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ファーブルトン
もっとちょうだい と言えなかった
唇を噛むだけの 大人ぶった私が
指でなぞる白鳥の十字
視線を滑らせる天の川に沿って
足りない 足りないよ
どんな形容詞も
私の気持ちと違うんだよ
きれいなのにかなしい星たちみたい
これは何
どうすれば伝わるの
伝える価値があるのかもわからずに
へたっぴなまま
気まぐれに手を重ねてみる
ねぇたとえば
この温もりがことばになればいいのに
あなたの心が痛いとき
その頬が冷たくなってくれたら
私はきっと きっと両手で包むのに
どうしてことばにしなくちゃいけないの
その声をあげるのにどれほどの時間を
その文をしぼるのにどれほどの知識を
その涙をながすのにどれほどの見聞を
混ぜて まぜて 交えて
すべてを読み取るころにはたぶん
私はあの日の私じゃないんだ
ごめん ごめんね
いつかまたこの味に出会えるなら
その時も同じ気持ちになれたなら
伝えられる気がするのに
共感も共鳴も同調も、求めすぎじゃないの