「母という呪縛 娘という牢獄」2024/12/01
著◆斎藤 彩さん
母親を殺害した実際の事件の加害者の娘・あかり(仮名)の生い立ちを追いながらまとめたノンフィクションである。
この母親は娘に超難関の医大への合格を強要し、9年間も浪人生活を強いていた。
報道時点で、私は娘さんに同情していた。
異常な母との生活、虐待、犯行に至るまでの気持ち、犯行に至ったあとの反省の言葉まで綴られている。
今回この本を手に取ったのは、少し種類が違うが「毒親」を小説内で表現したかったので、資料として購入した。
結果的に、この本を読む前と後では、だいぶ心境が違い、読めて良かったと思っている。
私語りをすることになるが、私は十代のときに両親を殺そうと思っていた。殺害を計画したのは人生で二回あるのだが、一回目は父親が母親に暴力を振るっているのを見て父親を殺そうと決意したとき。二回目はあまりに生活が終わっていたので両親を殺して人生を終わらせてしまおうと考えたとき。
私は実行には至らなかったけれど、そのときの差し迫った狂ったような気持ちというのは、覚えている。
あかりは幾度となくなじられ、身体的に虐待され、精神的に試されて、どれほど辛かったことだろう。
親子のLINEの内容や母親から怒鳴られた内容がかなり詳細に書いてあり、恐怖を感じた。
地獄を終わらせたかった気持ちというのが、とても共感できる内容だった。
今は私は両親を手にかけることもなく、とてつもなく平穏な暮らしをしている。あかりには悪いのだが、自分の幸せさというものを噛みしめることができた。
一歩間違えれば、私も犯行に及んでいたかもしれないけれど、私は立ち止まれた。もし犯行に及んでいても、あかりみたいに差し迫った状況での犯行ではなくて、己の身勝手さによる犯行に違いなかった。あかりより私は身勝手な理由で両親の死を願っていた。
この本を読んで両親に束縛されて絶望していたときの気持ちが蘇ってきた。
虐待や親子関係、家族関係を考えるのに、とても良い本であると思う。
同じような状況に置かれた人が相談しやすい環境になればよいと思う。