全に撤去して、成虫と、巣板を分けて革袋に詰めたら撤収する。それで終わり」
「おお!こんな手段があったとは目から鱗でござるよ。だが、これでは限られた獣人とエルフ、ドワーフにしか出来ぬでござるな」
「だから、策を弄するといった。私が一人でやろうとしていたのもこのため」
私はそう言うと立ち上がった。
「そろそろ始める。ヒサメはここで待機していて」
「わかったでござる。トーカ殿、お気をつけて」
「ん」
私はそう言うと、大木まで一気に駆け抜けた。
大木の中の洞を確認しつつ、アイテムボックスから大量の煙玉を取り出して、次々に火をつけて洞の中に投入する。周囲に白い煙が大量に立ち込めるなか、驚いたジャイアント・ビーが巣から飛び出てきて、私めがけて攻撃を仕掛けてくる。私はその攻撃をすべて回避しながら、構わずに洞の中に火をつけた煙玉を投入し続けた。
こういう芸当ができるのも、神様からもらったこの肉体のおかげである。
私は心の中で神様に感謝しつつ、火のついた煙玉を投げ入れ続けた。
大量の煙玉を巣に投げ入れ続けた結果、私に攻撃を仕掛けてきたジャイアント・ビーもすべて麻痺して地面に落ち、ピクピクと痙攣していた。
私は周囲に立ち込める白煙の中、巣の回りに散らばるジャイアント・ビーにとどめを刺していく。
巣の回りに落ちたジャイアント・ビーにすべてとどめを刺し終えると、煙が薄れてきた。
完全に煙が晴れると、私のいる場所まで大量の革袋を持ったヒサメが駆けてくる。
「トーカ殿!首尾はどうでござるか?」
「首尾は上々。あとは、巣の中の成虫全部にとどめを刺して、巣を撤去しておしまい」
「わかったでござる。ここからは手分けして行うでござるよ」
「注意しながら行って。麻痺が解けると大惨事になる」
「うむ。手早く正確にでござるな。心得た!」
そう言って、手順を確認した私たちは巣の中の成虫にとどめを刺して巣の外に出す作業に取り掛かった。
約一時間ですべての成虫にとどめを刺して巣の外に出し終えると、私はその中に女王蜂がいるか確認した。女王蜂が生存していると、また同じ群れが巣を作るからである。巣の外に出した成虫の中に、ひときわ大型の個体がいるのを確認した私は、それに向けて鑑定眼を発動させる。
クィーン・ジャイアント・ビー(未解体)
ジャイアント・ビーの巣を統括する女王。巣の中での役割は、卵を産み続けて群れを大きくすることだけに特化している。
普通のジャイアント・ビーに比べて攻撃能力は高いが、毒を産生する能力は失われている。
外殻はジャイアント・ビーより強固で火にも強く武器・防具素材になる。
「ん。しっかり全部にとどめを刺した。あとは巣の撤去」
「残さず、丁寧にでござるな。これは時間をかけてもよいでござろう」
そう言って頷きあうと、今度は巣の撤去に入った。
洞の中から、丁寧に巣板を切り取って外に出す。さすがに五メルもある巣板の撤去は骨であったが、私達は蜜塗れになりつつ全ての巣板を撤去することができた。
手に着いた蜜を舐めとると、濃厚な甘みが口の中いっぱいに広がる。ヒサメも自分の手を舐めて恍惚の表情になっていた。
「ジャイアント・ビーの蜂蜜はこんなに美味いのでござるな……。これを舐めてしまうと、あの蜂蜜を使った焼き菓子の味が霞んでしまうでござる」
「蜜は、巣から取り出したら布と金網で濾して、熱湯であらかじめ煮た密封できる容器に入れれば保存がきく。もちろん、巣ごと冒険者ギルドで買い取りに出してもいい」
「拙者、この蜜はいくらか残しておくでござるよ。液状の素材は買い取りの際に申し出れば、容器に詰めてくれるでござるからな。これでいつでも極上の甘味が味わえるとは、この上ない僥倖でござる」
「ジャイアント・ビーの蜜は滋養強壮にもいいから、疲れた時にスプーンでちょっと舐めれば疲れがとれる。モレンの実をよく洗って切って、これに漬けてもいい。あとは極上の蜂蜜酒の材料にもなる」
「ほほう。それはいいでござるな。酒の作り方は師匠から聞いたことがあるでござる。蜂蜜酒といえば、王侯貴族か富豪しか飲めない高級品でござるからな。しかも、ジャイアント・ビーの蜂蜜で作った蜂蜜酒ならば、いかほどの値がつくかわからんでござる」
私達は話しながら、成虫と巣板を分けて革袋に詰めていく。結局、成虫は女王を含めて五十六匹、巣板は六枚であった。
「取り分は成虫二十三匹と巣板三枚」
「うむ。そうだ、女王はトーカ殿が頂いてほしいでござるよ」
「いいの?」
「うむ。拙者は安全なところを手伝っただけでござるからな。それに、これだけ立派で上質なジャイアント・ビーでござる。この取り分だけでも一財産は築けるでござるよ」
「そういうなら、そうする。じゃあ、村に戻って分ける」
「承知したでござる。さすがに、蜜塗れでござるからな。早く湯浴みがしたいでござるよ」
ぐ
っと体を伸ばしてヒサメが言うのを横目に、私はヒサメが持ってきた革袋の中に入れたジャイアント・ビーの素材を全部アイテムボックスの中に収納していく。
全て収納し終えたら、私たちはぐっと握手をしてその場から撤収した。
村に戻ると、村長さんをはじめとする村の人々、駐屯所の警備兵たち、フェルが出迎えてくれた。
その表情は心配そうな表情であったが、私たちが笑顔で大きく手を振ると大きな歓声が上がった。
「おかえりなさい!トーカさん、ヒサメさん!心配したんですよ!」
「この通り、無事に戻ってきたでござるよ。ジャイアント・ビーはすべて駆除したでござるが、巣になっていた洞の中にはまだ蜜が残っているでござる」
「ん。掃除しないと、害虫がやってくるから明日にでも掃除した方がいい」
私たちが言うと、完成はひときわ大きくなった。警備兵たちと村人たちは、『明日から採蜜ができる』とか、『はやく掃除しないとね』とか『何でもいい、ジャイアント・ビーの蜜を手に入れるチャンスだ!』と話していた。村人たちの会話の中に、若干霧がかかっているような気がしたのは、私の気のせいだろうか。
「トーカさん、ヒサメさん本当にありがとうございました。これで明日からいつも通りの生活を送れます」
「ん」
「拙者はついて行っただけでござるからな。この討伐のほとんどはトーカ殿の功績でござるよ」
深々と頭を下げて、村長さんが言うと私たちは二者二様の答えを返した。
「では、この件は私の方から冒険者ギルドの方へ報告させていただきます。冒険者に討伐依頼をしておいて何も報酬を渡さないうえに、何もしないで帰したとあっては他の開拓村の村長から馬鹿にされてしまいます」
「それはお任せでござる。なあ、トーカ殿」
「そう。困ったときはお互いさま。それに、報酬はこのジャイアント・ビーの素材と巣板で十分」
「そうでござる。上質な素材と巣板が採れたでござるからな。一財産は築ける分はあるでござるよ」
ヒサメはしっぽを振りながらドヤ顔で村長さんの事を見た。私も、彼女と同じようにドヤ顔で村長さんの事を見る。それを見た村長さんは、頭を掻きながら申し訳なさそうな表情で頭を下げた。
「それでは、共同浴場にお湯を用意してあります。蜜塗れですので、早くお湯を浴びてきてください。それが終わったら、ささやかですがお礼としてご馳走を用意させましたので、どうかご賞味いただけると幸いです」
「ん。ありがと」
「すまないでござる、村長殿」
「では、案内いたしますのでどうぞこちらへ」
そう言って歩き出した村長さんに、蜜塗れになってしまっていた私たちはついて行った。
べたべたするこの蜜を洗い流して、今日はゆっくりしたい、そんな気持ちだったのである。
「んー……。気持ちいい……」
「そうでござる……。一仕事した後の湯は心地いいでござるなぁ」
共同浴場に案内された私たちは、体と髪を隅々まで洗ってジャイアント・ビーの蜜を落とすと、共同浴場の中の大きな湯舟に浸かっていた。身に着けていた装備は、現在村の職人たちが丁寧に手入れを行っている最中である。明日の朝にはできるとのことで、私たちはそれに任せたのである。寝間着と下着はなぜかすでに用意してあった。
村長さんに聞くと、フェルから聞いて用意させたとのこと。行商人フェルは、私たちの知らない特技を持っているようだった。
「それにしても、トーカ殿の肌は綺麗でござるなぁ。拙者、羨ましいでござるよ」
「ヒサメも胸が大きい。私は小さいから羨ましい」
「胸は齢十の頃から大きくなり始めたでござる。修行の際に着る服に、先が擦れて痛かったでござるよ……。今もさらしが無いと揺れて痛いでござるから、剣を振るう分には小さい方がいいでござる」
「私も揺れるほどの胸がほしい」
「それほどいいものでもないでござる……」
すっかりだらけた表情で話す私とヒサメ。その表情は、すっかり野生を失った猫と犬であった。
そんな私たちの耳に、誰か人が入ってくる音がした。
「トーカさん、ヒサメさん、私も失礼しますね」
そう言って、私たちの前に現れたのは一糸まとわぬ姿になったフェルだった。
一言で表すと、その肉体は豊満であった。
「ほう、フェル殿は着やせするタイプなのでござるな」
「大きい……」
したり顔で言うヒサメと、胸の二つの大きな果実をにらみつけながら言う私。
私達の言葉に、恥ずかしそうな表情でフェルは体を抱きかかえた。
「あうぅ……。そんなに見ないでくださぁいぃ……」
「恥ずかしがらなくてもいいでござらんか。女性として魅力的でござるよ」
「その無駄な脂肪を私にも分けて……」
湯船から上がった私達は、手をワキワキとさせながらフェルににじり寄る。
「ヒサメ、後ろは任せた」
「トーカ殿、いくでござるよ!」
「ひゃあぁぁぁぁぁっ!」
私達は同時にフェルに襲いかかった。後ろからさわさわとヒサメがフェルの体を触ると同時に、私は胸の二つの豊かな果実をわしづかみにした。
「むぅ……。大きくて柔らかい……。私にも少し分けてくれても罰は当たらない」
「腰もしっかりとくびれておるでござるし、尻も豊かでござるな。これは子だくさんになりそうでござるよ」
「やめ……っ、ひゃぁっ!あんっ!ダメ……ダメですぅっ!!」
顔を赤らめて息も絶え絶えになりながら抵抗するフェルに構わず、私とヒサメはフェルの体の感触を楽しんだ。しばらくフェルの体を楽しんだ私たちは、満足そうな表情を浮かべて湯船に戻った。
床にしゃがみ込んで、息も絶え絶えになりながら悶えていたフェルがゆっくりと立ち上がって体と髪を洗った後、湯船に入ってきた。
湯船に入ってきた次の瞬間、彼女は私の胸に両手を当てると、ふくらみかけた胸のふくらみとその先端にある桃色のぽっちを指で弄り始めた。
「ひゃぅっ!……何するの……っ!くひゃぅんっ!」
「あらあら、敏感なんですねトーカさん。可愛らしい声をあげて悶えて……。いいですね、ゾクゾクします。ほらほら、これはどうですか?」
「やめっ!やめて……っ!ひゃあっ……あぁんっ!」
艶めかしい表情を浮かべたフェルが弄り続ける胸のふくらみとぽっちから、私の全身に快感が走り抜けた。私は、耳をぺたんとたおして悶えながら快感に耐える。
「うふふっ。トーカさんの肌はつやつやで柔らかくて、肌理が細かくて羨ましいです……」
「だからっ……やめ……ひゃんっ!」
そう言うと、フェルは片手で胸のふくらみを弄りながら、もう片方の手を私の腰から尻に向けて滑らせていく。その感覚に、私の背筋を快感が通り抜ける。
「腰もくびれ始めていますし、お尻は引き締まっていると思っていましたけど、意外と大きいんですね。柔らかくていつまででも触っていたいくらいです」
「ダメっ……、ダメっ……!ひゃっ……あんっ……!」
フェルの攻撃に息も絶え絶えになって悶える私。ひとしきり私の体を堪能したフェルは、今度は攻撃の対象をヒサメに変えた。
「ダメっ……ダメでござるぅっ!きゃぅんっ!」
「ヒサメさんも大きいんですね。柔らかくてもちもちしてて……。最高ですよ」
「フェル殿っ!堪忍でござるっ!堪忍してぇっ……あぅんっ!あっ!くふぅんっ!トーカ殿っ……助けっ……ひゃんっ!」
「トーカさんはしばらく動けないですよ?さあ、ヒサメさんにも私がされたことをたっぷりお返ししてあげますからね……」
ヒサメの悶える声を聞きながら、私は快感の波を鎮めようと息を整えていた。
その横で、フェルに全身を弄られるヒサメ。助けを求めるその瞳に、私は答えることができなかった。
開拓村の共同浴場から、辺りにうら若き乙女たちの黄色い声が響いていく。
後で聞いた話であるが、その艶めかしく百合百合しい黄色い声と雰囲気に、開拓村の年頃の少年たちは皆そろって顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだという。
後日、それを聞いた私たちは、三人揃って顔を恥ずかしさで真っ赤にしたのは余談である。
共同浴場から上がり、用意された下着と寝間着に着替えて宿の食堂に移動した私達。
私とヒサメの体を堪能したフェルは顔をつやつやとさせていたが、私とヒサメは反対にげっそりとした表情だった。二人とも耳としっぽが力なく垂れている。
「あらあら、お風呂では随分と楽しんでいたみたいだねぇ」
「あ、女将さん。はい、しっかりと楽しませていただきました!」
「あははっ。さあ、お嬢ちゃんたちもたんとお食べ!今日の食事は豪華だよ!」
そう話しながら、宿の女将さんが私たちの前に料理を運んでくる。
その食欲をそそる匂いに、私とフェルの瞳に光が戻り耳としっぽがぴんっと立った。
目の前には、蒸かしたジャガイモにたっぷりブラウンソースとチーズをかけて焼いた物に、塩と香草で味付けしたボアの厚切りステーキ、たっぷりの温野菜とそれに添えられているとろとろチーズ、蜂蜜酒が運ばれてきた。デザートは、たっぷりとクリームが添えられたベリーの蜂蜜煮である。
「さあさ、どんどんおかわりしてよ!今日は、私達の村の恩人のために腕によりをかけて作ったんだからね」
その声に、お腹が空いていた私とヒサメは自分たちが年頃の少女であるということもすっかり忘れ、すごい勢いで目の前の料理を食べ始めた。
「このジャガイモの料理おいしい」
「このボアのステーキも美味でござるな!!やはり拙者には肉が合うでござるよ」
「そういってくれると嬉しいねぇ。今日のお酒は村特産の蜂蜜酒だよ。デザートのクリームにも蜂蜜が入っているからね。たっぷり食べていってね」
その言葉を聞いた私とヒサメは、目の前のコップに口をつける。すると、冷たく冷やされた蜂蜜酒が喉を滑り落ちて口の中に蜂蜜の甘い香りが広がる。あと味はすっきりとしていて、疲れがとれるような気がした。
「この蜂蜜酒も美味でござるな!」
「ん。高級品と言われるのがよくわかる」
「この蜂蜜酒は樽ごと泉の水で冷やしてあるからね。蜂蜜酒は冷やして飲むのが一番さ。話によると、王家の方々はわざわざ宮廷魔術師に冷やさせて飲んでいるらしいね」
「なんとも贅沢な話でござるなぁ」
「ん。私達には縁のない話。だから、ここで」
「たらふく味わっていくでござるよ!」
そう言って、私とヒサメは次々に料理を平らげていく。私達が少女ということをすっかり忘れ去った食欲で料理を胃袋に納めていくその様子を、フェルは苦笑しながら見ていた。
「はぁ……。拙者もう食べられないでござるよ……」
「私も」
「ヒサメさんもトーカさんも、たくさん食べていらっしゃいましたね。それだけお疲れだったんですね。今日はお疲れ様でした」
「うむ。今日はいろいろあったでござるからなぁ」
「ん。盗賊退治とジャイアント・ビーの駆除と盛りだくさんだった」
「まあ、そのおかげで拙者たちの懐も潤ったし、このような御馳走を頂くことができたでござる」
「これこそ冒険者の役得」
「で、ござるなぁ」
満腹になるまで料理を食べて、満足した表情でベッドに横になりながら話す私とヒサメ。そんな二人の様子を、フェルは優しい笑顔を浮かべて見ていた。
「さあ、今夜はもう遅いし寝ましょうか。明日は一日休憩を取りますので、ゆっくりと帰りまで体を休めてくださいね」
「ん」
「承知したでござる……」
そう言うと、ヒサメはベッドにもぐりこんだ。それを見た私もベッドにもぐりこむ。それを見たフェルは、部屋の灯りとなっている魔導具のスイッチに触れて灯りを消す。
部屋の中が夜の闇に包まれると、部屋の中は星明りに照らされた。
隣のベッドから、ヒサメの寝息が聞こえてくる。それを聞いた私も、ゆっくりと目を閉じた。




