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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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24 再来

『ジルダの扱う魔法は、いつ見ても綺麗だね』


『ジルダの努力に恥じないように、私も帝王学を頑張らないとね』





『聖女ナナカは優し過ぎるところがあるから、私達が守ってあげないとね』


『ナナカは可愛らしいね』




セオドリク様は、よく私の事を褒めてくれたけど、『可愛い』と言われた事は……なかった。勿論『好きだ』とも言われた事はないし、私も言った記憶はない。でも、ナナカの事は、『可愛い』と言っていた。最初から、セオドリク様はナナカに好意を持っていたけど、婚約者(わたし)が居たから行動に出なかっただけで、私が居なくなったから行動を起こしたのかもしれない。

私が居なくなってからあっという間の流れだったけど、聖女との結婚を反対する者が居るはずもないし、非難される事もないだろうから。







******



「リヴィ様、大丈夫ですか?」

「……ミツ………大丈夫……じゃないかな……」


朔の日が近付くにつれ、模様は更に濃くなり痛みも強くなり、とうとう立つ事も辛くなり、昨日からベッドの上から動けなくなった。そのせいか、寝ても嫌な夢を見てしまい、すぐに目が覚めてまともに眠る事もできず、体も日々重たくなっていく。

それでも、なんとか耐えられているのは、イチコさんの淹れてくれる薬草茶のおかげだ。それを飲むと、体が少し楽になる。それでも、もうギリギリのところまできている──という事は、私が一番よく分かっている。


もう間違いなく、ジルダ(わたし)の存在がバレている。そして、次の朔の日に、私を捕らえる為にやって来る。イチコさんの姿が昨日から見えないのは、準備をしているからだろう。アウラも何も言わないけど、私の傍から離れる事がなくなった。



私が苦痛と共に微睡んでいる時に、耳にしたイチコさんと誰かの会話によると、ヴァルナを閉じ込めているアウイナイトの力が弱まっているらしく、ナナカが焦っているようで、そのうち隙ができるだろう──という事は、ヴァルナが外に出られるのも時間の問題なのかもしれないとの事だった。

そうなれば、ナナカの治癒の力は完全に失われる。それは、過去の聖女と同じだから失ったところで過去の成果が消えるわけじゃない。ただ、“奇跡の聖女”“神々に愛された聖女”と謳われているナナカに対して、皆がどう思うのかは未知数だ。


とはいえ、私にナナカの心配をする暇はないし、必要も無い。私が生き延びる事ができたら、寧ろ私がナナカを──


「ゔっ……」


ズキズキと左足の痛みが増す。

寝て起きてを数時間単位で繰り返しているせいか、朔の日までの日数があやふやになっている。ただ、痛みが増すから朔の日に近付いている事だけが分かるだけ。


ーきっと、後数日……だよ……ね……ー


と、また私は浅い眠りに就いた。











『見付けた』





「───────はっ!!」




ドクドクと波打つ心臓が痛い。


今の声には聞き覚えがある。あの時、私を捕らえた者の声だ。


「見付かった……」

『───()()()


アウラが、そう呟いたのと同時だった。


ズンッ──と、家全体に重圧がかかり、空気がビリビリと身体に突き刺さる。左足の痛みはより一層酷くなった。


「───っ!!」




『ようやく見付けた。上手く隠れていたものだな』


そこに現れたのは、声からすると男性だ。今日が朔の日なのか、部屋に明かりはなく真っ暗で、その者の顔が全く見えない。ただ、幾重にも張られた結界を超えて現れたのだから、ただ者ではないのは確かだ。


『どうせ隠れていたとしても、最後には全てもらうのだから、無駄な抵抗だったな』


私から水の魔力を奪った張本人で間違いない。でも、その魔力はどうしたのか?ナナカは、水の精霊のヴァルナを取り囲んでいるだけで、ナナカ自身に水の魔力はない。

今、私の目の前に居る者からも、私の魔力の気配はない。


「貴方に依頼した?契約を交わした相手が、私の魔力を欲しがったわけじゃない?」

『どうせ最後だから教えてやろう。契約者が望んだのは“ジルダの魔力”ではなく“ジルダの居場所”だ。お前の居場所を奪うには、魔力を奪わないといけない。お前の魔力を奪う事が……俺の目的でもあったんだ』

「貴方の?」


ー私は、あの時よりも前に、この者に会った事があるの?ー


未だに顔はよく見えないから分からない。


「私から奪った魔力は……どうするの?」

『どうもしない。ただ、お前から魔力を奪えればいいだけだから。俺にとっては“精霊の愛子”のお前から魔力を奪う事に意味があるだけだ』


ー精霊の愛子?ー


精霊に愛された人間の事。でもそれは、おとぎ話のような言い伝えで、今では妖精や精霊を目にする事すら無い。

私は、妖精や精霊が見えるし、契約も交わしているから、そう呼ばれてもおかしくないのか?


『ただ、俺だけの力では動けなかったから、あの者の願いを上手く利用しただけだ。それじゃあ残りの風もいただこうか……』

「あぁぁ───っ!!」


その者が話を終えると同時に、私の左足の痛みが更に増し、その場にうずくまると、その者が私へと手を伸ばした。






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