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創造神、転生

 水星、金星、土星、天王星、地球……。

 この広大な宇宙の中にある全ての惑星が『創造神』の産物であるということはこの世界では周知の事実である。

 創造神にとってこの惑星とは吾が子のようなものなのだ。


 だが創造神はそんな惑星に一切の興味を示さなかった。

 その理由はただ一つ。創造神は惑星を創る事でしか悦楽を感じる事ができなかったのだ。


 惑星を創り、創った惑星の権限を捨て、他の神々に所有権を譲渡し委ねる。

 そうする事で惑星の処理を行い、日々を過ごしてきた。


 そんな創造神だったがある時から執着し、興味を示していた惑星が一つだけ存在した。

 それが異世界惑星K-18。

 またの名を奇怪な惑星(怪星(かいせい))。


 何故創造神がこの怪星に執着していたのか。

 その最もな理由は、この怪星が他の惑星と比べても異質だったからである。


 異質な点の一つ目がその色だった。

 創造神は綺麗物好きだった。

 その怪星は他の惑星とは違い、表面全体が金平糖のような桜色に染まり輝きを放っていた。


 そして二つ目がその性質にあった。

 その怪星は他の惑星とは違い、生物が生活できるようになっていた。


 職人気質でこだわりが強い創造神にとって、色と性質が完璧だったこの異世界惑星K-18は、創造神史上初の最高傑作となっていた。


 のだが、


 そんな美しさと輝きに包まれた怪星はそこで生まれてきた欲まみれの人間達により破滅の一途を辿っていたのだった……。


「まったくどうしてこうなった……」


 左目に月を右目に太陽の瞳を持つ男神、創造神は物憂げに呟いていた。


 思い返せば怪星が変わり始めたのは、魔力の存在が確認されてからだった。


 魔力。それは悪魔を封じ込めた力の通称である。

 この魔力はある時、一人の人間と一匹の動物が性交することにより生まれた獣人が起源であり、突然変異の先天的に備えられた特殊能力である。

 この魔力の効力は恐ろしい物で、寿命と引き換えに莫大な力を得る事ができ、それをノータイムで放つ事ができるというものだった。

 魔力を使用し一度放てば小さな街一つくらいは軽く壊滅できるだろう。

 それから何十年。人間達は魔力の拡大を行い、その結果起源となる獣人が人間と交わることにより種別関係無しに魔力を手に入れる事ができるのであった。


 だが、先程も言ったようにこの魔力は人の器では耐えきれない。この力を持つ者はあまりの強さに体が蝕まれ、二十歳を満たずに死を迎える。


 やがてその魔力は世界各地に拡がっていった。

 最初にその存在を知った一国の王が魔力の性能を確かめる為にとある小国を一方的に攻め滅ぼした事がきっかけになり、他国は自衛の為に魔力を求め、そして抗っていた。

 その結果争いは今になっても未だに絶えず、当初の自衛の目的は闇へと消え去り、現在では怪星の支配者となる為に全ての国が戦争を起こしていたのであった。


 一息つく暇もなくまた怪星から「やぁー!」だの「ぐわぁー!」だの「くらえー!」だの叫声(おらびごえ)が聞こえ始める。

 どうやらまた戦争が始まったみたいだ。


 始まりの戦争が起こってから約数百年、しばらく傍観を続けていたが、もう我慢の限界だった。

 これ以上僕の最高傑作を壊されては堪らない。

 しかも下界の人間風情に。


 創造神の眉間には皺がより、今にも爆発しそうな怒りを理性で抑えている。


 どれ、ここは少しお灸を据えに下界に降りるとするか。気が乗らないが仕方ない。神の怒りを見せてやる。


 創造神は左親指と中指を擦り合わせパチンと音を鳴らす。

 すると、まるでテレポートでもしたかのように戦争の境界へと降りていた。


「うおおぉ!?」

「なんだなんだ!?」


 僕が空から登場すると、軍兵達は敵味方関係無く困惑の色を見せている。


 今の軍兵達からしてみれば、謎の生命体が突然空から現れたという所が相場か。とりあえず出だしはこれで良いだろう。

 後はちょっと脅せば……っと。


「愚かな人間共よ……。争いを辞めよ……」


 《神威・解放》


 創造神を包ように機敏な旋風が辺り一体に巻き起こる。

 すると、兵士達はバタバタと声も発さずに倒れていった。


「これに懲りたら戦争なんて止めて平和に仲良くするんだね――って」


「……」

「………」


 返事がない。ただの屍のようだ。


「みんな寝ちゃってるし……。

 はぁ……何故人間はこんなにも脆弱(ぜいじゃく)なのに争いを繰り返すのか……。

 僕にはその思考回路が甚だ理解できないね。

 まいっか。帰ろ」


 来た時と同じようにまた指を鳴らして帰還した。


 創造神が下界に降り、事を終わらせるまでを時間で表せば僅か一分も経ってないだろう。

 その間に創造神は戦争に参加していた全ての兵士達を気絶させていたのだった。


 創造神の介入により止まったかと思われた戦争だったがその約一ヶ月後には案の定再発していたのだった。

 それも国の王達は『空から現れた謎の生命体を手に入れる』という新たな目的を追加して……。


 この謎の生命体というのは十中八九創造神の事であり、欲に塗れた人間共はそんな創造神を奴隷にしようとしていたのだった。


「はぁ。何故人間はそこまで欲に溺れることができる……。

 仕方ない。この手は使いたくなかったけど最終手段だ。

 やるしかない……。転生を」


 転生とは『娯楽の神』が生み出した神々に伝わる遊びの一つである。

 元来、神という生物は存在そのものの格が違うが故に下界への長期間の滞在が許されていない。

 それを不満に思った娯楽神が新たに編み出した遊びこそが転生であり、これを行う事で下界へと降りる手段ができたのである。


 だがこれはあくまでも娯楽の一つであるが故に、デメリットがあったのだ。


 デメリットその1

 転生した際には確実に神の記憶が失われ、神の記憶が戻るまで神の力を使用する事はできない。


 デメリットその2

 失われた神の記憶は戻る事もあるが、戻る方法や戻る時期が曖昧で確実では無いということ。

 つまり、生まれて直ぐに神の記憶が戻る者もいれば、人間として死ぬまで戻らない神もいるという訳だ。


 勿論、デメリットだけではなくメリットも(しっか)りある。


 メリットその1

 人間と同じ世界、同じ環境、同じ感性で生活する事ができる。

 一見大したこと無いようにも見えるメリットだが、これは神にとっては素晴らしく楽しい物なのである。


 メリットその2

 通常で生まれてくる人間よりも基礎ステータスが大幅にアップしている。

 通常で生まれてくる人間の腕力が50、獣人が75だとしたら、神は100といったような感じだ。


 だがそれらのメリットを加味しても、創造神にとってはデメリットの方が勝ってしまう。

 だから転生は最終手段に過ぎなかったのだが、今の怪星が破滅の危機にある以上手段を選んでいる暇もない。


「よし、やるか。転生」


 という事で意識を魂に集中させる。


 《神化(しんか)(こん)


 創造神は肉体を捨て、魂の状態に変化する。

 意識や記憶はもう無い。


 うねうねと波打つ創造神の魂はやがて怪星の一人の赤子へと乗り移ったのであった。

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