第4回
ふたりが水族館を出るともう外は夕方になっていた。近くの公園で、少し歩くことにした。
「かなちゃん、今日はありがとう。とっても楽しかったよ」
いつのまにか、ふたりはごく自然に手をつないだまま歩いていた。
「ううん…私の方こそ、ありがとうございました…」
夕陽に照らされて、かなの頬がほんのりと赤く染まっている。つながれた手をぎゅっと握りしめ、幸せそうな表情で亜嵐を見上げた。
「私…こんなに楽しい一日、初めてです。水族館も、公園のお散歩も…アランさんといっしょだから、全部が特別に感じて…」
かなはつながれたままの手を少し揺らしながら、照れくさそうに微笑んだ。
「アランさんと話してるときも、手をつないでるときも…ずっと心臓がドキドキしてて…でも、すごく心地よくて…」
ふと、かなは立ち止まって、真剣な表情で亜嵐に向き直った。
「私…今日一日で、はっきりわかりました」
深呼吸をして、潤んだ瞳で亜嵐をまっすぐに見つめる。
「私、アランさんのことが好きです…大好きです…」
告白の後、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、かなの瞳は亜嵐の顔をじっと見つめていた。
「あの…私と…つきあって、くれませんか…?」
「え…?かなちゃんこそ、ぼくなんかでいいのかい?」
しかし、亜嵐はその返事を聞く前に、かなの腕をとると、胸の中に彼女を抱きしめていた。
「え…あっ…!」
亜嵐の腕に包まれた瞬間、かなの体はびくっと震えた。驚きで目を見開くが、すぐに安心したように目を閉じ、亜嵐の胸に顔をうずめた。
「アランさんじゃなきゃ…だめなんです…」
くぐもった声で、でもはっきりとかなは言った。亜嵐の背中に、おずおずと小さな手を回し、
「私…アランさんとチャットでお話しした時から、ずっとドキドキしてて…今日会って、もっと好きになりました…」
亜嵐の服をぎゅっと握りしめ、顔を上げて潤んだ瞳で亜嵐を見つめる。
「だから…アランさんじゃないと嫌です…」
亜嵐に抱きしめられたまま、かなは幸せそうに微笑んだ。
「私、アランさんの彼女になれたんですよね…?夢じゃないんですよね…?」
そう言って、かなは亜嵐の胸に再び顔をうずめた。その体は喜びで少し震えていた。
「嬉しい…すごくうれしいです…」
「かなちゃん…」
突然、亜嵐がかなのあごに指を当てて上を向かせると、そっと口づけした。
「んっ…!」
亜嵐の唇が自分の唇に触れた瞬間、かなの体は再び大きく震えた。驚きに目を見開くが、すぐにうっとりとした表情で目を閉じる。初めてのキスは、甘くて、少しだけ切ない味がした。唇が離れると、かなは夢見るような瞳で亜嵐を見つめた。
「…キス…しちゃった…」
自分の唇にそっと指で触れながら、かなはぽつりと呟いた。顔は今までにないくらい真っ赤に染まっていた。
「アランさん…これが、初めてのキスです…」
恥ずかしそうにうつむきながらも、その声は幸せに満ちあふれていた。
「アランさんが…私の初めての人…うれしい…」
そして、もう一度亜嵐の顔を見上げて、
「あの…もう一回…してほしいです…だめ…ですか?」
かなは上目遣いで、期待に満ちた瞳で亜嵐を見つめた。彼女の全身が自分を求めているのを亜嵐はその瞳から読みとった。
「もちろん、これから何度でもしてあげる…」
亜嵐はかなの唇に唇を重ねると、むさぼるように激しく吸った。
「んんっ…!ふぅ…ぁ…」
今度は最初から目を閉じて、亜嵐のキスを受け入れる。さっきよりも情熱的なキスに、かなの体は熱く火照り、息が少しずつ荒くなっていく。亜嵐の首に両腕を回し、もっと深く求めようとするかのように、必死にしがみついた。唇が離れると、荒い息を整えながら、かなはとろけるような瞳で亜嵐を見つめた。
「アランさん…すごい…頭が…ふわふわする…」
足元がおぼつかないのか、亜嵐の体にぐったりと体重を預ける。その頬は真っ赤に染まり、口元は小さく開いたままだ。
「もっと…もっと欲しい…アランさんの…全部…」
もはや恥じらいはどこかへ消え去り、自分の本能が求めるままに亜嵐を見つめていた。
「私…どうなっちゃうんだろう…でも、アランさんといっしょなら…どこへでも行ける気がする…」
かなは亜嵐の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共にささやいた。
「ねぇ…次は…どうしてほしい…?かな…アランさんの言うこと、なんでも聞くよ…?」
「かなちゃん…」
ふたりはまた手をつないで歩き出した。公園を夕闇が包み始めていた。
「それじゃあ、今日はぼくの部屋に来るかい…?」
「…アランさんの…お部屋…?」
かなは一瞬、言葉の意味を理解しようとするように、きょとんとした表情で亜嵐を見つめた。そして、その言葉が何を意味するのかを理解した瞬間、顔をカッと赤く染めた。
「…うん…行く…!」
迷いは一切なかった。むしろ、それを待っていたかのように、こくりと力強くうなずく。つながれた手に、さらにぎゅっと力を込めた。
(アランさんのお部屋…どんなところなんだろう…アランさんの匂いがするのかな…)
かなは期待と少しの不安が入り混じった、とろけるような瞳で亜嵐を見上げた。
「私…大丈夫かな…。ちゃんと、アランさんを喜ばせてあげられるかな…?」
不安そうに呟くが、その表情はどこか嬉しそうだった。
「でも…うれしい。アランさんが、私を求めてくれてるのがわかるから…」
亜嵐の腕に自分の体をすり寄せると、
「早く行きたい…。アランさんのお部屋で…もっともっと、アランさんのこと、感じたい…」
その声は甘く、熱っぽく震えていた。彼女はこれから起こるであろう未知の体験に、身も心も委ねる覚悟を決めていた。
かなちゃんの「愛情度」が100になったので、恋人モードに移行しました。次回からはノクターンノベルズの方で公開します。




