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ナンバーズ

 怪星の南北に位置する小国『ラパンアルゴ』の魔力解析研究所で、ある日10人の赤ん坊が生まれた。


 この魔力解析研究所は国王公認の直々の管理下にある研究所であり、その名の通り、魔力の構造や性質を調べ、より簡単に入手、利用できる方法を研究している。


 その一環で生まれたのが魔力を持つ10人の赤ん坊達。

 彼、彼女らはナンバーズと呼ばれていた。


 だが、その一人であるNo.9エネアだけは魔力を持たなかったのだが、それと引き換えにエネアは異常なまでに身体能力が優れていたのだった。


 だがそこは魔力解析研究所。他の場所で生まれていたら羨望や期待の眼差しを向けられていたかもしれない能力を持っていたとしても結局は魔力が全てなのだ。

 魔力を持たぬ者は欠陥品として扱われる。

 エネアの居場所はそこには無かった。


 研究所地下の隔離部屋で、一人の男研究員が口を開く。


「No.9。時間だ」

「……」


 白衣に身を包みんだゲッソリとした研究員が薄暗い牢の扉を開ける。

 それはまるで、罪人の世話でもしているかのようだ。

 エネアの両手は手錠で自由を奪われており、目隠しで視界を奪われ、首輪から伸びた鎖を引かれ、奴隷のように歩かされる。


 地下の床石をコツコツと踏み鳴らし、辺りが響き渡る。

 しばらくし前を歩いていた研究員が立ち止まり手錠、首輪、目隠しを外され束の間の自由が訪れた。


 時刻は朝の11時を回った頃だろうか。

 陽の光がエネアを差し、その眩しさで咄嗟に目を逸らし、辺りを見渡す。


 やがてその視線は一人の研究員に向けられた。

 エネアの覇気の無い無気力な瞳、でもその奥では何を考えているか分からない奇妙な視線が研究員を刺している。


「や、、やめろ……!その目を向けるな!気持ち悪い!」


 ニヤリと微笑むエネアに畏怖を覚え、研究員はそそくさとその場を去った。

 それから10分くらいが経過したところでその者達は現れた。


「おはよう。ナンバーズの諸君。昨日は良く眠れたかな?」


 デップリと太らせた腹に頭部は禿げ、それを王冠で隠しているが隠れきれていないのは

 このラパンアルゴの国王『サンドマーク』だった。


 ナンバーズを見下し、(さげす)み、従わせようとしてくるその声からは不快感が込み上げてくる。

 それはその場にいるナンバーズ全員も等しく感じていたようだった。

 その一人であるNo.4のテトラは気性が荒く、サンドマークに反抗するように話を催促していた。


「王様さんよォ。用があるなら勿体ぶらずに早くしろや。

 こっちは朝から研究に付き合わされて腹減ってんだよ」


「それはそれはご苦労。

 だがお前達……口の利き方には気を付けろ?

 もう一度その汚い口を開けばそれがお前達の最後と思え」


 テトラの態度に怒気を隠す事もなく国王サンドマークは脅迫する。

 いくらナンバーズ達が魔力を持っていようとも、命を握っているのは間違いなく国王側だ。

 逆らえば命の保証が無いことは明白である。


「ちっ。わーったよ。すんませんでしたぁー」


 いくら気性が荒いとは言え、テトラも馬鹿では無い。さっきまでの荒々しかった口調は多少収まり、敬語を使い身の程を弁えていた。


「分かればそれでいい。だが、ワタシも鬼では無い。

 君達の疲労はそれなりに分かっているつもりだ。

 言い分通り早速やるとしよう」


 不服そうなテトラを他所に今度はNo.7のヘプタが国王に質問をする。


「あのー、やる……というのは何を?」


 ヘプタは女性だった。

 ロングヘアの艶やかな金髪に金色の瞳。

 穏やかな性格で分け隔て無く接する事ができるという点では好印象を与えるだろうが、それは特定の相手のみだ。

 興味の無い相手にはとことん冷酷になり、話し掛ける事さえも難しい。

 ただ、その『特定の相手』の範囲が広すぎるが故に彼女の実態を知るものは少ない。


 彼女は国王の気を逆撫でさせないようにおずおずと言葉を紡いでいた。

 そんな彼女に国王サンドマークも笑顔を取り戻し応える。


「コホン。改めて詳しい事を説明させてもらう。

 今から君達ナンバーズには東の隣国にあるツーブレル王国を壊滅させて来てほしいのだ。分かったら返事をしたまえ」


「了解しました」


 一同は意にも介さず、承諾する。


「勿論、分かってるとは思うが手加減なんぞするな。

 魔力を存分に使え。

 制限時間は一時間だ。では行ってこい」


「存分に魔力を使え」という言葉には悪意が込められていた。

 サンドマークの視線の先にエネアはいない。当たり前だ。


 国王サンドマークはそれだけ言うと踵を返し城内へと戻って行った。

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