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ライフ 株式会社

あえて題名をここでサブタイにもってくるという……w

本当はこういうのって最後の章に持ってきた方がいいのかなぁ、とも思いつつやっぱり自分の好きに書きたいなと、思い切って持ってきました。


第4部 ライフ 株式会社 ですッ

 2時限が終わり次の教科の準備を終えた時だった。廊下をドタドタとうるさく走る音がした。

 高校生にもなって簡単なモラル、マナー、ルールが守れない奴が多すぎる。

 ただでさえ今日は体調が優れないのだ。 こんなくだらないことで気を害したくはなかった。

 でもそれを、音を出している本人に言う勇気もない。

 自己嫌悪というか、情けない自分の性格にため息をつく。 こんなことをしているから(リキ)に心配をかけてしまうんだろうな……。

 「おい! 千葉はいるか!?」 

 扉をこれまたうるさく乱暴に開けた先生が声を上げた。

 いくら急いでいても生徒の見本となるのが先生なんじゃ……

 そこで俺の思考は途切れた。

 先生の一言によって。

 「お婆さんが倒れたって、お前の母親から連絡が入った!」

 

 病院に来るのは何度目だろうか。

 基本的にあまり怪我や病気をしない我が家は、あまり病院にお世話になることが無かった。

 久々に来た病院。 こんな理由で来たくは無かったんだけどな……。

 俺が病院に着いた頃には、すでに婆ちゃんは亡くなっていた。

 安らかな眠り、という表現がぴったりと当てはまる様な、そんな寝顔だった。

 口を軽く緩め、目もどことなく柔らかだった。

 爺ちゃんの話しだと、最後まで苦しそうな顏はしなかったそうだ。

 ずっと元気で、疲れ知らずだった婆ちゃん。 家に行くといつも笑顔で迎えてくれた。

 今までのことを思い出すと、自然と涙が溢れてきた。

 今まで流したことなかった涙だ。

 悔し涙でも、うれし涙でも、子供の頃の泣きじゃくる涙でも、どれでもなかった。

 ただただ悲しくて、それが現実なんだと受け入れてしまう自分が怖くて、だけど現実から目を背けることなんかできなくて……。

 目を閉じると小さなころからの思い出が鮮明に映る。

 そしてまた涙が溢れてくる。 それの繰り返し。

 父さんも母さんも泣いていなかった。

 子供の前で涙を流したくないのだろう。 ずっと俺の傍にいて、慰めてくれていた。

 時間が経つにつれ、皆が落ち着きを取り戻したのはそれから30分程してからだった。

 このまま学校に返すわけにもいかないだろう、ということで俺は一旦家に帰された。

 自室に入り、ベッドに倒れ込む。

 気が付くと涙がじわっと滲んでくる。 枕が目の周りだけ濡れていた。

 昨日のようにこのまま寝ることは出来なかった。

 うつ伏せから仰向けに寝返りを打ち、天井を見上げる。

 人生は突然のことばかりだ、と聞いたことがある。

 本当にそうだと思った。

 こんなこと予想もしていなかった。

 家族が、そんな……、欠けるなんて、考えたくなかった。

 小さな時間の中で、大きすぎる出来事が起きると人はパニックになる。動揺する。

 だけど、今の俺は意外と冷静だった。

 たしかに、先生からあの一言を聞かされた時は頭が真っ白になったけど。

 でも今は自分でも驚く程冷静だった。 

 こうして無駄に時間は過ぎて行く。


 『今日は出前でも取って食べておいて、お母さん達は忙しいから帰れそうにないから。』

 時計の長針が7を指した頃だった。 母さんから電話がかかってきた。

 それに小さく返事をして電話を切る。

 また自分の部屋に戻り、ベッドに座る。

 何かを口に入れる気にはならなかった。

 今はただ、静かな場所で静かにしていたい。

 今日はちゃんと寝られるだろうか。 ふとそんな疑問が生まれた。 

 杞憂で終わればいいけど、今は寝られる気がしない。

 簡単に言うと今は何かをする気にならないんだな、と思うと少し可笑しくなった。

 身体が疲れている。 今はとにかく身体を休ませようと、身体を倒し目を閉じた。

 そしていつの間にか眠りについている。

 実際、俺が寝られたのはそれから2時間程してからだった。

 

 時計を見ると3時を回った所だった。

 ベッドから出て身体を伸ばす。 足だけをベッドからはみ出させるという変な恰好で寝たせいか、中途半端な時間に起きてしまったようだ。

 ぐぅ というお腹の音に肩をすくめ、食べるものを探しに一階へ降りようとした。

 部屋の扉を開けたとき、玄関の方から話し声が聞こえた。

 「えぇ、ですが……。」

 「ご安心ください、今回のようにご家族やご親戚が亡くなられても十分な〝補償″が付きます。 それに──もう何年も前にご覚悟されたと記憶していますが……?」

 「……はい、その通りです。 わかりました。 ではそのようにします……。」

 「ご安心ください。 ニュースのようにはなりません。 むしろあっちの方が特殊な例なのですから。 9割以上の方は幸せになっておられます。」

 「はい……。」

 か細い母さんの返事を最後に、母さんと話していた誰かは家を出た。

 保険会社の人だろうか? 婆ちゃんが保険に入っていたというのは少し意外だけど、さすがに70歳を超えれば一般的にはおかしくないのだろう。

 でも、『ニュースのように』というのはなんのことだろう。 保険会社に関する大きなニュースは最近見ていないはずだけど……。

 なんにしても、今は寝起きプラス空腹のせいでまともに思考できない。 このことを考えるのは何かお腹に詰めてからにしよう。

 一階に降りると母さんがテーブルに肘を付き、考え事をするようにうなだれていた。

 「どうかした?」

 さっきの会話の声を聞いていてもわかった。 今の母さんは元気が無い。

 当然のことだ。 婆ちゃんが……、居なくなって、家に帰ってくるまでずっと色々なことをしていたのだろう。

 「翔……! ……起きてたの?」

 何かを期待するような口ぶりだ。『今起きたところ』とでも言って欲しいのだろうか。 でも実際今起きたところなのだから、嘘をつく必要もない。 

 「ううん、今起きたところだよ。」

 だからこう答えた。

 その言葉を聞くと、母さんは安心したようにため息をついた。

 俺はそれ以上何も言わず、冷蔵庫を探る。

 さっきの保険会社の人のことを聞こうかとも思ったけど、今の母さんは少しでも休ませてあげたかった。

 「疲れてるならもう寝たら?」

 俺は興味ではなく心配の言葉を口にした。 それに小さく返事をした母さんは、自分の寝室へとゆっくり歩いて行った。

 俺もお魚ソーセージを食べ終わったら部屋に戻ろう。 思わず出てしまったあくびになぜ可笑しくなり、少し安心した。 少しは自分の中の気分は晴れたようだ。

 明日は今まで通り心から(リキ)との会話を楽しめるだろうか。

 そうできることを願いながら俺はベッドの上で目を閉じた。


 朝、いつも通り目が覚める。

 いつものように着替え、いつものように朝食の準備を手伝った。

 いつもと違ったのは、少しだけ心が軽くなっていたことと朝から家を訪ねる人がいたことだけ。

 ピンポーンというお馴染みのチャイムを聞き、俺が玄関に出た。

 扉を開けて入ってきたのは20代くらいの若い男だった。 スーツを着こなす〝できるサラリーマン″みたいな人だった。

 その男の人は俺の顏を見ると、冷たい笑いを浮かべたように見えた。 でもそれは一瞬のうちに営業スマイルへと変わっていた。

 「どうも、初めまして。 人々の生活を応援する、『ライフ 株式会社』の佐藤と言う者です。 お母様はいらっしゃいますか?」

 うん、第一印象は悪くない。

急展開すぎワロタwww とか言わないでくださいね←

なにか読み手様を驚かせるような展開が書きたいものですね……w


はい、第4部 ライフ 株式会社 終了です。

段々と物語も進んできます。

これからもっと面白くなるように頑張っていこうと思います!

読んで頂いた方、ありがとうございました。

物語はまだ続きます。

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