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母の子育て

作者: 竹宮小央里

 母の子育ては、とてもユニークなものだった。


まず、他の母親と一番違う所は、「学校に行きたくない」と、兄や姉、私が言うとすると、「そうなの? そんなら休め休め!」と言ってくる。


理由は全く尋ねることなく、「買い物しよう。そして美味しいもの食べようよ。何食べる? なんでも任しときな。」と言うのだ。


そして、母は食事を楽しんだ後、自分が学生時代、どれだけ失敗して大恥をかいたか、友達にひどい目に遭わされたか、先生に失望したかを語り始めるのだった。


「お母さんは、失敗と恥の連続の学生時代だったよ。でもね、人って自分が思っているより、自分の事なんか気にしてないものだったよ。よっぽどでないと、意識してないの。だから、失敗しても恥かいたとしても、自分が悔やんでいる程、人は自分なんか気にしてないよ。だからてへってなもんよ。おはよう。の一言でリセットできるよ。」


全くのん気な母である。


母にそう言われると、魔法にかかったように、翌日は登校する事が出来るのだった。


学校に行きたくない。と言ったのは、姉が一番多かった。


 また、母は料理を作るのが早くて、そこそこ味も旨かったが、調子に乗って大量に作ってしまうことがよくあった。


父のめい子の三人の男の子達も、よく預かって保育していた。


私の兄弟三人と、男の子三人が集まると、両親は炭火を起こして、バーベキューを始めた。


自家製の椎茸、なす、じゃがいも、さつまいも、餅を焼き、肉屋で豚のかしら肉や鶏の手羽先などを買った。


すると、三人の男の子達は肉のとり合いが始まった。


今考えると、私の兄や姉も食べ物や他のお菓子、おもちゃのとり合いをしたことがなかった。


なぜったのだろうか?と私は考えた。思い当たることは、父も母も、私たち三人に対して平等だったと思う。


母は買い物に行くとき、「みんなへ、おみやげを百円のもの一つずつ買ってきます。リクエスト言って下さい。」と言ってきた。


いつも、兄と私はポテトチップス、姉はめがね型マーブルチョコレートだった。


手巻き寿司を買ってくるときも、「リクエスト聞きます。一人三本にします。言って下さい。」


そして、私たちはそれぞれ自分の好きなものを母に伝え、母は一人一人の好みを聞いて、メモをして、買ってきてくれた。


父も自分の釣ってきたイシモチを焼いて、三人に同じ量だけ食べさせてくれた。


「みんな同じだけ。食べろ!」と、父も母も言っていた。


だから、私たちは全くけんかやとり合いが無かったのかもしれない。


とにかく、六人いると食べる量も多い。母は朝昼晩三食と、十時と三時のおやつ、計五食作ることも多かった。


ホットケーキ、ホットドッグ、お好み焼きなど多かった。


二次発酵までして、ピザ生地を作り、姉と一緒にピザまで本格的に作った。二枚作り、一枚を三人兄弟に持って行った。


彼らは大げんかしながら奪い合って、ちぎりあっていたという。


「男の子の兄弟だからけんかは当たり前。」と彼らの祖母である父の姉がよく言った。


しかし、私の家では一度もけんかする事はなかった。


なぜなら、お互い譲りあうので、けんかにならないからだ。


それは両親の教育によるものだと確信していて、三十代になった今でも継続している。


ちなみに、教員をしている姉は、小学校へ行きたくないと言って、母をさんざん困らせた自分の事をすっかり忘れて、娘が不登校になりそうになった時に


「学校の先生の娘が不登校なんて世間体が悪い。」と言って娘を叱っていた。

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