第2話 他の勇者と死神と..
ふと見るとそこには誰かが立っている。
年齢は章介とあまり変わらなさそうだ。見た目も章介と同じように日本人顔。格好は灰色のTシャツ、黒いパンツ、紺色のローブ、背中には重そうな大剣が装備している。
すると、章介たちに向かって
「話は聞かせてもらった。 あんたら行方不明になった勇者さんを助けにいくんだろ? そんでもってそいつらを誘拐した奴を倒せばいいんだろ? その件、俺が受け持つぜー 」
章介は内心やばい人がきたと思う。
ミクマリはちょっと痛い人に、
「えっと、あのー すみません。どちら様でしょうか? 」
「女神さん、俺は名乗るほどの者じゃないさ。」
「(そこは名前ちゃんと言えよー)」
と章介は心の中でツッコンだ。
モルテムは咳払いをし、
「そちらの方はダクトいや黒沼 蓮さんです。蓮さんは以前別の世界で勇者として異世界召喚された方です。召喚される前は学校に行かず家に引きこっもてソーシャルゲームをされていました。大学にいかず家に引きこもるようになった彼は彼女のりえさんに見捨てられました。蓮さんは勇者としての役目を終え、無事に元の世界に帰られました。しかし、再度彼女に会いに行かれた蓮さんは他の男性と付き合っているりえさんを見かけた彼はショックでまた家に引きこもりはじめました。さらに、蓮さんは大学にしばらくの間不在だったため進学する単位が足りず留年が確定し、やる気を完全になくした彼は大学を中退されたのです。」
しかし、何故彼がここにいるのか疑問に思う章介。
「(なんで蓮って奴はここにいるってことは彼も死んだのか? でもさすがに死んだんですか? なんて聞けないよな.. それに異世界召喚? 別の世界の勇者? よくわからないけど世界線おおくね?)」
モルテムの説明の後、黙り込むミクマリと章介。そんなか、蓮は再び話始める。
「確かに色々嫌なことあったよ。結局大学辞めて最終学歴高卒になったけど.. けどさあ、なんかすごい落ち込んでる人見てるとなんか可哀想になっちゃってさあ.. どう説明したらいいかわかんないけど落ち込んでる人を助けたいかな 的な.. それにこのままそこの死神さんと章介だけだと色々大変だろ そこに異世界経験のある俺がいれば安心だろ。 」
「(章介っていきなり呼び捨てかよ! )」
蓮の馴れ馴れしい態度に少しイラつく章介だったが、蓮の意見にも一理ある。右も左も分からない章介にとって異世界経験のある蓮がいれば頼りになる。それにもし彼が裏切るようなことをしてもモルテムがいる。逆のパターンもありえる。
悩んでいる章介にミクマリは、
「それで、章介さんどうしますか? 」
「とりあえず、モルテムさんとえっと、そこにいる蓮さん? 蓮くん?とにかくそこの勇者さん?って人と3人で行ってきます。」
そこに蓮が割り込む。
「章介、蓮でいいよ。あとそこのモルテムさんもよろしくな! 」
モルテムも蓮に対して頷くが、章介はある疑問を抱く。
「ミクマリさん、その前に一つだけ聞きたいことがあるのですが、勇者さん達が召喚された時間は違うんですか?もし時間が一緒ならその時間に合わせて今回の事件が起きる前に召喚はできないんですか? 」
「残念ながらそれはできません。なぜなら、転生または転移された3名の勇者様たちはそれぞれの時間は異なります。もちろん先に異世界にいかれた勇者様と差が出ないように後の勇者様の強さや異世界での知識はこちらで調整しています。」
女神ミクマリの話によると時間枠での調整は不可能らしい。そして召喚される時間枠は今回の事件が起きた後の時間に限定される。本来は勇者は皆同じ村に召喚されるのだが、女神ミクマリの計らいで王都に召喚されることになった。
話は長くなったが、こうして章介は死神のモルテム、元勇者の蓮とともに異世界へと旅立つ。
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気づくと3人はある街の中心街にいた。
町並みは中世のヨーロッパのような街並みが並ぶ。道路や道もコンクリートではなくレンガで整備されている。
モルテムは2人にこの街について説明し始める。
「どうやら、私たちはケーク王国の王都、モントーにいるようです。時間や食べ物に関しては2人の元いた世界とはほぼ同じようです。現在の時刻は朝の9時頃です。あと通貨は、銅貨、銀貨、金貨それぞれ3種類あり、金貨が一番価値があり、次に銀貨、銅貨という順になっております。」
モルテムはこの世界の通貨をジャケットに入っていた財布から取り出す。
銅貨100枚で銀貨1枚
銀貨100枚で金貨1枚 (銅貨10000枚で金貨1枚)
「なんか王道パターンな異世界ファンタジーだな.. 俺の格好は一応冒険者でモルテムさんは黒いスーツで執事で、章介はパーカーとジーンズかあ あれなんか章介一人だけ浮いてるな」
「確に章介様の格好はこの世界に少し目立ちますが、まずはこの国の王、ルーデンス王にお会いするのが優先です。ルーデンス王はこの世界で唯一女神ミクマリ様と会話ができるお方です。ですので今回の件についてもルーデンス王に詳しい情報を得るのが第一かと。」
「んでも、そんな簡単に国王に会えんのか? どうせ騎士とかに入口で追い返されたりするんじゃないか? 」
二人の話に章介は置いてきぼりにされていた。
ブレイド・ルーデンスという勇者と良好関係にあったそうだ。ブレイドが勇者からこのケーク王国の王となってからルーデンス家の歴代の王たちは女神ミクマリと交流を深めてきた。
宮殿前の入り口についた3人、
すると見張りをしている鎧を着た兵士が3人のもとへ駆けつけてきた。
蓮は、
「やっぱり、出て行けって、追い返されるのか? 」
すると近づいてきた兵士が、
「あなたはモルテム様でしょうか? 」
モルテムは軽く頭を下げ、
「はい、モルテムと申します。」
それを聞いた兵士は慌てて敬礼をし、
「やはりモルテム様でしたか。ルーデンス王からお話を聞いております。あと失礼ですが、章介様はどちらの方でしょうか? 変わった格好をされているとお聞きしたのですが.. 」
「こちらのフードがついたグレーの服を着ているのが章介様です。後、こっちの方は章介様の用心棒の蓮さんです。」
3人は正門にいた兵士とのやり取りを終えいよいよ宮殿の中へと入っていく。
大きな木製の扉が開くとそこには中央に大理石でできた幅広い階段、高い天井には大きなシャンデリアがある。
3人はこの宮殿の支配人に案内され中央の階段を上り、長い廊下を通り、いよいよルーデンス王のいる王の間に着く。
支配人が王の間の扉の前に立ち、
「ルーデンス王、勇者章介様ご一行がいらしております。」
3人は部屋に入ると、そこには一人の若い男が王座に座っていた。
座っていた男が、
「よくきた。勇者章介。そしてその一同。私はケーク王国の国王 ロイ・ルデーンス。みなよくきてくれた。話はミクマリ様からもお聞きしております。」
「どうも、ルデーンス王。蓮です。勇者やってます。」
「お初にお目にかかります。ルーデンス王、私はモルテムと申します。」
「(俺の番か)えっと、初めまして。ルーデンス王、章介です。」
3人は自己紹介終え、本題に入る。
ルーデンス王は、
「そこのモルテムさんの言うとおりこの世界にには君たちの世界から来た勇者が3人いた。でも3人はある日突然いなくなったんだ。」
3人の勇者は章介と同じく日本出身。
1人目はケイタ。章介と同じぐらいの大学生で剣を扱う勇者。
2人目はメイ。同じく大学生で話を聞いた限り腐女子の勇者。同じく剣を扱う。
3人目はリョオ。17歳の高校生で魔道士の勇者。
「この3人は皆メルーイ村の冒険者ギルドに所属していたんだ。もしかしたら3人の行方も分かるかもしれない。段取りは少し悪いが王都モントーから東にあるメルーイ村にいって欲しいんだ。」
蓮は、
「つまり冒険者ギルドにいってそいつらが最後にどのクエストを受けてどこで行方不明になったか聞けばいいてことだな? 」
ルーデンス王は蓮の返事に少し驚く。
「君は理解が随分と早いんだね。まだ詳しく説明もしていないのに.. あと私の妹 リリー・ルーデンスも勇者たちの調査でメルーイ村にいる。そこで状況を確認するために彼女にもあってきて欲しいんだ。メルーイ村はここから馬車で2日ほどかかる。もちろん馬車もこちらで手配はしてある。あと他に水や食料など必要最低限のものは馬車に積んであるから心配しないでくれ。」
3人はルーデンス王と別れメルーイ村に向かう。
宮殿の玄関を出ると馬車と一人の男が立っている。
「みなさんはじめまして今回の旅のお供をさせていただくコーンズです。私は普段行商人をしている者です。」
彼は行商人をするには少し若い見た目だ。13歳から14歳ぐらいの青年にみえる。
蓮は、
「ちょっといいかな、行商人くん? 一つ確認したいことがあって。」
蓮は呪文を唱えはじめた。すると床に青い魔法陣が現れ蓮は大声で、
「テレポーテーション! 」
と叫び、魔法陣に囲まれた章介たちは青い光とともに消え去った。