所詮はただの研究にすぎない
「はぁあ。メンドクセー」
「仕方ないですよ。国王直々による命令なんですから」
怠そうに地面を蹴りながら不満を垂れ流すテトラを宥めるヘプタ。
こんな所で留り無駄話を続けていても時間の無駄だと悟ったNo.1のエナは、
「早く終わらせてメシにするぞ」
と一言。
それに呼応するようにナンバーズ達は一斉に魔力による瞬間移動を行っていた。
当然のようにエネアを残して。
いくらエネアが魔力を持っていないとはいえども、紛れもなくナンバーズの一人である事に違いはない。
現にエネアの身体能力はナンバーズの中でもトップに立ち、群を抜いている。
牢の中で半放置状態だったエネアの腕や足は極限までに痩せ細り、それは強く蹴れば今にも折れそうだというのにも関わらず、その見た目からは想像もできない程の瞬発力を放ち、走り込んだ時の地面を蹴り上げた時に巻き起こる砂埃は人の筋肉の原理を無視しているかの如く、エネアの体全体を埋め尽くす程だった。
エネアを抜いたナンバーズ全員が魔力による瞬間移動を行ったその僅か一分後にはツーブレル王国にエネアを含むナンバーズ全員が集結していたのだった。
◆ ◆ ◆
「クキキ。1……2……3。いっぱい殺せる」
奇妙に笑い、道行く人々に向かい指を差し数を数えているこの、人を物としか見ていないような狂った思想の持ち主である男はNo.2のデュオ。
ハサミで自分で切ったような疎らな白銀の髪に赤い瞳と長らく切っていないであろう爪が特徴的だ。
しばらく指差しを続け数を数えていたが、それに飽きるとまるでビームでも放つように人差し指の爪先に魔力を込める。そしてそれを弾丸のように放った。
着弾した魔力の塊である弾丸は大爆発を起こし、瞬きを一回した後には目の前に存在していたはずの街が一瞬にして消えていたのだった。
「だーひゃっひゃっひゃあ!楽しい!!」
人の事などお構い無しに破壊と殺戮を繰り返すデュオ。
その現状を見ればもうこのまま彼一人に任せても良いだろうと誰もが口にするだろう。
だが、そういう訳にもいかないのが現実。
制限時間一時間という短い間でナンバーズ達はこの王国を滅亡させなければならない。
デュオに続き、ナンバーズ達は順調に破壊を進めていた。
勿論、エネアも例外では無い。
エネアはグーとパーを繰り返し力が入るかどうかを確認する。
距離は約10km。足に全体重を掛け、左拳には最大限の力を込め、体全体の筋肉で前進するように走り込む。
走り込んだ時に巻き起こる風圧と共にエネアの体は宙に浮き、握り締めた左拳で閃光の如く建物を倒壊していく。
立ち塞がる壁を物ともせず一直線に何度も何度も……。
鳴り止まない悲鳴と絶叫。
転がり、増え続ける死体の山と血の海。
建造物からは火が燃え盛り、破片が辺りに散らばる。
前線で破壊を楽しんでいたデュオの白銀の髪は血で染りきっており、異臭を放っている。
約30分が経過していた。
国はもう滅亡寸前。ナンバーズ全員が集結している。
エナが右掌を空へ上げ、王国全体が埋め尽くされる程の魔力を放出する。
放出された魔力を一つの塊にし、王国に向かい撃つ。
「これで仕上げだ」
《ブラック・エンド》
エナによる最終仕上げの巨大な魔力の一撃により、ツーブレル王国は最初から存在しなかったかのように跡形もなく消え去った。




