3 朔の日の夢
ゼロス神
この世界を創った創造神。そのゼロス神には双子の妹の女神が居る。
ネアン女神
この女神が創造した世界が、聖女ナナカが居た世界。
ゼロス神の世界には魔法があるけど、ネアン女神の世界には魔法が無く、科学と言うものが発展している。
そのネアン女神の世界に、稀に魔力を持って生まれてしまう子がいる。魔法の無い世界で魔力持ちがどうなるのか?魔力の流れが不安定になりやすく、魔力を扱う事もできない為、病弱な体質になり早逝する事が多い。聖女ナナカも、そのパターンだったそうだ。もともと持っていた魔力が、世界を超えて召喚される時に、神々から受ける加護によって更に魔力が強くなり、こちらに来た時には既にかなりの魔力持ちになっていて、魔力を鑑定した神官が驚いていたと言う。
その話は、世界中で驚きに包まれた事を覚えている。今にして思えば、聖女ナナカは最初から“奇跡の聖女”だったのかもしれない。
そんな理がある為、この世界には聖女ではなくても、異世界人がたまにやって来る事があるそうだ。
「リヴィ様、今日は早目に寝支度をしますか?アロマでも用意しましょうか?」
「え?あ……そっか、もう1ヶ月たったのか……1ヶ月ってあっという間だね……」
この世界は、1日25時間の1ヶ月が35日で、10ヶ月で1年となる。三の月の初日である今日1日は朔の日。月が姿を消して暗闇の夜となる日だ。そんな朔の日に、私は同じような夢をみる。『夢』と言っていいのかも分からない生々しい感覚のある夢。そこから逃げ出したいのに逃げられない夢。あの夢が嫌で眠らないように頑張ってみても、気付けば寝てしまっている。まるで、その夢から逃げられないかのように。
「アロマ……試してみようかな………」
「分かりました。色々試してみましょう」
ミツもアウラも夢の事を知っているから、朔の日はいつも私の側に居てくれるし、色々と助けになろうとしてくれる。
ーこの2人が居なかったら、私はもう壊れていたのかもしれないー
今はただ、この2人だけが私の心の支えになっている。
『酷いわ!私はリヴィアンナの支えになってないの!?』
ーなんて言いながらメリッサに怒られそうー
友達となったメリッサの存在にも救われているのは確かだ。何の柵もない、色んな意味での初めての友達。
ーこのままここで、ゆっくり過ごす事ができたら良いのになぁー
そんなささやかな願いすら叶うのかどうか……。やるべき事は分かっていて、やらなければいけないのに動けないままで1年経ってしまった。
「そろそろ動かないと……ね……」
「いつでも傍に居ますからね」
『私も居るわ』
「ありがとう……」
******
太陽が沈むと、外は暗闇に包まれた。いつもより人が少ないせいか、より一層深い闇に囚われたような暗さだ。
ミツが用意してくれたのは、ラベンダーのアロマだった。
「そろそろ……寝ようかな」
「それじゃあ、明かりを消しますね」
『リヴィ、おやすみなさい』
「おやすみ………」
朔の日だけは、寝たくないと意識しても、目を閉じるとすぐに眠りに落ちてしまう。そして、それから見る夢は───
目の前には暗闇が広がっている。
どこが前で、どこが上なのかも分からない空間で、私はひたすら歩いている。歩いても歩いてもあるのは暗闇だけ。そうして歩いていると、必ずどこからか声が聞こえてくる。
『**はどこに居る?』
「………」
『**の**は────』
「──っ!」
それから、足を何かに掴まれて、どこかに引きずり込まれそうな感覚に襲われる。
助けて
と叫びたくても声が出ない。それから必死に抵抗して───
『***は*****わ──』
『**の**は──────』
『リヴィ!大丈夫?』
「………アウラ………うん、大丈夫……」
「飲み物を持って来ますね」
「ありがとう、ミツ」
そうして、目が覚めるのは太陽の光が差してからだ。
ー今日も、ちゃんと目が覚める事ができたー
あの夢から逃げる事ができた。これで、今日から1ヶ月は大丈夫。
******
「いよいよ明日ですね」
「そうだね……」
明日はいよいよ、王太子の結婚式の日。この辺境地でもお祭り騒ぎとなっている。お陰で、色んな売り物や飲食店での料金が安くなっていると言う事で、私はミツと一緒に買い物にやって来ている。
「リヴィ様、あのカフェで休憩してから帰りませんか?」
「あ、私の好きなケーキが売ってるカフェね。勿論行くわ」
私は普段はあまり外出をする事がない。買い物は、いつもミツが1人でしてくれている。そんなミツが、いつも買って来てくれるケーキのお店。そこには、色んな種類のケーキがあって、店内で食べる時にはお皿にケーキと一緒にアイスやフルーツが盛られていた。見た目も可愛いし、勿論とても美味しくて、その日は楽しい1日となった。




