日常の中で
結構時間あいたけど、続きですッ
第2部 日常の中で です。
一限目の数学。
教壇に立つ先生は、落ち着いた風に公式の説明をしている。
黒板に書いてあることを半ば機械的にノートに写す。
窓の外を眺めながら、今日の朝あったことを思い出す。
母さんが出かけるのは別におかしい事ではない。 ただ、なぜか気になった。
「おい、なによそ見してるんだ。 まぁいい。 千葉、25ページの問1番、2分やるから解いて黒板に書け。」
授業中によそ見はするもんじゃないな……。
その日の昼休み、いつも通り力と一緒に弁当を食べていた。
「お前どうしたんだよ? 先生に怒られるの見たの初めてだぞ。」
「あぁ、ちょっと考え事してたんだ。 気にしなくていいよ。」
力に心配をかけてしまったことを少し反省しながら、昼休みは過ぎていった。
「ただいまー、っと。」
家の玄関で靴を脱いでいると、リビングから母さんの声が聞こえた。
『──えぇ、はい。 もう高校生になりまして……。 えぇ、もうすぐです。 はい、では。』
誰かと電話しているようだけど、それにしては少し暗い感じがする。 話していた内容は俺のことだろう。
リビングに入り、台所にいた母さんに何気なく聞いた。
「誰と電話してたの?」
「し、翔! お、おかえり……。 えっと、友達と電話してたのよ。それより、帰ったらまずは「ただいま」でしょ?」
「あぁ、うん。ごめん、ただいま……。」
2度目の「おかえり」を背で聞きながら、自分の部屋に上がる。
扉を閉め、鞄を床に放ってからベッドに倒れ込んだ。
「さっきの母さん、かなり動揺してたよな……。」
ただ電話の内容を聞いただけで。
俺に聞かれるとまずい内容の電話だったのだろうか。
そう思うと、なぜか寂しい気がした。 自分が遠ざけられているような、そんな感じ。
ただ自分が心配性なだけなんだろうけど、やっぱりこういうのは嫌だ。
後でもう一度電話の内容を聞いてみようと決め、今は襲ってくる睡魔に身を委ねることにした。
時計を見ると既に時間は10時を回っていた。
予想以上に長く寝てしまっていたようだ。
それにしても、母さんは俺を起こしてくれなかったのだろうか?
それとも起こしてくれたけど、俺が起きなかっただけ?
どっちにしても、もう皆ご飯を食べ終わっているだろう。
一階に降りると、母さんも父さんもどこかに出かけているのか、どの部屋も電気は点いていなかった。
テーブルには逆さまの茶碗と豚カツとキャベツの千切りを見つけた。茶碗の横には書置き。
「温めて食べておいてね。母さんたちは出かけてきます。 か……。朝も出かけておいて夜もか……。」
「はぁ……っ。」
強めのため息をつきソファーに深く座る。
ポケットに入れていた携帯を何気なく開いた。
『新着メール:1件 江津力』
力からのメールだ。 俺が寝ている間に来ていたらしい。
『あんまり無理はするなよ。今日は早く休め(p_-) 』
生真面目というか、律儀というか……。
基本は良い奴なんだけど、なぜか友達が少ない損な奴。
だけどこういう気遣いは嬉しい。 今日は早めに寝ることにした。
第2部 日常の中で 終わりです。
ありがとうございましたッ