41 自由過ぎる生活?
平民とは、貴族と違って苦労する事もあるけど、楽になる事も多くある。
平民になって良かった事の一番に上げるとすれば“自由”だ。起きる時間も寝る時間も自由だし、ご飯を食べる時間も自由。
「自由だからと言って、自由過ぎる!」
「お互い、今迄頑張って耐えてきたご褒美だと思えば良いんじゃないか?それに、それほど乱れてないと思うが……」
私の家のダイニングルームで、ルベールさんと一緒に昼食をとっている。『何故一緒に?』と聞かれたら『一緒に住んでいるから』と答えるしかない。
「朝早い時間じゃないと咲かない花の蜜が必要なのに、ルベールさんが───」
「あぁ、それは悪かった……リヴィが可愛すぎて、どうしても抑えられなくて……」
「ふわあーっっっ!!そそそんなハッキリ言わないで!!」
平民の婚約、結婚も貴族とは全く違っていた。貴族の婚約は、お互いのお家事情も関わってくるから、持参金やら色々と決める事が多く、婚約が調うまで数ヶ月以上もかかったりする。そこから結婚となれば、色々な準備があるから、1年以上かかる。
それが平民となれば、婚約は親の承諾を得れば成立して、結婚は役所に結婚申請して受理されれば成立する。特に大掛かりな結婚式はなく、成立した後に挨拶を兼ねたお食事会をするだけ。
というわけで、あれからすぐに婚約が調って、一緒に住むようになって5ヶ月が経った。5ヶ月も一緒に暮らしていると、色んな事が進んだり変わったりする。その進んだ事の中で、特に困った事が───
ルベールさんとの夜が長い事。
ルベールさんは今年で32歳で私が27歳。もうそろそろ落ち着いても良いんじゃない?え?それにはまだ早い?
とにかく、ルベールさんに手加減というものがない。毎日ではないけど……そんな夜を過ごすと、起きるのが翌日?当日?のお昼前だったりする。
昨日は、『明日の朝は早いから!』とお願いしたのに……気が付いたら10時を過ぎていた。それを愚痴れば『可愛すぎるリヴィが悪い』とかわけの分からない恥ずかしい事を言われて、更に追い打ちをかけられるから、こっちはたまったもんじゃない。
ーそんな事、誰に相談できる?できないよね!?ー
「リヴィ様も大変ですよね……溺愛って、色んな意味で紙一重ですから……」
「な───っ!?」
と、まさかのミツからの一言。
ーえ?ミツ、まさかアーニーさんと!?ー
「私の母がそうなんですよね……」
と、遠い目をしながらミツが話してくれたのは、父親の事だった。
深影さんの菊花さんへの溺愛ぶりがすごいそうで、子供達が居ようが居まいが構い倒すそうだ。
「お母様なんて、昼過ぎまで起きてこない事もよくありますよ。その度に、私がお母様のお世話をして、弟の晃がお父様に説教して……まぁ……仲が良いのは良い事なんですけど。ルベール様も、そんな感じですよね」
ー穴を掘って埋まりたいー
『防音魔法を掛けてあるから心配するな』と言われても、ミツも一緒に住んでいるから、バレてないわけがない。
そもそも、そんな事の為に防音魔法を使うって!あの時のしたり顔ときたら──
ー胸がキュンッとした事は秘密にしておこうー
「でも、色々大切だと思いますけど、リヴィ様が幸せそうで、私も嬉しいです」
ニコッと笑うミツ。尻尾があったらフリフリと振っているだろうなと思えるほど、本当に嬉しそうだ。
「ミツ、今までずっと一緒に居てくれてありがとう」
「こちらこそ、傍に居させてもらって、ありがとうございます。あ、それと、ご報告がありまして。私、アーニーさんとお付き合いする事になりました」
「─────────え?」
「なので、一度、自分の世界に帰りますね。あ、勿論、またここに戻って来ますから!」
と、ミツは満面の笑顔だったけど、アーニーさんが(色んな意味で)無傷で終わる事はないんじゃない?とは言えなかった。下手したら、虫除けできなかった私も無傷じゃ済まないかもしれない。
******
「左腕が、暫く使い物にならないけど、ミツとの事は認めてもらえました」
「ソウデスカ……」
ミツが自分の世界に帰ってから2週間後に、ミツとアーニーさんが帰って来た。そのアーニーさんの左腕は、包帯でぐるぐる巻状態だった。
『弱い男にミツはやらない』
と深影さんに言われて、それから深影さんに挑んでは叩きのめされ──を10日ほど繰り返していたところ、『娘の幸せを本当に思っているならやめなさい!』と菊花さんがキレて、主様にも注意され、菊花さんの知り合いの人達からも釘を刺されたり──とにかく、深影さんに認めてもらえたそだ。
異世界、異種族結婚だから大変だと思うけど、それはそれで前例があるらしく、アーニーさん次第なんだそうだ。
とにかく、私は無傷で済んだようです。




