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7 大好きなあなたに……。

 舞台 その二 


 雨と夕焼けと帰り道


 大好きなあなたに……。


「椿ちゃん。こっち、こっちだよ」

 そう言って、にっこりと(まるで太陽のように)笑っている楓は、大きく手を降って、吊り橋の上で震えている椿のことを励ました。

「待ってよ、楓ちゃん。ちょっと待って。今、そっちに行くからさ」

 そう言って椿は一歩を踏み出そうとするが、吊り橋が風に吹かれて揺れるたびに、椿はその足を止めて、ぶるぶるとその小柄な体を震わせながら、吊り橋の古い頑丈そうな紐にしがみつくようにして、橋の古い板の上に腰を抜かすようにして座り込んでしまった。

「椿ちゃん、大丈夫!?」

 楓は言う。

 楓は普段とてもおとなしい子なのだけど、変なところで度胸があるというか、こういった怖いところや、幽霊、あるいはお化けのお話などについては、いつも元気で活発な椿が、こういった『怖いところで臆病になってしまう』ことに対して、反対にすごく元気に振る舞うことができた。(その度に楓ちゃん、すごい。と椿は思った)

 楓はあまりこういった危険な場所を怖いと思ったりはしないようだったし、幽霊やお化けのお話も、(そりゃ、ちょっとは怖がったりはしたけれど)本当に怖いと思って聞いている様子は見られなかった。(泣き出しそうになってしまう椿とは全然違って、いつも通りの笑顔の楓がそこにはいた)


「楓ちゃん! もうちょっとだけ待ってて。絶対にそっちまで渡ってみせるから」 

 すでに吊り橋を渡り終えている楓に強がりの笑顔を見せて、へっぴり腰の椿は両手の力を使って、いうことをなかなか聞いてくれない情けない自分の両足を前に前に引っ張るようにして、大きな古い吊り橋をゆっくりとだけど、でも着実に、動かしていった。

「頑張って、椿ちゃん!」

 そんな椿のことを大好きな友達の楓が応援してくれている。

「わかった! 絶対に渡ってみせるよ!」

 椿はそんな楓の応援に支えられるようにして、それから結構な時間を使って、その森の中にある古い吊り橋を渡りきることに(なんとか)成功した。


「怖かった」

 吊り橋を渡り終えた椿は満足そうな顔をして、そのまま安心できる大地の上に転がった。

 季節は夏。

 空は青空。

 森の中には明るい太陽の光がこれでもかっていうくらいにたくさん差し込んでいる。

 気持ちのいい風も吹いている。(吊り橋の上にいるときは、あんなに怖かったのに)

 いつの間にか、椿の全身は汗だくになっていた。そんな椿の顔の上に人の影ができる。

「椿ちゃん。大丈夫?」

 にっこりと笑って、楓がいった。

「もちろん。全然大丈夫だよ」

 同じようににっこりと笑って、椿は言った。

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