表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪役令嬢の母親として転生したけど、家族から冷遇されてるので、娘と一緒に全部ぶっ壊して幸せになります〜地味で無能なモブ妻? いいえ、前世スキルで家ごと改革してやります!〜

作者: 結城斎太郎

目が覚めた瞬間、頭が割れそうなほど痛かった。


「――うそ……ここ、ゲームの世界じゃん」


そう、私は転生してしまったのだ。しかもよりによって、乙女ゲーム『薔薇の運命はあなたと共に』に登場する、悪役令嬢リュシエルの母親――リリアーナに。


リリアーナ。地味で冴えない中年女性。夫からは見向きもされず、義母には日常的に侮蔑され、使用人からは無能扱い。最悪なのは娘のリュシエルで、彼女は悪役令嬢として破滅し、最終的には国外追放される。


私は、そんな没個性な“モブ母”に転生してしまったのだった。


「……でも、だから何?」


前世、私は事務処理能力最強の社畜OLだった。人間関係は地獄だったけど、業務だけは誰よりこなした。理不尽な上司にも無能な部下にも耐え、仕事の鬼と化して生きてきた。


今度は、私が環境を変える番だ。娘を救い、家を立て直し、夫と義母には後悔の海で溺れてもらう!



---


まず、状況把握。

私の夫は貴族クラウディオ。見た目はいいけど、中身はただの浮気貴族。義母エレオノーラは、格式と血筋至上主義の老害。屋敷の使用人たちも、義母の影響で私を侮っている。


「これって、全部“組織の空気が腐ってる”ってやつね」


私は笑った。前世で何度も見てきたやつだ。下から変えるのは無理。だから、上から変える。


「――なら、まずはお金と情報」


私が屋敷の会計帳簿を調べ始めると、すぐに異常に気づいた。使用人の報酬が不自然に高い。しかも私の持ち金が不当に削られている。


「ふふ、なるほどね。家計、私が握るわ」


私は書類を整理し、夫の留守中に帳簿を義母に突き付けた。


「これは……何のつもりかしら?」


「横領の証拠です。ご安心ください。既に公証人に提出済みです」


義母の顔が一瞬で蒼白になった。


「お義母様の息のかかった使用人の不正会計、全て洗い出しました。今後、屋敷の財務は私が管理します」


「この、娘しか産めなかった分際でっ……」


「では、息子を産めなかった罪で家計を破壊しても許されると?」


静かに言うと、義母は口を閉じた。


こうして、義母の影響力は屋敷から一掃された。



---


次は夫。帰宅早々、浮気相手と一緒にやってきた。


「リリアーナ、離婚しようと思う」


「そう。じゃあ訴訟の準備をしておくわ」


「えっ?」


「不貞行為による離婚申し立てで、慰謝料と娘の親権、それに領地の管理権を要求する。浮気相手との往復書簡も証拠として保全済みよ」


「そ、そんな……」


「ちなみに、爵位の継承には国王の裁可が必要。あなたの今後の出世にも関わるでしょうね」


私は淡々と言った。クラウディオは顔を真っ赤にし、浮気相手は泣き崩れた。



---


こうして、私は“地味で無能なモブ母”から、“資産と実権を握った女主人”へと変貌した。


娘のリュシエルは、今では私の隣で笑っている。かつては歪んだ愛情で性格をこじらせた彼女も、母親の変化に気づき、徐々に変わっていった。


「お母様って……本当はすごい人なのね」


「当たり前でしょ。前世ではエクセルと社内政治で死闘してきたのよ」


「えくせる……?」


「いいの。将来、貴女が幸せになるために、今の私はあるの」



---


――そして数年後。


「このたび、リュシエル嬢との婚約をお願いしたく……」


娘の前には、王太子がひざまずいていた。


「この子を……よろしくお願いします」


私は、堂々と微笑んだ。


モブ? それがどうした。私は娘と、自分自身の幸せのために、何でもやってやる。


この物語のヒロインは、娘だけじゃない。――母親だって、人生をやり直せる。いや、やり直してこそ、母である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ