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ヴィシソワーズ
くちびるに残った乳白色を
舌でなぞって最後まで
ほのかに野菜の甘みが漂う
クリーム仕立てのヴィシソワーズ
滑り落ちる温度が心地よくて
抱きしめられるのは怖いの
包み込まれるのも苦手だわ
ドラマに出てくる台詞なんかより
ただの「ありがと」があれば充分
あんまり熱いと火傷しちゃうから
胸の奥がビックリしちゃうから
これくらいにしておいて
ふとした瞬間 指が重なって
パッと弾けて 視線が交わる
それくらいにしておいて
今の私にはちょうどいいの
熱くなったら溶けちゃうわ
淡白と呼ばれてきたせいで
こい味に免疫がないみたい
そうね 明日もこの舌は
ヴィシソワーズの冷たさを求める
膨らんだ思いが熱を含んで
余計な肩書きを融かすまで




