化物達
凹凸の少ない木面からすいすい降りるガキ。
その姿は小猿の様。
比較して私は木から降りれない猫の様な
みっともない姿を晒している。
歪みに足を掛け、そこに全体重を掛け
次の歪みまでもう片方の足を乗せる。
体重を乗せるたび歪みが軋み、
木屑が地面に落ちる。
ああ、死なずにこんな生き恥を晒して。
何とか木の高さの半分まできたか。
「バンッ!!」
落ちる落ちるッ!
木が揺れている、地震か?
いや違う。
他の木は揺れていない。
ここだけか?
「ズドンッ!!」
わわ、分かったぞ。
下からだ。
「ガッキまたお前かよ!」
「ん」
楽しそうに蹴り飛ばしやがって。
というかよく見ると蹴っている部分が
凹んでるような。
化け物かよ。
やばいやばいやばいやばい。
ミシミシ言ってる、傾いてるよ。
「お願いします、助けてください。
ガキなんて言ってすいませんでした」
「ん?」
そうだった、言葉分からないんだった。
「バキ」
歪な割れ目の倒れる木に私はカブトムシのようにしがみ付きながら地面に落ちた。
どうやら木の葉が敷き詰められ、
怪我はしなかったらしい。
木の葉に埋もれ手をもがいていると
ガキが私の手を引き木の葉から引っこ抜いた。
「お前いいかげ••••••」
おっと怒るのは止めるんだった。
もういいや取り敢えずあの鳥の巣に連れて行ってもらおう。
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着いたか。
ガキは集落の中に入って行った。
私は集落の外で待機するよう指示されたような気がしなくもない。
ん〜鳥の巣に運んでるのは果物と木の実か。
あれが主食なのか。
ん!?
あの草の大きな袋、カサカサ黒い何かが動いてるぞ。
「ん」
ガキめ、ぞろぞろと連れてきたな。
「んっん」
藁を体に巻きつけた大男が何人も私を囲んだ。
「ん!」
私の体は宙に浮いた。
男達に担がれた私はこいつらの餌になるのだろうか。
止めろと騒ぎ立てようとしたが
木の幹を斧を使わず素手で真っ二つに
割ったり、牛ほどに大きな草の袋を
片腕で担いで運ぶ奴。
どうやら抵抗しても無意味なようだ。
餌になるのは御免だがここは身を水の流れに任すように動かぬしかない。
「ん」
私は一際大きな鳥の巣の中に運ばれた。
中は草が敷かれていたが
壁や天井は外見通りの木の枝。
夕暮れの光が枝の隙間を通り抜けている。
私はゆっくりと草の床に降ろされた。
これから調理されるのかな?
そう思ったが
「ん」
男達は私の白装束を脱がした。
「殺してから調理してくれんかな〜せめて」
「ん?」
だめだー理解してない。
暫く私の体を弄り、細長い草を私の節々に巻きつけた。
「ん?」
あのガキが来た。
ガキと男達がんっんと何か会話らしきものをしていた。
話が終わったらしく男達は家から出て行った。
助かったのか?
ガキは手を背中に回し何かを持ちながら近づいて来た。
また何かされる、早く起き上が らなければ。
私が立ち上がると同時にガキは私の腕を掴んだ。
離そうと腕に力を入れるがゴリラみたいなこいつの力に腕は微動だにしない。
ガキは背中からもう片方の腕を前に持ってきた。
その手の人差し指にはほうれん草みたいな色をした塗り物?
らしき物で私が縛られた際出来た指の擦り傷に塗りつけた。
その後、男達が持っていたのと同じ細い草を口で噛み割きさらに細くした。
その草を塗りつけた部分で結んだ。
どうやらこいつらは進化は劣ってるもののいい奴ららしい。
草で結ばれた部分の皮膚は全て傷のある所だった。
ガキはにこにこと笑顔を見せた。
海岸の時は憎たらしい笑顔に見えたが
なんだか可愛らしく見えてきた。
ここで暮らすのは大変そうだが、
戦争はない。
感傷に浸ってるとカサカサと音が聞こえた。
目を開けたら草の袋に黒くてツヤツヤ
してカサカサ動く触覚。
ゴキブリだ。
さっき運んでいたのはこれだったんだ。
という事はこれは
••••••
「何平気な顔してボリボリ食ってんだよ! おい動いてんだぞ!」
ガキはゴキブリを手づかみして頭からかじりついた。
「食わねーぞ、絶対食わねーぞ」
ガキは私の両腕を片手で抑え、もう片方の手でゴキブリを私の口元まで運んだ。意地でも口は開かんぞ。
虫なぞ食ってたまるか。
「ん!」
「やめっ••••••」
あ〜吐きそ。
つづく。