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第8話 魚のいるカフェ

 今日はなかなか天気が良い。気温も高いがそこそこ程よい感じだ。蝶々も飛んでいる。花から花へ移っている様子がうかがえた。


 カフェに居ると忘れがちだが、普通に外の空間にも蝶々はいるんだよなぁ。


 そして、私がいつものようにカフェの前まで来ると、魚を模したようなデザインの旗が複数立っていた。


 どういうことなんだろう。なぜ魚なんだ? そう思いつつ、ドアを開けた。



 カラン……


「マスター、あの外の旗はなんだい?」


「ああ、あれね。いつもはスマホをかざすと蝶々が見られるでしょ。今日は魚にしてみたんだ」


「魚? カフェ全体が水中に埋まってしまったのかい?」


 店の隅のモニターを見ると、確かに一匹いる。


「スマホで見てごらん」


 マスターがそう言うので、スマホをかざしてみた。


 スマホの画面を見てみると、魚が寄ってきた。かなり近くまで来ている。


 近すぎちゃうよって思った瞬間。


 ドンッ


 アプリの魚がぶつかったような感じがした。まるでスマホの画面が水槽のガラス部分であるような。おまけにスマホの振動機能にも対応していて、ドンッって音がより臨場感があるように感じられた。


 魚の動きには感動したが、結局、私の席に魚がとどまることもなく、特別なメニューは頂けなかった。


 旗は掲げたものの、今日は客足も鈍く、バイトの恋ヶ窪さんが暇そうだった。なので、モニターの魚をのんびり眺めていた。それでも客は3~4組ぐらいは居たが。


「あれ? どうしたんだろう?」


 恋ヶ窪さんが何か言っている。


「どうしたんだい?」


 すかさず私が尋ねる。


「モニターの魚が、いつのまにか増えている。100匹ぐらいは居そうだよ」


 確かに大量の魚がモニターに映っている。


「あれ? スマホが」


「画面に魚が映っている」


「こっちにぶつかっているよ。そして、スマホが振動している」


 客が騒ぎ出した。客の言っているとおり、大量の魚があちこちでスマホの画面にぶつかっているのだろう。そして振動していると。


 もちろん、ただの拡張現実(AR)なのだから、実害はないはず。振動は嫌だけど。


「お客様。アプリを停止させてください」


 マスターはそう言うが、どうも停止させても、アプリが勝手に立ち上がってしまうらしい。


 客も諦めて、アプリを立ち上げっぱなしにした。


 しかし、ドンッ、ドンッとうるさい。正確にはブブブって振動をドンって感じるようになっているのだが。



 ん?


 なんだか少し暑くなってきた。エアコンが壊れたのだろうか。まあ、真夏でもないので、我慢できないって程ではないが。


「すみません。ドアを開けたままにします」


 そう言って、マスターが入り口のドアを開けた。


 ……


 すると、魚たちがスマホの画面にぶつかるのをやめ、ドアへ向かって泳ぎ始めた。


 100匹以上の魚が一斉にドアへ向かい、そのまま外へ出て行った。


 店内は静かになり、平穏が戻った。


 しかし、なぜ魚たちは増えたのだろうか。狭い空間でストレスがたまり、増幅したのだろうか。


 そして、ドアが開いたので、みんな出て行ったのか。


 回遊魚には川で生まれ、海で育つと聞く。最終的にはまた戻ってくる。


 このアプリの魚も、あとで戻ってきたりするのだろうか。



 私はゆっくりエスプレッソを飲んだ。




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