助けちゃいました
エレノアの容姿を説明するために別視点から入りますm(_ _)m
アリアside
「てめぇら!大人しくしてねぇとぶっ殺すぞ!」
どうしてこんな事になったんだろう。私達は旅の芸人で各地を転々としながら活動している。今回の予定では団長の故郷の街で公演をする予定だった。その街に向かう道の途中で私達は盗賊に襲われた。
商人でもない私達を襲っても盗賊に旨みはないはずと思っていたら奴らの狙いは女だった。中でも、うちの顔でもある踊り子のサーヤに執心している。確かにサーヤは女である私から見ても凄く美人だ。…胸も大きいし。
「おめぇ子供が好きだったろうが!そこの青髪やるから大人しくしてろ!」
カチン。盗賊の言葉に思わず苛立つ。不本意ながら私の見た目は幼い。20歳にもなって伸びない身長、発展途上な胸。髪を伸ばしてみても子供が無理して大人びて見えて微笑ましいといわれる始末だ。この容姿のせいで私はどこに行っても子供扱いされる。
気にしていることを言われ怒りで体が震えるのを我慢する。いけない手を出してしまいそうだ。冷静になるんだ私。すぐ怒るとまた子供っぽいって笑われるぞ。
「いやっ…!」
サーヤの声で正気に戻る。男がサーヤに下卑た笑いを顔に貼り付けながら近づく。どうする…?服に忍ばせてあるナイフを確認しながら現状を打破する方法を考える。男の腕がサーヤに触れそうになり、私がナイフを抜こうとした時、新たな乱入者がその場に現れた。
「《氷壁》」
森の中から現れた黒いマントで顔まで覆い隠している謎の人物は魔法で円形状の氷の壁を生み出すと、私達と取り囲んでいた盗賊達を分断する。壁の内部には私達とリーダー格の二人が取り残される。そして駆けてきた勢いのままサーヤに触れる寸前だった男を殴り飛ばした。
「氷属性!?水の高位魔法使いか!?」
未だ仲間の魔法によって縛られている男の片割れが焦ったように叫ぶ。外から聞こえてくる衝突音から壁の外の盗賊達は必死に氷の壁を破壊しようとしているようだが、氷の壁はびくともしていない。そして謎の乱入者に視線が集まる。
「まったく…。いつの世になってもこのような輩はいるものだな」
「てめぇ何者だ!何しにきやがった!」
縛られながらも威勢がいい男が叫ぶ。
「我か?我はセツ…ゴホン。我はエレノアだ。何やら物騒な輩を見かけたので成敗しに来た次第だ」
「成敗だぁ…?見た所てめぇ一人じゃねぇか。一人でこの人数に突っ込んでくるたぁ、よっぽど馬鹿なようだな」
殴り飛ばされた男も立ち上がって自分で縛った仲間の拘束を解き武器を構える。エレノアと名乗った人物もマントを脱ぎさり素顔を晒す。
エレノアが素顔を晒すと騒がしかった場の時が止まった。
陽光を受けて煌びやかな銀の髪は腰まで伸ばされており、風が吹くと滑らかに銀の波が広がる美しい様子は見るものの視線を集めて離さず、端正な顔立ちは少女の幼さを残しながらも成長した大人を感じさせる凛々しさを備えている。衣服は質素な物なのに、本人と手に持つ剣の美しさが相まっておとぎ話のような幻想的な魅力を感じる。ポーっと見つめていると一瞬だけエレノアがチラリとこちらを一瞥し紫水晶のような目が私の視線とぶつかる。エレノアは視線を戻すと未だに止まったままの敵に向き直る。
「敵を前にして惚けるとは随分余裕だな」
「…………………はっ!こいつぁとんでもねぇ上玉だ。おい!顔は傷つけるなよ!…へへ、今日の俺達はついてるな」
「ちげぇねえ!剣も立派で高値で売れそうだ!」
ようやく再起動した二人が息の合った動きでエレノアに迫る。
「《地縛》!」
男が叫びエレノアの足が土によって拘束される。動きを止められたところに鉈と斧が襲いかかる。
「やめてぇぇぇ!」
私が叫び、彼女の体に刃が到達した瞬間―――
バキィィィン!
鉈と斧が砕け散った。呆然とする盗賊。一体何が起きたの…?
エレノアside
バキィィィン!
鉈と斧を裏拳で砕き、相手が呆然としている所に魔法を打ち込む。
「《雷撃》」
青白い閃光が体に吸い込まれるように放たれ二人の盗賊に直撃した。魔法をモロに喰らった二人は黒煙を上げながら全身をピクピク痙攣させている。
「脆い武器だな。次からはもっといい武器を使うことを勧めるぞ」
『うわぁ…。雷魔法ってやっぱり危ないね。って、それよりセツナ!さっきのなんで避けなかったの!?すっごく怖かったんだけど!』
『む、我らの体は鋼。つまり剣である我と同等の強度を誇っているのだ。そこらの武器に簡単に斬られたりせんぞ』
『それは分かってるけど…。分かってても怖いものは怖いの!これからは避けられるならちゃんと避けてね!』
『エレノアがそこまで言うならそうするが…』
どこか納得していないセツナに不安を覚えながら次のことを考える。今私は《同調》の魔法によって体をセツナに動かしてもらっている状態だ。この状態になると体は動かせないが感覚はしっかり残っているので、迫力抜群どころの話ではない。こうなるなら心臓も鋼にしてもらいたかったと嘆くのも後にして氷の壁の外の敵をどうにかしよう。
『セツナ。壁の外の敵はどうするの?』
『ふむ。ではこうしよう』
「《天倫の雷》」
バチバチッ
魔法を行使するやいなや、空に雷でできた輪が浮かび上がる。
「落ちろ」
バチバチバチバチッ
ピシャーーーーーー!
雷の輪が落ちて地面と衝突すると同時に眩い閃光が視界を奪い尽くす。
時間が経ち視力が戻り氷の壁を消してみると盗賊達は一人残らず地面に倒れてピクピクとしている。
『終わった…のかな?』
『ふむ、これで一先ず平気であろう。《同調解除》』
『ちょっ!?私が説明するの!?』
『久々に戦って我は疲れた。エレノア、後は頼んだぞ』
『セツナ?セツナーっ!?』
セツナめ…。やりたい放題やって丸投げしてきたよ。盗賊を倒したのはいいけど、これからどうしよう…?
とりあえず、困った私は何か聞きたそうにこちらを見ている青髪の少女に曖昧な笑顔を向けるのであった。
今更ですが…『』は脳内会話でお願いします