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契約しちゃいました




突然聞こえてきた声に驚いて体を動かせないでいると、またあの謎の声が聞こえてきた。






『我の尽きかけた魔力を完全に復活させる者がいたとは…。新しい主よ、主は何者だ?』






依然体を硬直させている私に謎の声は語りかける。そして、純粋な疑問を抱いている気持ちが剣から伝わってくる。…ん?剣から?






「あの〜。もしかして伝説の剣様でおいででしょうか?」





緊張のあまり変な言葉遣いに成りながらも、相手を怒らせないように下手にでる。






『どんな伝説かは知らぬが、今主に話しかけているのは剣である我だ。』


「ほ、本当に剣に意思がある。あの伝説は本当だったんだ…」


『ふむ、主よ。よければその伝説とやらを聞かせてくれないか。我も目覚めるのは久しい故、現状を知りたい。』






その後私の生い立ちを含め、剣が遠い昔の物であり普通の人は知ることもなく、一部の者に存在すら怪しいと思われていたということを話した。






私が想像していたこの剣は、なんでもかんでもぶった斬る恐ろしい物かと恐る恐る話し相手をしていたが、話してみると存外話しやすく、剣の見た目を体現したような真っ直ぐな性格をしていることが分かった。










『なんと!それでは主は祖母が亡くなってから1人で生活していたのか!』


「うん。お婆ちゃんに徹底的に仕込まれてたから特に不自由はしなかったかな。それと私はあなたの主じゃないから、主って呼ばなくてもいいよ。エレノアって名前で呼んで。」






私の話に剣は大袈裟に反応してくれる。そのせいで好奇心旺盛な子供と話しているような気分になり、話しかたもだいぶ柔らかくなった。







『む、その事なのだが…。エレノアが我の主になってくれぬか?無論、無理にとは言わんが…』







剣から迷いの気持ちが伝わってくる。今さらだけど私の気持ちも相手に伝わってるのかな?







『今はまだ伝わって来ぬぞ。正式に契約したら我と一心同体になる故に必然的に伝わるが』


「いや!わかってるじゃん!」


『今のは表情から読んだだけだ。エレノアは顔に感情が出やすい』






表情って…。目、どこにあるんだろう…?






「そですか…。それで契約?をすると一心同体ってことは私は剣になっちゃうの?」


『そうではない。姿は元のままだが我は其方と一つの存在となり、其方は剣となる。簡単に言えば皮膚は鋼のようになり、極めれば素手ででもモノを斬れる。』






完全に人外になっちゃうのか…。でも、体が鋼になったらもとからしぶとい私がさらにしぶとくなりそうな気が…。





うんうん唸っていると剣から諦めの気持ちが流れてくる。





『すまない、おかしなことを聞いた。戦の無い世に我は必要ないな。我は久々に誰かと話すことが出来て満足だ。手を煩わせるが台座に戻してくれないか?』





どうやら剣はまた封印される気のようだ。何百年もの間暗い洞窟の中でただひたすら時が流れるのを待つのは、きっと剣といっても意思を持つ限りとても辛かったことではないのか?







『なに。1人は慣れている。少しの間寝る時間が増えただけだ。エレノアが気にすることではない。』







また表情を読まれた。契約してもしなくてもこの剣に隠し事は出来そうにない。






「もう…。まだ一言も契約しないとは言ってないでしょ。大丈夫です!私、貴方と契約します!」


『ほ、本当か!?いや待て、我から提案しておいてなんだが…もう少し慎重に考えてだな…』






抑えきれない喜びの感情が流れてくるのを感じ、どうにもこの伝説の剣は子供っぽいなぁと思わず苦笑いしてしまう。






「私の生い立ちは話したよね?私は貴方がいなかったら、多分村の中で1人で死んでいた。村にいた頃の記憶はほとんど無いけど、それでも誰もいない、ただ1人で死を待つのは本当に怖かった。」







お婆ちゃんに救われるまで1人でいたのは短い時間だったと思う。けれど、恐ろしかった。自分の手足が徐々に冷たくなっていくのを感じ、私はここで死ぬんだと。周りにいるピクリともしない冷たい人達と一緒になるんだと。そう考えたとき体だけじゃなく心まで冷えきった。







体も心も冷えきった私は温もりを求めた。誰かこの手を掴んで欲しい。誰かいないの…?1人はいやだ。





そんななかで、お婆ちゃんが伸ばした手を掴んでくれた。






寒い、寒い。お婆ちゃんに助けられた時、私はうわごとのようにそう繰り返していたらしい。







私はお婆ちゃんから温もりをもらった。そして、そのお婆ちゃんを連れてきてくれたのは剣だ。







「1人で平気だ、なんて嘘。私も今は1人で寂しいんだ。だから一緒に行こう?」






今度は私が温もりを与える番だ。






『…いいのか?力は災いを呼ぶ。どんなに平和な世でも争いはあるだろう?』


「貴方は争いがしたいの?」


『そんなことはない!先代の主が夢見た平和を壊したい訳が無かろう!』


「じゃあ平気だよ。危なくなったら逃げればいい。体は鋼でカチカチなんだから万が一でも怪我しないでしょ?」


『いや、鋼も傷つくことはあるんだが…』


「もう!契約するの?しないの?」


『…したい』


「よし!なら早速しよう!思い立ったら即行動!」






剣から呆れの感情が流れてくるがスルー。起こってもいないことを心配しても何も変わらないのだからいいじゃないか。契約の詠唱を教わり、いよいよ契約だ。







『本当にいいんだな?』


「うん。じゃあ、いくよ?」






剣の刃に指をあて軽く引き、血を刀身に垂らす。






「《契約》」





足元に淡く輝く魔法陣が浮かび上がる。血を媒介とし、文字通り剣と一体となる儀式だ。





『《同調開始》』





剣の魔力が私に流れてくるのを感じる。私の魔力と混ざり合って新たな魔力が作られる。そして、完全に二つの魔力が一つとなる。





『《同調終了》』




「《契約完了》」





ふぅ、これで私は鋼の女だ。体を軽く動かして調子を確認してみるも特に変わったところはない。






『これで契約終了だ。エレノア、いや新たな主よ。よろしく頼む』


「エレノアのままでお願い。私は貴方の主になりたい訳じゃないから」


『む、どういうことだ?』


「私と友達になりましょう?」





私は今日1番の笑顔でそう言った。








剣の性格のイメージはロリBBA(え?

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