若くて前途有望な米軍将校が1,000名、日本語を学ぶ。
頭の固い年寄り将校は不要だ。
若くて前途有望な米軍将校に日本語を学ばせる。
アーミー・メソッドとは、英語で日本語の言語構造を理解した上で、日本語通訳(日系人)に指導されながら実際に口頭で日本語を喋る訓練を繰り返していくことである。
1クラス10名で百のクラスが設けられた。このクラス単位で優劣の序列が付けられ、日本語の上達をクラス間で競い合ってゆくのであった。
何故、占領国、当時の感覚では植民地の言語をこれほどの規模でしかも米軍の将来の幹部候補生である少尉以上の将校が学ばなければならないのか、疑問に感じた者も中にはいたはずである。
ただ、この1,000名の将校は行動主義心理学によって選別されていたのである。
選別の際、最も重要視された素質は、正義感である。
不平等を良しとしないフェアな精神を持った将校だけが選ばれていたのであった。
ここにいる1,000名は、米国のためではない、日本国のために働くのだ。
圧巻、異様な熱気が現場に溢れていた。
若くて正義感の強い有能な将校達が日本語を喋っている。
これは、日本国再興の第一歩に過ぎない。だが、幸先の良いスタートだ。
彼の口元に微かな笑みがもれていた。




