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陸軍魔攻特殊部隊『ロクドウ』

「よう、小僧!元気してたか?」

「ヤイバ!」


 ベアーノア帝国の大病院でヤイバは声高らかに言葉を弾ませ、エネアの病室へと入ってくる。

 ヤイバの表情から見て取れる溢れ出るような笑みが、エネアの退院を祝福していた。


「準備は終わったか?」

「うん!」


 これからエネアはヤイバ率いる陸軍魔攻特殊部隊『ロクドウ』のメンバーになる事になっている。

 ヤイバは巧みな話術と普段の行いから、国王とロクドウのメンバーを見事に納得させ、エネアは期待のルーキーとして、ベアーノア帝国で高待遇を受けられる事になっていた。

 治療費やその他諸々も国からの支援により賄われている。


 そんな貰ってばっかりのエネアがヤイバに心を開くの事になるまでにそう時間はかからなかった。

 エネアはヤイバの期待に応える為に、ただその為だけに、力を振るう。

 リハビリをしてからのエネアは今まで以上に強力となっていた。

 単純な身体能力だけでは無く、ヤイバ直伝の技も相まってその度合いは留まるところを知らずだった。


「よし行くか!」

「いくか!」


 大声で放たれるその声色に多少の戦慄を感じつつも、それが普段のヤイバだということを知った後では笑みに変わる。


 コツンコツンとまた一歩、歩を進めていく。

 そして病室を後にし、外へ出る。


 久しぶりに外に出る感覚は依然として慣れないものだ。

 窓の外から眺める太陽と、外に出て直で浴びる太陽とでは感じ方が違っていた。


「これから俺達は軍部へ向かう。覚悟はいいか?エネア隊員!」

「ばっちぐーですぜ!だんな!」

「ガッハハハ!それで良し!」


 このおかしな掛け合いもヤイバの教えだった。


 それはリハビリ戦闘訓練の真っ最中だった時のこと。

 当時無口で口下手だったエネアに不安を覚え、ヤイバが意地でも喋れるように教えた言葉の数々の一つであった。


「ここから危険な道も通るから、しっかり着いてこいよ?」

「あいあいさー!」


 危険な道だとは言ったものの特にこれといった怪物には出会わず、2、3時間ほど歩き走った所で部隊の本拠地に着いた。

 本拠地とは言っても簡易的な休憩所みたいな物で、いつでも戦闘に備えられるように、手の届く範囲には武器が配備されている。


 部屋に入るなり、ヤイバは大声で集合をかける。


「お前ら!!こいつが前から言ってた新入りだ!!よろしく頼む!!」

「よ、よろしくたのむ!!」


 しばらくの沈黙の後、巻き起こったのは怒声や歓声等ではなく、笑声だった。

 笑声とは言ってもそれは、嘲笑などの不快な物ではなく、エネアの入隊を快く受け入れてくれているような、そんな楽しげな笑声だった。


「ハハハハ。ヤイバがどんな人を連れてくるのかと思ったら、何だ?意外と可愛いじゃねぇーか。俺はカンラギだ!!よろしくな!!」

「よろしくな!」


 カンラギと名乗った男は筋骨隆々なヤイバとは違い、小回りがよく利きそうな細マッチョだ。

 ヤイバが力ならカンラギは技といった感じだ。

 それを証明するかのように、背中には一本の長槍が携えられている。


「お、俺はハクジャクっす!!まだまだ半熟物っすが、よろしくっす!!」

「くっす!!」


 ハクジャクは確かに、なよなよしていた。

 だが、一枚のシャツから透けて見える筋肉は本物で、相当な努力をしている事が見て取れた。


 そうしてエネアは親交を深めていく。

 武器の紹介をされ、部屋の紹介をされ、瞬く間に空は闇夜と更けていた。


 晩飯の最中、隊長ヤイバがめずらしく真剣な表情で口を開く。


「国王により、次の敵国が判明した」


 隊員たちは固唾を飲み込み、ヤイバの言葉を待つ。


「小国ラパンアルゴだ」


 知られていない国の名前を出され、安堵する隊員達。


「ラパンアルゴ??どこだそれ?」

「まぁ、あんまり知られてないし大したことないんだろ」


 騒ぐ隊員達にヤイバは手を二回パンパンと叩き、


「ああ!お前たちの言う通り、この国はそこまで驚異では無い!!いつも通り!気楽に行くぞ!!」


 湧いたその場を収める。


 一同は何ごともないようにその場を過ごしていたが、たった一人、エネアだけは違っていた。


 ラパンアルゴという名前と共に、今までの記憶が鮮明に蘇る。

 薄暗い牢の中、強大な魔力を持つ9人の異端児、腹に空いた大きな傷穴、数々の国を破壊してきた自分。


「その国は……ダメだ……!」


 無意識に口が走っていた。

 だが、ヤイバ達はそんな事を知らない。


「おいおい。急にどうした??まさか怖気付いたか?」

「まぁ、初めてだし仕方ないよね〜」


 ただの子供の戯言、皆は聞く耳を持たない。

 いや、もしここで聞き入れて貰えたところで、彼らは止まらないだろう。


 そう。これは全て決まった運命だったのだ。

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