27 精霊達の怒り
「あ、そういえば、アウラはどこに行ったんだろう?」
「あ、言い忘れてました。アウラさんは──」
*アウラ視点*
『※※※、ジルダを護って!私は大丈夫だから!』
『ヴァルナ!!』
あの時、手を伸ばしたけど間に合わなかった。それに、ジルダから水の魔力が消えてしまっていた。それでもなお、アイツはジルダを捕らえたまま離さなかった。
ー絶対に赦さないー
ただ、アイツとジルダは繋がっていて、更に風の魔力をも奪おうとしていたから、あの時は攻撃よりも護る事に徹した。アイツには、私の魔法があまり効かなかった。
ーまさか…異世界人?ー
そうなれば、今の状況から言うと私が不利だ。
ーどうする!?ー
『──私があの者を退けるわ。貴方は彼女を保護しなさい』
あの時助けてくれた声は忘れない。あの場での圧倒的な安心感をもたらしてくれた声。あの助けがなければ、今頃、私もヴァルナのように捕らえられて、ジルダも喪っていた。
“主様”だった。
イチコは、その主様の遣い魔が創り出した妖狐だった。
*リヴィアンナ達が駄犬と対峙する少し前*
「アイツは私達が対応しますから、アウラさんはヴァルナさんを助けに行って下さい」
『捕らえたアイツをどうするつもり?』
「こちらでも処理できますが、希望があればアウラさん達にお任せします」
『あら、理解が早いのね。アイツを捕らえたら、必ず私とヴァルナの前に連れて来て』
「承知しました」
『それじゃあ、リヴィの事は頼んだわよ』
『お任せ下さい』
スッと頭を下げたイチコを一瞥した後、私は王都にある王太子宮へと転移した。
メジロ姿のままだと、いまいち力が発揮できず、ヴァルナの居る位置が正確には分からなかった。
『チュチュッ』
どうしたものか?と思っていると、3匹のネズミが現れた。どうやら、案内をしてくれるらしい。ネズミになっていると、妖精の姿が見える事があるから、このネズミ達には私が見えているんだろう。
『案内を頼むわ』
『『『チュチュッ!!』』』
そうして、案内されてやって来たのは、報告にもあった通り、王太子妃の部屋の奥のクローゼットの中だった。
『ヴァルナ!』
『ん……あ!リ───んんっ!?』
声を上げようとしたヴァルナの口を、右の羽根で押さえつける。
『今の私はアウラよ』
『んん!分かったわ!アウラ!来てくれてありがとう!』
『もう、力はほぼ戻ってるのね?』
『ふふっ……それは、アウラもでしょう?』
と、2人で笑い合う。その傍で、ブルブルと全身が震え出したネズミが3匹。
『案内ありがとう。お前達は、ここから逃げなさい。危ないから』
『『『チュチュッ!!』』』
ニッコリ微笑むと、ネズミ3匹はペコリと頭を下げてから猛スピードで来た道を戻って行った。
『あの女だけ?王子はどうする?』
『王子は放っておいても自滅するわ。あの女だけで十分よ。聖女だかなんだか知らないけど、あの女は、絶対に赦さないわ』
たとえ“奇跡の聖女”“神々に愛された聖女”と言われていても、そんなものは私達精霊には関係ない。私達の愛し子に手を出した愚か者でしかないのだから。
愛し子に手を出されて黙っていられる精霊や妖精が居るなら、是非とも紹介してほしい。
精霊や妖精が、無条件で慈悲深いと信じているのなら大間違い。慈悲深くなれるのは、愛し子に対してだけ。
『ようやく、石から出て……暴れられるわ』
と、ヴァルナが大きな声で言い切ると、アウイナイトにヒビが入り、そのヒビから一気に水の魔力が溢れ出した。
『私も負けないわ!』
と、私も一気に風の魔力を溢れさせた。
そうすると、勿論部屋に張られていた結界が反応して魔法陣が展開された。この部屋に張られている魔法陣は“防御”のみ。後は、異変を察知したり魔法陣が起動すると報せが行くようになっているから、すぐに騎士や魔道士達が駆け付けて来るだろう。
『観客が多い方が楽しいわね』
王太子妃が何をしたのか──
『皆に教えてあげないとね……』
あの女が何をしたのか。
あの女が何と契約を交わしたのか。
あの女が何に手を出したのか。
あの女が誰の怒りを買ったのか。
あの女の為に、王子が何をしてくれるのか。
『あの女にも、命懸けで護ってくれる人が居れば良いわね』
クズと言っても、一応はこの世界の亀裂を浄化してくれたのだから、そこだけは感謝しているのも確か。でも、その“徳”も自分で打ち消してしまったのも同然。
“行いは返ってくる”
そんな簡単な事も理解できないとは。
『聖女制度も、色々考えものよね』
『制度……言い得て妙ね……ふふっ』
久しぶりに緩く、ヴァルナと話しているうちに、部屋の外が騒がしくなり、ノックすらせずに扉が破壊されるような勢いで開き、扉の向こうから数名の騎士と魔道士が入ってきた。
『さあ、ヴァルナ、思う存分やっちゃいましょう』
『ええ、思う存分やるわ』
ーさあ、お前達、覚悟しなさいー




